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アンバサダーマーケティングとは?企業の事例・実践方法・メリットを解説

アンバサダーマーケティングとは?企業の事例・実践方法・メリットを解説


宮崎桃

Jul 7, 2025

広告だけではブランド認知や新規顧客の獲得に限界があると感じている企業が増えています。そこで注目されているのが、ファンの力を活かして認知を広げる「アンバサダーマーケティング」です。

しかし、進め方や期待できる成果、アンバサダー選定の基準が分からず、導入に踏み切れない担当者も少なくありません。

この記事では、アンバサダーマーケティングの基本概念から実践方法までのポイントを解説します。メリット・デメリットや成功事例についても具体的に紹介しましょう。

アンバサダーマーケティングとは?

アンバサダーマーケティングとは、企業が自社ブランドに強い愛着を持つユーザーを「アンバサダー」として任命し、その発信力を活かして認知拡大を図るマーケティング戦略です。

アンバサダー(Ambassador)は本来「大使」を指しますが、ここではブランドのファンとして自発的に情報発信を行う協力者を意味します。企業が主体となる広告とは異なり、実際のユーザーによる口コミや体験談がベースになるため、共感や信頼を得やすい点が特徴です。

報酬や製品の提供が行われることもありますが、根底にはブランドに対する愛着や共感があります。こうした関係性を活かすことで、企業はより自然なブランディングを実現できるのです。

従来の一方向的なPRとは異なり、企業と消費者(アンバサダーやそのフォロワー)による双方向のコミュニケーションを通じてブランド価値を高めていく、新しいマーケティング手法といえるでしょう。

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インフルエンサーマーケティングとの違い

アンバサダーマーケティングと混同されやすい手法に、インフルエンサーマーケティングがあります。両者とも第三者の発信力を活用するという点は共通していますが、性質は異なります。

インフルエンサーとは、多くのフォロワーを持ち、その影響力を使って商品やサービスを広める人のことです。報酬を得て投稿したりイベントに参加したりするのが一般的で、「多くの人に届ける」ことが主な目的とされています。

一方でアンバサダーは、ブランドに対する愛着が強く、発信の動機が好意や共感に根ざしており、これがインフルエンサーとの大きな違いです。

つまり、量を重視するインフルエンサーマーケティングに対し、アンバサダーマーケティングは質の高い関係構築を重視する戦略といえるでしょう。

また、アンバサダーの発信は宣伝色が薄く、ユーザー目線に近いため、信頼性や親しみやすさを感じさせやすいのが特徴です。目的やブランドの方針に応じて使い分けが求められます。

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アドボケイツとの違い

アンバサダーに近い存在として「アドボケイツ」があります。どちらもブランドへの愛着を持ち、SNSや口コミを通じて商品を紹介しますが、企業との関係性は別物です。

アンバサダーは企業から任命され、報酬や商品提供を受けながら公式な形でPR活動を行います。

一方のアドボケイツは、報酬がないにもかかわらず、自発的に商品を推奨してくれる熱心なユーザーです。アドボケイツは「このブランドが好き」という気持ちを原動力にしており、企業と契約関係を持たないという特徴を持っています。

アンバサダーが選定や方針に企業が関与するのに対し、アドボケイツは完全にユーザー主体の発信をしているのです。

彼らの多くは「自分の好きなブランドを育てる」、「ブランディングに直接関わることができる」ということ自体に意義を感じているため、活動そのものに対して非常に意欲的である点が特徴といえるでしょう。

アンバサダーマーケティングが重要な理由

アンバサダーマーケティングが重要な理由

近年、アンバサダーマーケティングが注目される背景には、消費者の情報収集方法や広告に対する意識の変化があります。ここでは、アンバサダーマーケティングの重要性が高まる理由を詳しく見ていきましょう。

口コミへの信頼感

近年ではSNSの普及により、ユーザー同士が情報を共有し合う環境が整い、口コミやUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)の影響力が以前よりも格段に高まりました。

実際、当社の2024年度消費者インサイトレポート:小売り業界によれば、インターネットユーザーの半数以上が購入前にレビューやSNS投稿を確認しているという結果が出ています。

このような背景から、アンバサダーマーケティングは体験に基づく発信を通じて、共感を呼ぶ情報を届ける手法として有効です。アンバサダーの言葉には、自らの体験や感情が込められているため、ユーザーにとって第三者としての信頼性が感じられやすくなります。その結果、情報の受け手が商品に関心を持ち、購入に至る可能性も高まるでしょう。

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広告の影響力の減少

かつて企業の主な情報発信手段だったテレビCMやWeb広告ですが、近年ではその影響力が徐々に弱まりつつあります。企業側が一方的に発信するメッセージは商業的な意図が見透かされやすく、広告であると気づかれると、意識的に避けられるケースも少なくありません。

さらに、広告をブロックする機能がブラウザやアプリに搭載されていることもあり、広告が届かない環境も広がっています。従来の広告手法だけでは、情報が届きにくくなっているのが現状です。

代わって注目されているのが、アンバサダーマーケティングです。商品やサービスに愛着を持ったユーザーが、自然な形でSNS上にUGCとして自らの体験や感情を投稿することで、多くの消費者に対してより信頼性の高い形でブランドの魅力を伝えることが可能になります。企業には、このような良質な口コミを増やすための施策が求められるようになりました。


アンバサダーマーケティングのメリット4つ

アンバサダーマーケティングのメリット4つ

アンバサダーマーケティングには、従来のマーケティング手法にはない多くのメリットが存在します。ここでは主要な4つのメリットについて詳しく解説しましょう。

熱意あるファンの発信力を活かせる

アンバサダーマーケティングの最大の強みは、ブランドに強い関心を持つファンによる発信力を活かせることです。

アンバサダーはその商品やサービスに愛着があり、自発的にSNSやブログで情報を発信します。投稿は商品やサービスの単なる紹介にとどまらず、リアルな体験や感じた魅力を含むため、読む側にも響きやすいのが特徴です。

さらに、そうした投稿はアンバサダーのフォロワーを中心に拡散され、ブランド認知の拡大につながります。継続的な発信によって、彼らの周囲のフォロワーも徐々に関心を持つようになる効果も期待できるでしょう。

こうして、熱量の高い層を起点にポジティブな輪が広がっていきます。ポジティブで上質な口コミを投稿するユーザーの範囲が広がりやすいのは、アンバサダーマーケティングの強みです。ファンの熱意がマーケティングの原動力となるのは、大きなメリットといえるでしょう。

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低コストで新規顧客獲得が期待できる

アンバサダーマーケティングは、広告費を多くかけずに新規顧客を獲得できる手法としても注目されています。

多くの場合、アンバサダーは無償または低コストで商品提供やイベント招待などを受け取り、それをもとに発信活動を行うのが一般的です。発信は本人のアカウントから行われるため、制作費や媒体費用もかかりません。

従来のマーケティングでは、広告費やプロモーション費用が高額になりがちでしたが、アンバサダーマーケティングであれば限られた予算でも大きな効果を期待できます。熱量の高いユーザーを起用することで、中長期にわたる宣伝効果が期待できる点も魅力といえるでしょう。

さらに、アンバサダー自身にファンやフォロワーが多ければ、それだけで多くの人に情報が届くという利点もあります。コストを抑えつつ、ターゲット層に刺さる情報を届けられるため、非常に効率のよいマーケティング手法だといえるでしょう。


広告感を抑えたPRができる

一般的な広告は「売りたい」という気持ちが前面に出やすいため、ユーザーにとっては押し売りのように感じられることがあります。近年では、こうした広告的な表現に対して嫌悪感を持つ人も増えており、情報の受け取り手に配慮したアプローチが求められているのです。

アンバサダーマーケティングでは、発信者が実際に商品を愛用しているファンであることから、発信する内容が自然でリアルなものになりやすく、広告特有の圧を感じさせません。

また、投稿が一般ユーザーのアカウントから行われる点も、信頼性を高める要因のひとつです。このように「いかにも広告」という雰囲気を抑えつつ、生活に根差したかたちで商品の魅力を伝えられるのが、アンバサダーマーケティングの強みです。消費者の心に響く共感ポイントを作ることで、マーケティング施策の成果向上につながります。

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ユーザー目線のフィードバックを得られる

アンバサダーはブランドや商品に強い関心を持っており、よい面だけでなく改善すべき点についてもリアルな意見を持っています。こうしたユーザーからのフィードバックは、企業にとって大いに価値のある情報源となるのです。

改善点や課題はどこか聞いたときでも、ユーザー視点で実用的な改善点や課題を指摘してくれるでしょう。従来であれば、アンケートやモニター調査などで手間とコストをかけて収集していた声が、アンバサダーとの関係を通じて自然に届きます。

また、アンバサダーの投稿に対するフォロワーからのコメントや反応を参考にすれば、さらに多くの利用者の意見を得ることも可能です。リアルな体験に基づいたフィードバックは、商品の改善やサービスの質向上に直結しやすく、企業にとってはマーケティングと開発の両面で役立ちます。


アンバサダーマーケティングのデメリット2つ

アンバサダーマーケティングは効果的な手法ですが、万能ではありません。導入前には、起こりうる課題やリスクを理解しておくことが重要です。ここでは、企業が直面しやすい代表的なデメリットを2つ紹介します。

アンバサダーの確保が難しい

アンバサダーマーケティングを成功させるには、ブランドや商品に強い思い入れがあるユーザーを起用することが重要です。

しかし、適した人材を見つけ出すには時間と手間がかかります。ただ商品を購入したことがあるだけでなく、ブランドへの愛着や深い理解がある人材を見極めなければなりません。

さらに、普段の投稿の雰囲気やフォロワーとの関係性、過去の発言内容などもチェックする必要があるため、調査対象が広範になります。

自社のイメージやマーケティングの目的とマッチしない人物を選んでしまうと、かえって逆効果になるリスクもあるでしょう。どれだけ発信力が高くても、ブランドの雰囲気に合わなければ、ユーザーに違和感を与えかねません。

こうした背景から、質の高いアンバサダーを確保するには、顧客行動のデータ分析やCRM(顧客管理)が欠かせません。施策開始前に候補者を選定する体制づくりが重要となります。


企業イメージを損ねるリスクがある

アンバサダーが発信した内容が思わぬ形で拡散し、企業やブランドのイメージを損なうケースもあります。発言内容や態度が原因となる「炎上リスク」に注意が必要なのです。

アンバサダーマーケティングでは、発信の主体がアンバサダー個人であるため、投稿内容を完全にコントロールすることができません。そのため、アンバサダーの不用意な言動が企業のイメージダウンにつながるおそれがあります。

商品に直接関係ない話題であっても、アンバサダー本人のSNS上の発言や態度が問題視されれば、その人と関係を持つ企業まで批判の対象となってしまうことも考えられます。炎上が発生すれば、想定以上の損害が生じる可能性もあるでしょう。

このようなリスクを避けるには、アンバサダー選定時に過去の投稿やフォロワーの属性、普段の言動を十分に調査しておくことが重要です。また、定期的にサポートしたりコミュニケーションを取ったりして、信頼関係を築いておくこともリスク軽減につながります。


アンバサダーマーケティングの進め方5STEP

アンバサダー施策では、選んだ人材にどのような活動をしてもらうか、そして効果をどのように測るかが成功のカギとなります。実際の流れを具体的に見ていきましょう。

STEP1 目標設定を行う

アンバサダーマーケティングを始めるにあたって、最初に行うべきは目標の設定です。単にアンバサダーを起用するだけでは大きな効果は期待できません。何のために取り組むのかをはっきりさせることが、成功への第一歩となります。

たとえば「ブランド認知度を高めたい」、「新商品の話題性を生みたい」、「SNSフォロワーを増やしたい」といった目指す成果によって最適な手法は変わります。目的が定まれば、どのような人にアンバサダーを依頼すべきか、またどのような発信が望ましいかが見えてくるでしょう。

アンバサダーマーケティングの目的を明確にし、目指すゴールをはっきりさせることで、施策の方向性や実施内容がブレなくなります。

STEP2 理想的な人物像を明確にする

目標が明確になったら、次はその目標達成に最適なアンバサダー像を定める段階です。理想のアンバサダー像を定義することで、より効果的なマーケティングが実現するでしょう。

たとえば、美容商品のプロモーションであれば、美容系の情報を頻繁に発信しているユーザーや、日頃からブランドを愛用しているファンが適しています。

また、影響力のあるインフルエンサーだけでなく、小規模でも熱量の高いユーザーを選ぶことで、共感性の高い発信が期待できます。

重要なのは、アンバサダーの発信が自社のブランドイメージや価値観と一致していることです。選定にあたっては、性別、年齢、趣味、生活スタイルなどのペルソナを具体的に想定すると、ミスマッチを防げます。アンバサダーが影響力を持つ層と、自社のターゲットが重なることも忘れずに確認しましょう。


STEP3 アンバサダーの募集・選定を行う

アンバサダーを募集する際は、自社の顧客層やターゲットに合わせたチャネルを活用しましょう。SNSやメルマガ、自社サイトでの公募に加え、親和性の高い候補者にはDMなどで直接アプローチするのも効果的です。応募フォームでは、フォロワー数や投稿傾向、ブランドに対する熱量が把握できる設問を用意すると、選考がスムーズになります。

また、アンバサダーの選定にあたっては、ブランドへの親和性や投稿のトーン&マナー、フォロワーの属性などを総合的に評価しましょう。インフルエンサー的な影響力のある人に限定せず、熱量や共感度の高いマイクロなファン層も重要な候補です。

Meltwaterの「Explore」を使えば、SNSやレビューサイト上でブランドに言及しているユーザーやインフルエンサーを発見し、候補を特定することが可能です。ブランドとの親和性や発信内容、フォロワー属性を分析することで、影響力に加え、共感性の高い人材を見つけやすくなります。

さらに、Meltwaterの「Klear」なら、インフルエンサーの影響力や信頼度も可視化でき、より効果的なアンバサダーを起用することが可能です。選定後は、活動の目的やルールを明示したガイドラインを共有し、誤解や炎上リスクを未然に防ぎましょう。

STEP4 PRを実施する

アンバサダーの選定が完了したら、実際のPR活動をスタートします。まずは商品やサービスを提供し、アンバサダーが実体験を通じてリアルな感想を発信できる環境を整えましょう。

発信内容の質は体験の満足度に左右されるため、使用方法や商品の魅力が正しく伝わるよう、事前に適切な情報提供やサポートを行うことが重要です。

SNS投稿では、投稿文の内容に口を出しすぎず、アンバサダー自身の言葉で表現してもらうことで信頼感が高まります。ネガティブな意見が含まれていた場合でも、過度に抑制せずに受け止める姿勢が重要です。リアルな感想が伝わることで、投稿全体の信頼性が高まり、ユーザーの共感を得やすくなります。

また、投稿に指定のハッシュタグを付けてもらうことで、キャンペーンの一貫性を保ちつつ、効果測定にも役立てることができるでしょう。

さらに、アンバサダー同士の交流会やイベントなどを開催すると、モチベーションの向上や継続的な関係の構築にもつながります。活動内容や頻度はブランドごとに調整しつつ、双方にとって無理のない形で進めることが継続的なPR成功のカギです。

STEP5 効果測定を行う

アンバサダー施策は実施して終わりではなく、成果の振り返りが不可欠です。活動の効果を客観的に把握し、次回以降の改善につなげましょう。

まず測定すべきは、SNSの投稿数やリーチ数、インプレッション、いいね数、シェア数、コメント数といったエンゲージメント指標です。ハッシュタグを活用して投稿を集計すると効率よく可視化できます。

さらに、売上の増加や問い合わせ数の変化など、直接的なビジネス成果があるかも確認しましょう。特に投稿を見たユーザーがどれだけ商品購入やサービス利用に至ったか、コンバージョンの有無は重要なポイントです。

また、アンバサダー自身の活動意欲やフィードバックも貴重な情報源となります。定期的なヒアリングやアンケートを通じて、運営側の改善点を把握しましょう。施策の評価と学びを蓄積することで、次のプログラムに活かすことができます。

アンバサダーマーケティングを成功させるコツ

アンバサダーマーケティングで成果を上げるには、ただ手順をなぞるだけでは不十分です。運用を効果的に進めるために、押さえておきたい重要なポイントを紹介します。

ブランドイメージにあっているか

アンバサダーの選定では、自社のブランドイメージにマッチしているかを最優先に検討しましょう。SNSのフォロワー数が多くても、発信内容や雰囲気がブランドの世界観と合致していなければ、逆効果になるおそれがあります。

たとえば、誠実さや信頼感を打ち出している企業が、過激な発信を繰り返す人物を起用してしまえば、ブランドの印象を損なうリスクが生じるでしょう。

理想的なのは、アンバサダー自身がブランドの価値観やターゲット層と共通項を持っていることです。ユーザーから見たときに、「この人が言うなら信頼できそう」と思ってもらえるような、一貫性のある人選が求められます。年齢、性別、ライフスタイル、価値観などがターゲットと重なるかを丁寧に見極めましょう。

アンバサダーは、ブランドの「顔」として長期的な信頼形成を担う存在であることを意識することが重要です。

エンゲージメント率が高いか

アンバサダー選定においては、フォロワーとの関係性の深さを示す「エンゲージメント率」に注目しましょう。これは、投稿に対する「いいね」やコメント、保存、シェアなどの反応がどれほどあるかを示す指標です。

単にフォロワーが多いだけでは、実際のPR効果は推し量れません。むしろ、フォロワー数が少なくても熱心なファンが多く、リアクションを多く集める人物の方が、ブランドに対して強い共感や好意を生み出せる可能性があるでしょう。

エンゲージメント率の高いアンバサダーは、単なる情報発信力ではなく、フォロワーの信頼を得た“共感型”の影響力を持っているといえます。選定時は、リアクションの平均数やコメントの質などを観察し、フォロワーとのつながりが深い人物かどうかを見極めることが大切です。

効果的なアンバサダー起用のためには、質の高い関係性を築いている人物を見極めることがカギとなります。

▶︎あわせて読みたい:エンゲージメント率とは?各SNSの計算方法や平均値、向上させるポイントを解説

十分な影響力があるか

アンバサダーに求められる「影響力」とは、単にフォロワー数の多さだけを意味するものではありません。注目すべきは、フォロワーとどれだけ信頼を築いているか、そしてフォロワーに対してどのような態度変容を促せるかという“質的な影響力”です。

たとえば、普段から実体験に基づく発信をしている人物は、読者の共感を得やすく、紹介した商品やサービスの利用意欲を高める可能性があります。

また、専門的な知識を持ち、分かりやすく情報を伝えられる人は、信頼性を伴った説得力を持つアンバサダーといえるでしょう。

発信内容の質や一貫性、フォロワーとの関係性の深さなどを確認することで、その人物がアンバサダーとして実際に影響力を発揮できるかを見極めることが重要です。


長期的な関係構築ができるか

アンバサダーマーケティングは短期的な宣伝で終わるものではありません。継続的にブランドと関わってもらうことで、より強固な信頼関係の構築と認知拡大を実現できます。そのため、アンバサダー候補が長期的な関係構築に向いているかどうかも重要な判断基準です。

過去の投稿に一貫性があり、丁寧なコミュニケーションをしているかを確認することで、その人物がブランドと継続的に信頼関係を築けるかどうかが見えてきます。

また、SNS上でのコメント対応やユーザーとの交流の姿勢もポイントです。感情的な発言や炎上につながる言動が見られる人物は、ブランドにとってリスクになる可能性もあるため慎重に選ぶ必要があります。

アンバサダーマーケティングの成功事例

アンバサダーマーケティングの成功事例

アンバサダーマーケティングの効果をより具体的にイメージするには、成功した事例を知るのが近道です。実際の活用例を見ていきましょう。

ワークマン:製品の共同開発

作業着のイメージが強かったワークマンですが、現在では一般女性を含む幅広い層から支持を集めています。この変化の背景には、同社が掲げる「客層拡大」という明確な戦略があるのです。

アンバサダーマーケティングもその一環で、単なる販促手段ではなく、ターゲット拡大を叶えるための重要な施策として活用されています。

ワークマンは、商品の使い方やブランドへの愛着度、SNSでの発信内容や人柄などを総合的に見極めた上でアンバサダーを選定しているのが特徴です。金銭報酬は支給せず、その代わりに新製品の先行提供やイベントへの招待など、体験型のインセンティブを通じて、純粋なファンによる熱量の高い発信を促しています。

さらに、特定のハッシュタグを付けて投稿したユーザーからアンバサダーを選出するなど、誰でも参加しやすい開かれた仕組みも採用しているのです。

ネスレ日本:ネスカフェアンバサダー

ネスレ日本が展開する「ネスカフェアンバサダー」は、従来のSNS中心のアンバサダーマーケティングとは一線を画す取り組みです。

アンバサダーになると、コーヒーマシンの無料レンタルや1杯20円からの多彩なカフェメニュー、マシン保証など、実用的な特典が利用できます。職場にコーヒースペースを設けるだけで参加でき、SNSでの発信は必須ではありません。

特筆すべきは、アンバサダー同士が自然につながり、LINEやFacebookなどで自主的なコミュニティを形成している点です。テレビCMによる認知もありますが、実際には「知人に勧められて導入を決めた」という口コミ経由での参加が多く、信頼感のある紹介が応募を促進しています。

企業からの強い働きかけがなくとも、参加者の満足度の高さが、結果的にマーケティング効果を高めている好例です。

カルビー:会員制ファンサイト

カルビーは「じゃがりこ」のファン向けに、2007年から2021年まで会員制サイト「それいけ!じゃがり校」を運営していました。学校を模したクローズドな仕組みで、毎年冬に実施される“入試”に合格したユーザーだけが“入学”できる、選ばれた人だけのコミュニティです。

最大の魅力は、新商品開発への参加機会です。テスト販売商品の試食やアンケートに協力することで、ユーザーの声が実際の商品に反映されていました。

なかでも、生徒と1年かけて開発するプロジェクトは高い注目を集め、販売後に年間トップの売上を記録するものもありました。参加者は商品を自腹で購入するため、寄せられる声は率直かつ真剣そのものです。

現在「じゃがり校」は終了していますが、SNSやUGCを活用したオープンなコミュニケーションに切り替えることで、ユーザー主導の発信へと舵を切っています。

まとめ|アンバサダーマーケティングで共感を生むPR

アンバサダーマーケティングは、共感と信頼を軸にブランドのファンを増やす効果的な手法です。熱量の高い支持者と継続的な関係を築くことが成功のカギとなります。成果を上げるには、適切なアンバサダーの選定や、自発的な参加を促す仕組みが重要です。

Meltwaterのツールを活用すれば、候補者の影響力や投稿傾向を可視化し、精度の高い選定をすることが可能になります。ご興味がある方は、お気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。

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この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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