新規顧客の獲得を目指しているものの、思うような広告効果が得られないことはないでしょうか。人口減少により、新規顧客の獲得競争はますます激しくなっています。こうした状況で注目されているのが、既存顧客との関係を深め、継続的な支持を育てるファンマーケティングです。
本記事では、ファンマーケティングの重要性や具体的な施策、実施する際の流れから成功事例までを解説します。
ファンマーケティングとは?
ファンマーケティングが注目される背景
ファンマーケティングのメリット
ファンマーケティングのデメリット
ファンマーケティングの具体的な手法5選
ファンマーケティングの始め方5STEP
ファンマーケティングの成功事例
まとめ|ファンの声を「聞くこと」から始める
ファンマーケティングとは?
ファンマーケティングとは、既存顧客をファンに育て、中長期的な収益基盤を築くマーケティング手法を指します。ここでのファンとは、企業やブランドへの愛着が強い顧客のことです。ファンが増えれば、新規顧客の開拓にコストを割く必要がなくなり、物価高などの社会的な変化があっても顧客がついてきます。また、ポジティブな口コミが自然に広がることで、広告に頼る必要もなくなります。
ファンマーケティングを成功させるには、一方向に情報を届けるのではなく、顧客の体験や感情に寄り添いながら関係を深めていく姿勢が欠かせません。分析ツールで顧客を理解した上で、SNSなどを使って継続的にやり取りすることが、ファン化につながるといえるでしょう。
ファンマーケティングが注目される背景
市場環境が大きく変化し、従来の広告中心の集客だけでは成果が安定しにくくなっています。なぜファンマーケティングが重視されるのか、その背景を解説します。
人口減少による新規顧客獲得の難化
政府の発表によると、日本の総人口は2025年5月時点で1億2334万人を記録しており、この10年間で300万人以上減少しました。
参考:総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)12月確定値、2025年(令和7年)5月概算値)」
今後も少子高齢化が加速すると予想されるため、市場全体の購入人口が減り続ける事態は避けられません。物価高騰による消費者の買い控えも懸念され、新規顧客の獲得競争が激しさを増せば、その分コストもかかります。
このような厳しい状況となったことで、未開拓の層を追い続けるよりも、既存顧客を大切にする戦略が重要視されるようになりました。顧客に長く愛され、安定した売上を支えてもらう仕組み作りこそが、これからの時代を生き抜く上での生命線となると考えられています。
参考:総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)」
内閣府「マクロ経済基礎資料 2025年3月10日 賃上げ①」
SNSの普及
インターネット環境の整備により、人々がオンライン情報に触れる機会は大きく増えました。総務省の調査では、日本でのソーシャルメディア利用者は年々増えており、2023年時点では約1億580万人に達しています。
ソーシャルメディアの中でも、SNSは製品の購入時に参考にされることが多く、売上につながる媒体といえます。特に影響力があるのが、ユーザーが発信する投稿です。実際の利用体験に基づいた内容のため、検討段階の顧客に信頼性の高い情報として受け止められます。
自社に関するポジティブな投稿を増やすには、ファンを作ることが必要です。SNSでは自社からの発信だけでなく、企業とユーザーが互いの投稿へのコメントなどをして交流することもでき、ブランドイメージを向上させる機能がそろっています。
参考:総務省 「令和6年版 情報通信白書の概要」
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ファンマーケティングのメリット
既存顧客との関係を深めると、さまざまなメリットがあります。
LTV(顧客生涯価値)の向上
熱心なファンを育てることは、たとえ少数であっても大きな売上につながると言われています。以下の図のように、2割の優良顧客が売上全体の8割を占めるとされる「パレートの法則」という考え方があります。
ブランドに深い愛着を持つ顧客は、アップセルという高価格帯への切り替えや、クロスセルという関連商品の併せ買いにも積極的なため、顧客が生涯を通じてブランドに与える利益(LTV)の上昇につながります。
また、ファンの声をサービス改善に反映させれば、さらなるCX(顧客体験価値)の向上も期待できます。顧客の潜在ニーズを汲み取った施策を繰り返すことで、長期にわたって自社を支えてくれる強固なファンベースを築くことができます。
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UGCによる信頼の拡散と新規顧客の獲得
現代の消費者は、企業が一方的に発信する宣伝よりも、自分と同じ立場であるユーザーが投稿した写真や口コミの投稿(UGC)を信頼する傾向にあります。UGCは製品・サービスを体験した生の声に基づいているため、まだ自社を知らない層の不安を払拭し、購入の決断を後押ししてくれるでしょう。
こうした質の高いコンテンツがインターネット上に蓄積されていくことで、莫大な広告費を投じずとも自然にブランドの認知度が高まり、新たな顧客が集まってくるという好循環が生まれます。既存顧客の満足度を高めることが、結果として効率的な集客戦略となり、ビジネスを持続可能なものにします。
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ファンマーケティングのデメリット
ファンマーケティングは多くの恩恵をもたらす一方で、取り組む際に注意すべき側面も存在します。ここでは、事前に把握すべきリスクや課題について解説します。
ファン化に一定の時間を要する
ファンマーケティングは、短期間で大きな売上効果が出る施策ではありません。顧客がブランドに愛着を持つまでには、日々のコミュニケーションを積み重ねる必要があり、成果が表れるまでには時間がかかります。また、活動を継続する上では、顧客の反応を丁寧に把握し、改善を繰り返すプロセスが欠かせません。
顧客との関係構築に時間がかかる点は負担に感じられることもありますが、持続的な収益基盤を築くためには避けて通れない取り組みといえます。短期的な指標だけにとらわれず、長期的な目線で戦略を立てることが重要です。
炎上リスクの管理が必要
ファンとの距離が近くなるほど、企業の発言や行動は大きな注目を集めるようになります。万が一、これまでの期待を大きく裏切るような失態や、ブランドイメージと乖離した不誠実な対応があれば、愛着が反転し激しい炎上やネガティブな反応を引き起こすリスクがあるでしょう。
特にSNSでは情報が即座に広がるため、発言や対応のわずかなズレが大きな問題へ発展することもあります。こうしたリスクを避けるには、コンプライアンス遵守などリスク管理体制の構築をし、細心の注意を払うことが不可欠です。
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ファンマーケティングの具体的な手法5選
ファンを増やすためのアプローチは多岐にわたりますが、自社のリソースや顧客の属性に合わせて最適な手段を選ぶことが大切です。ここでは、多くの企業が取り入れやすく、高い成果を期待できる5つの具体的な手法について解説します。
公式SNSの運用
公式SNSは、企業と顧客が日常的に接点を持てる場として重要な役割を担います。投稿を通じてブランドの姿勢や価値観を伝えられるだけでなく、コメントやいいねを通じた双方向のやり取りが関係性を深めるきっかけになります。
さらに、SNSキャンペーンでユーザー投稿を取り上げる企画を行うことで、顧客が主体的に関わる機会が生まれ、ファンとしての愛着を育てることができます。キャンペーンに対する顧客の反応を踏まえて次回の施策に改善することで、ブランドへの理解が自然と広がる流れを作れます。
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コミュニティの運営
コミュニティは、共通の関心を持つ顧客が集まる場です。専用サイトやクローズドなSNSグループを活用し、会員限定コンテンツの配信や開発秘話の公開などを行うことで、特別感のある体験を提供しブランドとの距離を縮めることができます。
また、コミュニティ内でファン同士が語り合うことで、企業が介在しなくてもブランドの魅力が自然と強化される点も大きなメリットです。さらに、オンラインイベントやオフ会などを組み合わせれば、単なる購入者を超えて「一緒にブランドを育てる仲間」という意識が芽生え、より強固なファン基盤の形成につながります。
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体験会・モニターの実施
体験会は、商品やサービスの魅力に実際に触れる機会を作り、理解を深めてもらうための取り組みです。体験後に、感想を聞き取るモニターを実施することで、体験会に来られなかった人にも情報を共有することができます。
体験を通じて得られた感想は説得力があり、SNSとの相性も良いのが特徴です。感想投稿用のハッシュタグを用意したり、投稿しやすいシーンを設計したりすることで、情報が拡散するきっかけを生み出すことができます。
インフルエンサーとのコラボ
インフルエンサーとのコラボレーションは、一定数のフォロワーを持った影響力のある人物を通じてブランドの魅力を発信する手法です。フォロワーは日頃からそのインフルエンサーの発信に触れているため、高い確率で投稿を閲覧してもらえるというメリットがあります。
インフルエンサーの個性とブランドの方向性がうまく重なることで、これまで接点のなかった層にも自然に広がり、認知の幅を広げられる点が大きな強みです。
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アンバサダー制度
アンバサダー制度は、ブランドを継続的に支持してくれる顧客に、公式の情報発信役を担ってもらう仕組みです。インフルエンサーはブランドのファンではない場合もありますが、アンバサダーに選ばれるのは熱心なファンであり、より消費者目線での投稿が期待できます。
認定されたアンバサダーは、「ブランドの顔」として質の高いUGCを継続的に生み出してくれます。アンバサダーから意見を募り、商品開発に活かせることもメリットです。
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ファンマーケティングの始め方5STEP
ファンマーケティングを成功させるには、闇雲に施策を打つのではなく、手順を踏むことが重要です。段階的に進めることで効果が高まり、継続的な関係構築へつながります。
STEP1. 自社のファンの特定・目的の明確化
まずは、自社が置かれている状況を正しく把握することからスタートしましょう。売上構造や顧客層の特徴を整理し、どの課題を改善したいのかを言語化することで、施策の方向性が定まります。
ファンマーケティングではファンに向けて施策が行われるため、顧客層の中でも特にファン層の特徴を把握することが必要です。以下はファンの特定に活用できる指標の具体例です。
| 指標 | ファンの特徴 |
|---|---|
| 購入履歴 | 一定期間内の累計購入額や利用回数が全体の上位層に含まれており、同一カテゴリの商品を複数回継続して購入している |
| 顧客満足度 | 顧客満足度調査において、他者への推奨意向が高い |
| アンケートへの回答内容・製品への口コミ | アンケートの回答内容や、購入後・イベント参加後の口コミに、ポジティブな内容が記載されている |
| イベントやキャンペーンへの参加率 | イベントやキャンペーンへの参加率が高い |
| SNSでの反応 | 企業のSNS投稿に対して、いいねやコメントなどのエンゲージ数が多い。また、企業や製品に関する投稿を多く配信している |
顧客満足度やアンケート内容を用いたVOC(顧客の声)分析には、ソーシャルリスニングツールの活用が効果的です。ブランドに対してポジティブな感情があるかどうか確認できるセンチメント分析も可能になり、「なぜファンになったのか」「どの接点に満足しているのか」といった背景まで深掘りできます。併せて競合分析も行うことにより、自社の強みやファンの特徴がさらに見えてくるでしょう。
ファンの特徴を理解したら、Webサイトへの訪問者数や売上など、数値を使って目標を定めます。
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STEP2. 最適なチャネルの選定
ターゲットとなるファンの属性が明確になったら、ファンと最も深くつながれる場を選出します。拡散力に優れリアルタイムの交流に向くX(Twitter)や、ビジュアルを通じてブランドの世界観を伝えられるInstagramなど、プラットフォームごとに特性は大きく異なります。
大切なのは、企業側が使いたいメディアを選ぶのではなく、ファンが普段ネット上のどこで活動し、どのような温度感で情報をやり取りしているかを見極めて、チャネルを特定することです。その後の施策の効果を最大化させる鍵となります。
STEP3. KPIの設定
KPIとは、最終目標に向けて取り組みが順調に進んでいるかを測るための中間指標です。目標を計画的に達成するために重要な指標となります。SNSでの反応数、コミュニティへの参加率、メールの開封率などがKPIの例です。
STEP4. ファン化促進のための施策立案・実行
ファン化を進めるための施策を企画します。SNSでの双方向コミュニケーションや、参加型キャンペーン、商品開発の裏側についてのコンテンツなど、これまでにファン増加のきっかけになったものがあれば、優先的に取り入れましょう。一定のファンだけが閲覧できる限定コンテンツの作成も、特別感があり有用です。施策の実行の際には、ファン層の活動時間に配慮した配信が必要になります。
STEP5. 効果測定、PDCAサイクルの継続
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのステップを繰り返し回すことで、業務の品質や効率を高めるための手法です。SNSでの言及数やエンゲージメント率の変化、さらには顧客推奨度を測る指標であるNPS(ネット・プロモーター・スコア)など、あらかじめ設定したKPIを用いて活動を多角的に評価します。
ファンマーケティングの成功事例
ファンマーケティングは、業界や企業規模を問わず多くの企業で成果を生み出しています。ここでは、独自の工夫でファンの心をつかみ、継続的な支持を獲得している3社の取り組みを紹介します。
東映アニメーション:世界規模でファンを増やすためのコンテンツ制作
アニメ制作で知られる東映アニメーションは、世界規模でファンを増やすことが課題でした。そこで、2024年からソーシャルリスニングツールの運用を開始します。
ツールを利用した最大のメリットは、世界中のSNSやニュースメディアなど海外市場の顧客の声を拾うことができるようになったことです。ファンの感情やキーワードの推移を追うことで、ファンが作品や広告のどこに魅力を感じているのかを可視化し、企業が提供したいものとのギャップを埋めるのに活かしています。国内外のファン層の違いも把握できたことで、ターゲット拡大のヒントを得られるようになりました。
従来の大規模なプロモーションではなく、良質な口コミの生成に着目した点も、ファンマーケティングの成功につながっているといえるでしょう。
Sanrio:ニーズに合ったキャラクターやグッズの開発
多様なキャラクターを手がけるサンリオは、キャラクターやグッズに対するファンの評価を把握することが目標でした。そこで、ソーシャルリスニングツールを導入します。
世界中から寄せられる膨大なSNS投稿をソーシャルリスニングで収集し、キャラクターごとの認知度や話題量、UGCの傾向を把握しています。また、サンリオキャラクター大賞などのキャンペーンの反応も数値化することで、施策の成功具合を社内で共有できるようになりました。
ファンではない層も分析することで、結果としてファンの声を起点にしたキャラクタービジネスの精度が高まり、より満足度の高い体験提供につながっています。
井筒まい泉:UGC活用でファン層の拡大
和風惣菜を手掛ける井筒まい泉は、ソーシャルリスニングツールを用いて顧客の声を分析しています。
特に力を入れているのがUGCの活用です。自社のWebサイトにUGCを再利用することで、より親しみやすいブランドイメージを作り上げ、ファンを増やしています。中でも「カキフライが苦手だった子どもが、まい泉のカキフライを食べた」といった内容のUGCは拡散され、季節商品の売上トップになりました。また、UGCにはサービスの不足点が指摘されていることもあり、パッケージなどの改良に活かされています。
UGCを起点に価値向上を図る姿勢が、ファンとの関係強化に大きく貢献している例といえるでしょう。
まとめ|ファンの声を「聞くこと」から始める
ファンマーケティングを成功させるには、まずファンの声を丁寧に「聞くこと」が欠かせません。SNS上の反応やUGCを分析することで、ファンが何に魅力を感じ、どの体験に価値を見出しているのかが明確になります。
本記事で紹介した各社の事例が示すように、リアルな声を施策や商品改善に反映することで、ファンとの関係はより深まります。ファンの声を把握するにはソーシャルリスニングツールの活用が欠かせません。ぜひ導入をご検討ください。
▶︎Meltwaterのソーシャルリスニングツールを見てみる
▶︎Meltwateerの最新プレスリリース:Meltwater Japan、ソニーネットワークコミュニケーションズと連携し、国内外ファンの声を可視化するデータ基盤を提供
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム
