LTV(顧客生涯価値)は、顧客との長期的な関係性を把握するために欠かせない指標です。しかし、「LTVの意味が曖昧」「計算方法が複雑で分かりにくい」「マーケティング施策にどう活かせばいいのか判断できない」と感じる方も少なくありません。
この記事では、LTVの基本的な意味から算出方法、ARPU・CAC・チャーンレートなどの関連指標、LTVを向上させる具体的な施策、さらに実際のマーケティング活用事例についても紹介していきます。
- LTV(顧客生涯価値)とは?
- LTVを向上させるための施策
- LTVのマーケティング活用法
- LTV活用の成功事例
- まとめ|データや関連指標を活用してLTV向上へ
LTV(顧客生涯価値)とは?
LTV(Life Time Value / 顧客生涯価値)とは、1人の顧客が生涯において企業にもたらす利益の総額のことです。商品・サービスの利用期間中にもたらされたすべての利益が含まれます。顧客ごとに算出するのではなく、総売上や総ユーザー数などから1人当たりの消費を割り出す形で算出されます。データによってマーケティング施策の方向性を決めるデータドリブンマーケティングにも活用される指標です。
高いLTVは継続的に商品・サービスを利用している顧客が多いことを意味し、新規顧客の開拓に割く費用を抑えられるのがメリットです。特にサブスクリプション型のサービスのように継続的な関係構築が前提のビジネスモデルでは、LTVの最大化が収益性の鍵を握ります。
LTVを上げるには、最適なタイミングでクーポンを付与したり、消費者自身も気づかないニーズである消費者インサイトを掘り出して満足度を高めたりする方法があります。
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LTVが高いとはどういう状態か?
【計算式】
チャーンレート = 期間内の解約者数 ÷ 期間開始時点の顧客総数
例として、月初に900人が利用し、当月に45人が離脱した場合は「45 ÷ 900=0.05(5%)」となります。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスとは、顧客1人あたりの採算性のことです。LTVとCAC(顧客獲得コスト)を対比することで算出されます。ビジネスの健全性を把握でき、特に投資回収の見通しに役立ちます。
【計算式】
ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC
例として、LTVが36,000円でCACが12,000円とすると「36,000 ÷ 12,000=3」と計算できます。
数値が大きいほど収益性が高いことを示し、3以上が理想とされています。1未満の場合は、顧客獲得のたびに赤字になるため、費用配分やターゲティングの見直しが必要です。
H3 MQL / SQL
MQL(Marketing Qualified Lead)とSQL(Sales Qualified Lead)は、段階的に区分された見込み顧客のことです。MQLはマーケティング活動で獲得した関心度の高い顧客を指し、SQLはその中でも営業が「受注につながる」と判断した顧客を意味します。例えば、資料請求や問い合わせにつながった層がMQL、商談に進んだ層がSQLです。
購入につながりやすい層を適切に見極めてアプローチできれば、コストを抑えながら購入単価を上げることができ、結果としてLTVの向上にもつながります。
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LTVを向上させるための施策
LTVを高めるには多角的な施策が必要です。ここでは、4つの代表的なアプローチを紹介します。
H3 ① 顧客単価(ARPU)を上げる
顧客単価(ARPU)を上げるには、顧客の目的に合った商品を提案することが重要です。代表的な方法として、以下のようなものがあります。
- 購入商品や検討中の商品よりも上位モデルを提案する「アップセル」
- 関連商品を組み合わせて紹介する「クロスセル」
例えば、パソコンを検討している顧客に高価格で高性能のモデルを提示するのがアップセル、マウスやキーボードなど周辺機器を一緒に提案するのがクロスセルにあたります。MAツールなどを活用することで、提案の最適なタイミングを計ることができます。
② 購入頻度(リピート率)を高める
購入頻度(リピート率)を高めるには、顧客とのつながりを継続的に保つことが重要です。以下のような方法があります。
- 定期的なメールマガジンで使い方や活用アイデアを紹介する
- ポイント付与や会員限定の特典を設ける
- 購入履歴に基づきおすすめ商品を提示する
消耗品の場合は、使い切る頃に合わせてメールマガジンやクーポンを送るとより効果的です。購入履歴のデータを活用すると、ニーズに沿った提案の自動化が可能になります。
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③ 解約率(チャーンレート)を下げる
解約率を下げるには、顧客がサービスに価値を感じ続けられる環境づくりが欠かせません。以下のような方法が一例です。
- 定期的なフォローアップメール
- 問い合わせ先の明示
- 複数の料金プランを設定
- 長期利用者限定の特典
利用中の不満を早期に解消できるサポート体制や、納得のいく料金設定の工夫などが考えられます。また、利用データをもとに離脱予兆を察知し、お得な特典を付与するのも方法の一つです。
④ マーケコスト最適化(CAC削減)
CACを削減するには、無駄な広告費を減らし、効率よく顧客を獲得できる流れを整えることが重要です。以下のような方法があります。
- 行動データを活用したターゲティングにより、成果につながるチャネルを見極める
- 友だち紹介により特典を付与する
- SNSで発信したり、UGCを促したりする
見込み度の高いユーザーに予算を集中できれば、同じ費用でも顧客獲得率を上げることができます。また、既存顧客に新たな顧客の紹介を促す仕組みを導入すれば、低コストで新規獲得が可能になります。企業によるSNS投稿や商品のUGC(ユーザーによる投稿)を促すキャンペーンなども、広告に依存しない顧客獲得モデルです。
LTVのマーケティング活用法
LTVを活用すると、顧客の価値を踏まえた戦略立案が可能になります。ここでは、代表的な活用方法を紹介します。
顧客セグメンテーション
顧客セグメンテーションにもLTVを活用することができます。顧客をLTVごとにグループ分けすることで、優先して施策を注力すべき層が明確になります。高LTVの顧客は安定した収益源となるため、離脱防止や満足度向上の施策を充実させることが重要です。例えば、定期購入者には特典を付与して継続意欲を高め、単発購入者には再購入を促すキャンペーンを行うなど、顧客ごとの行動に合わせたアプローチが可能です。LTVを基準に判断すれば、投資を成果が出やすい顧客層へ集中でき、マーケティング全体の効率も向上します。
コスト効率の改善
LTVはCAC(顧客獲得コスト)を考慮して計算する方法もあるため、ROAS(広告費用対効果)と併せてコスト効率の把握にも活用できます。売上が広告費を上回りROASがプラスになっても、LTVが低めの場合は、広告費以外のCACがかかりすぎていることになります。LTVとCACとROASのバランスを意識することが重要です。
SNS分析を用いたロイヤル顧客理解
LTVの高い顧客を理解するには、SNS投稿などから顧客の声を分析するソーシャルリスニングやVOC分析が効果的です。ロイヤル顧客の共通点や購入の決め手を明らかにできます。ネガティブな意見も分析できるため、商品改善や炎上対策、離脱要因の把握にも役立ちます。
KPI設定と施策評価
LTVは顧客が生涯を通じてどれだけ自社の商品・サービスを利用したかを表すため、中長期的な成果を評価する指標として活用できます。中間目標の設定には、数値で示せるKPIが有用です。継続期間や平均購入単価などLTVに直結する指標をKPIとして設定することで、マーケティングの方向性が明確になります。
LTV活用の成功事例
LTVを取り入れたマーケティングは、施策の方向性を整理しながら、顧客価値を最大化するための効果的なアプローチです。ここでは、LTVを軸に改善を進めた企業の事例を取り上げ、具体的にどのような成果につながったのかを紹介します。
一休.com:高LTV顧客に注力したUI改善
宿泊予約サイトを運営する一休.comは、最も収益につながるユーザーに焦点を絞り、サイト改善を進めました。データ分析で売上に大きく貢献する顧客層を特定し、ユーザーへのヒアリングも実施したうえで、検索から比較、予約までをスムーズに行えるようUIを再構築しました。
また、使用頻度が少ない機能をデータから特定したうえで削除し、クーポンなど集客につながるものを目立たせるなど、シンプルで使いやすいサイト作りを続けています。
オイシックス:継続意欲を高める体験設計
有機野菜や無添加食品の定期サービスを提供するオイシックスは、質の高いサービスの提供によりLTVを高めています。複数の商品やプランを設けることで、多様なニーズに応えています。また、締切日前であればいつでもキャンセルできることも明示し、負担なく継続的に続けられる仕組みを取り入れているのも特徴です。
調理前の食材を揃えたミールキット「Kit Oisix」は、時短と料理の満足感を両立させました。2023年3月末時点では、Oisix定期会員 約40万人のうち約70%にあたる約28万人が「Kit Oisixコース」に登録しており、定期利用の定着に大きく貢献したことがわかります。
大阪ガス:ポイント制度改革による会員数の増加
大阪ガスでは利用ごとにポイントがたまる制度を採用していましたが、ポイントの利用範囲が自社サイト内に限られていることが課題でした。顧客からも共通ポイントの導入が要望に挙がっていました。そこで解決策として、2021年にジー・プランの「ポイント・コンセント」を導入し、全国的に使われているポイントや地域向けのポイントへ自由に交換できる仕組みを整えたのです。
2021年3月のリニューアル後、会員は80万人から2021年末には100万人へ増加し、翌年も15万人が新規登録しました。
まとめ|データや関連指標を活用してLTV向上へ
LTV(顧客生涯価値)は、1人の顧客が企業にもたらす長期的な収益です。LTV向上には、ポイント付与やカスタマーサービスの充実などの他に、顧客の絞り込みが方法としてあります。
施策を注力すべき顧客層が分かると、マーケティングコストが抑えられます。CACやチャーンレートなど関連指標を組み合わせたりツールを活用したりすることで、顧客の動向やニーズが明確になり、LTVの向上につなげられるでしょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム
