「〇〇といえば、あの商品」というように、特定のカテゴリーにおいて、あるブランド名が瞬時に思い浮かぶことがあります。このブランドのことを「第一想起」といいます。マーケティングを通して第一想起を獲得できれば、顧客が増え売上につながるでしょう。
本記事では、ブランド戦略の要となる「第一想起」の意味や重要性について解説します。純粋想起との違いから具体的な測定方法、SNSや広告を戦略的に活用した獲得手法までお伝えしていきます。
第一想起とは?
第一想起が重要な理由4つ
第一想起の調査・測定方法
第一想起を獲得するための具体的な手法
第一想起獲得成功のためのポイント5つ
第一想起獲得の成功事例
よくある質問(FAQ)
まとめ:第一想起獲得で選ばれるブランドに
第一想起とは?
第一想起(Top of Mind Awareness/トップ・オブ・マインド・アウェアネス)とは、特定のカテゴリを聞いた際に消費者が真っ先に思い浮かべるブランドのことです。例えば「ハンバーガーといえば?」という問いに対し、「マクドナルド」のように最初に浮かぶ特定の店名などを指します。
多くの人は製品・サービスの購入を検討する際、最初に思い出したブランドを選ぶ傾向があるため、第一想起を獲得することはマーケティングにおいて重要です。知名度を上げるだけでなく、特定のカテゴリーとブランドとの結びつきがポイントになります。カテゴリーやターゲット層に合ったメッセージを発信したり、競合他社と差別化を図ったりするなど、ブランディング施策が必要です。
純粋想起、助成想起との違い
ブランドが想起される度合を測る指標として、主に以下の3つがあります。
- 第一想起:特定のカテゴリーのうち、ヒントなしで真っ先に思い浮かぶブランド
- 純粋想起:特定のカテゴリーのうち、ヒントなしで思い浮かぶ複数のブランド。第一想起を含む、上位数件を指す
- 助成想起:選択肢一覧やロゴなどのヒントがあれば思い出せるブランド
第一想起は認知の最上位であり、競合に対して圧倒的な優位性を持ちます。ブランディングにおいては、まず「助成想起」で認知を広げ、次にヒント不要の「純粋想起」を目指し、最終的に「第一想起」へと昇華させることが重要です。
関連用語:ブランドカテゴライゼーション
「ブランドカテゴライゼーション」とは、顧客がブランドの認知から選択までのプロセスにおいて、どのようにブランドをグループ分けしているかを分析する手法の一つです。第一想起は、このブランドカテゴライゼーションの最終段階に位置します。
- 知名段階(知名集合・非知名集合)
ブランドの名前を知っているかどうかで分けられる
- 処理段階(処理集合・非処理集合)
知名集合のうち、ブランドの特徴やカテゴリが理解できるかどうかで分けられる
- 考慮段階(想起集合・保留集合・拒否集合)
購入するかどうか考える段階で、処理集合のうち、優先度の高い「想起集合」・優先度の低い「保留集合」・購入を検討しない「拒否集合」に分けられる
- 選考段階
ブランドを選ぶ段階で、想起集合のうち初めに検討される「第一想起」と、2番目以降の「その他の想起集合」とに分けられる
第一想起のブランドは唯一無二の存在ですが、その地位を築くのは容易ではありません。まずは検討リストの上位枠である「想起集合」に入ることができれば、選ばれる確率は格段に高まるでしょう。顧客ニーズを改めて洗い出し、ブランドの独自性を打ち出すことが成功への鍵となります。
第一想起が重要な理由4つ
顧客の記憶において最上位のポジションを占める「第一想起」を獲得すると、以下のようなメリットがあります。
1. ブランドの購入率が高まる
顧客が製品を選ぶ際、最初に思い浮かべたブランドが選ばれる確率は、他の候補に比べて圧倒的に高まります。実際に株式会社トライバルメディアハウスの調査では、第一想起のブランドの購入率が最も高くなっています。
2. 潜在顧客層へのリーチが容易になる
第一想起の強みは、顧客に顕在的なニーズが生じる前の段階から、有利な位置を独占できる点にあります。例えば、まだ車を買い替える予定がない時期でも、特定のメーカーが頭に刷り込まれていれば、いざ「買おう」と決めた瞬間にそのブランドが最初の検討候補となります。
3. 競合ブランドと比較されにくい
特定の分野で不動の地位を築くと、他社との比較競争そのものを回避できる可能性が高まります。通常、購入前にはスペックや価格の相見積もりが行われますが、第一想起されるブランドはその検討プロセス自体がスキップされ、「そのブランドだから買う」という行動を生みます。ブランド戦略を徹底することで、唯一無二の価値を確立でき、価格競争にも巻き込まれなくなるでしょう。
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4. 口コミの獲得・信頼性の向上につながる
「〇〇ならこれ」という確固たるイメージは、信頼とポジティブな口コミにもつながります。口コミは顧客の自発的な紹介のため企業広告よりも高い説得力を持ち、新たな顧客を呼び寄せるきっかけになります。口コミが広がれば信頼性もさらに向上するという好循環ができるのが、メリットです。
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第一想起の調査・測定方法
自社のブランドが市場でどのポジションを占めているかは、データで客観的に把握することができます。代表的な3つの測定手法を解説します。
アンケート・インタビュー
第一想起を最も直接的に把握する手法は、ターゲット層へのアンケートやインタビューです。「〇〇といえば?」とカテゴリーを指定したうえで、初めに想起されるブランドを自由回答形式で問いかけます。どのような広告を見たことがあるかも併せて調査することで、想起のきっかけを探ることができるでしょう。
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検索量分析
検索エンジンでどのくらいブランド名が検索されたかも、第一想起の調査として有効です。「Google キーワード プランナー」などのツールを用い、ブランド名単体やカテゴリーを組み合わせた検索ボリュームを定点観測しましょう。競合を上回るペースで検索数が増加していれば、第一想起のポジション獲得へ進んでいる証拠です。
ブランド発見のきっかけは、以下のグラフの通り検索エンジンがトップです。
引用元:Digital 2026: グローバル・デジタルレポート(日本)
ブランドの認知経路として「検索エンジン」を使っているユーザーは39.1%にのぼり、テレビ広告やウェブ広告を上回る最大の流入源です。検索行動を緻密に分析することで、戦略の精度は向上するといえるでしょう。
SNSの活用・分析
SNSは、自社ブランドとユーザーとのつながりの強さを確認することができ、第一想起にどのくらい近づいているかを把握するのに有効な場です。自社アカウント投稿への反応率を測定したり、検索機能で「ブランド名+口コミ」を調べたり、インフルエンサーやアンバサダーによるUGC(ユーザー生成コンテンツ)を分析したりする方法があります。
SNS分析にはメディアインテリジェンスやソーシャルリスニングツールを導入するのがおすすめです。投稿内容のセンチメント分析を行うこともでき、ブランドが好意的に想起されているかを即座に可視化できます。ツールの活用によるリアルタイムのモニタリングは、トレンドに合わせた迅速な施策展開と大幅な効率化を可能にします。
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第一想起を獲得するための具体的な手法
第一想起の座を勝ち取るには、記憶の中にブランドの居場所を築き上げる戦略的なステップが欠かせません。
広告施策
第一想起を獲得するには、顧客との接触回数を増やし、記憶に強く残す広告戦略が不可欠です。予算や狙う層に応じ、特性の異なる媒体を戦略的に使い分けましょう。
- マス広告:テレビCMや新聞、雑誌などを通じ、不特定多数に急速な認知向上を狙える
- Web広告:検索結果や動画サイトに掲載し、自社のターゲット層へ効率的にアプローチする
- SNS広告:利用者の興味・関心に基づいて配信でき、情報の拡散も期待できる
マス広告は広範囲にリーチできる一方、コスト面での負担が大きくなります。対してWeb広告やSNS広告は少額から運用でき、精度の高いターゲティングで投資対効果を最大化できるのが利点です。
オウンドメディアの運用
自社運営のWebサイトやブログなどのオウンドメディアは、自社製品の特徴や強みを詳しく伝えられるチャネルです。専門的な情報を継続して発信すれば、検索エンジンからの流入を増やせるだけでなく、ユーザーからの信頼獲得にもつながります。
ただし、コンテンツの蓄積には時間がかかるため、短期間で成果を出すのは容易ではありません。即効性を求める広告とは異なり、中長期的な視点でブランドの認知を安定させるための施策として活用しましょう。
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SNSでの発信
SNSは第一想起を築く上で欠かせないチャネルです。
- 自社アカウントでの投稿:いいねやコメント、アンケート機能などでユーザーと交流することで、身近な存在としてブランドを浸透させる
- インフルエンサーやブランドアンバサダーの起用:より多くのユーザーにブランドが認知される
- キャンペーンの実施:ブランドがある程度認知された後に参加型のキャンペーンを行うと、よりユーザーの記憶に定着される
ただし、成果を出すには媒体特性に合わせた継続的な運用が欠かせません。専門的な知見を取り入れ、体制を整えて取り組むことが成功の鍵です。
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ポジティブな口コミ・UGCの獲得
既存顧客によるポジティブな口コミや、SNS・ブログなどでのユーザーの投稿(UGC)は、広告費を抑えながら第一想起を獲得するのに有効です。実際に利用した人の感想は信頼される傾向があり、他のユーザーにもブランドの好印象を与えるでしょう。
良質な口コミやUGCの促進に必要なのは、顧客体験の向上です。製品の品質やサービスの対応に満足して初めて、他者に勧めたくなる自発的な声が生まれます。まずは「誰かに教えたくなる体験」を提供し、信頼の積み重ねによって自然な想起を狙いましょう。
第一想起獲得成功のためのポイント5つ
顧客の記憶にブランドを深く刻むには、心理に働きかける戦略的な工夫が求められます。押さえておくべき5つのポイントを解説します。
1. CEP(カテゴリーエントリーポイント)の設計
CEPとは、顧客が製品やサービスを欲するきっかけとなる場面のことです。例えば、「忙しいので料理する時間がない」「仕事用のいすが使いづらい」といった場面が挙げられます。自社製品に適したCEPを設計することで、ブランド想起に直結します。複数のCEPを用意すると、より第一想起の獲得に近づけるでしょう。
2. 製品・サービスの差別化と品質向上
第一想起を支える土台は、他社にはない独自の特徴と安定した品質です。どれほど露出を増やしても、製品自体に魅力がなければポジティブな印象は残せません。顧客の期待を上回る価値を提供し続けることが、選ばれるための最低条件です。
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3. ブランドの一貫性の維持
第一想起を勝ち取るには、発信するメッセージや画像の雰囲気、ブランドコンセプトなどに一貫性を持たせることが必要です。時期や媒体によってブランドイメージが揺らぐと、顧客の記憶に残らなくなってしまいます。一貫性はブランドに対する共通認識を作り上げ、ブランドの資産価値であるブランドエクイティを底上げするでしょう。
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4. 継続的なPR活動
SNSやメディアなどを通したPR活動は、認知を広げるための基本的な施策です。複数のチャネルを組み合わせて継続的に露出すると、見る人の記憶に残るでしょう。PRは多すぎると嫌悪感を抱かれ、少なすぎると忘れられてしまうため、接触頻度であるフリークエンシーの最適化が必要です。
5. 効果測定や改善のPDCAサイクルの確立
施策の実行後は、定期的な効果測定と改善をし、PDCAサイクルを回し続けることが不可欠です。アンケート調査や検索ボリュームの推移を定点観測し、自社ブランドが「真っ先に思い出される存在」へと近づいているかを数値で客観的に把握しましょう。検証と修正のプロセスを積み重ねることで、ブランド戦略の精度は着実に高まります。
第一想起獲得の成功事例
市場で圧倒的なシェアを誇るブランドは、共通して「顧客の記憶に触れ続ける仕組み」を構築しています。ここでは、巧みな接点づくりによって強い印象を残している企業の事例を紹介します。
コカ・コーラ:さまざまなタッチポイントで一貫したメッセージ発信
飲料メーカーのコカ・コーラは、コンセプトの一貫性を守りぬき「炭酸飲料水といえば」の第一想起を獲得しています。コカ・コーラの使命は「Refresh the World. Make a Difference.(世界中にさわやかさを提供し、前向きな変化をもたらすこと)」です。弾けるような製品ロゴにはじまり、スポーツイベントを支えたりライブを主催したりするなど、さまざまなタッチポイントで一貫したメッセージを発信しています。
例えば、冬のクリスマスキャンペーンは、季節の訪れと共にブランドを思い出す強力なきっかけとなっています。また、名前入りラベルの導入など、顧客が自分事として楽しめる体験の提供も怠りません。
こうした多角的な施策が単なる認知を超えた愛着を生み、何かを飲みたい瞬間に真っ先に選ばれる理由となっています。
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ニトリ:覚えやすくて事実に沿ったキャッチコピー
ニトリは、「お、ねだん以上。」というキャッチコピーに象徴されるように「手頃なのに期待を上回る品質」を提供し続け、家具・インテリア界での第一想起を確立しました。製造から物流、販売までを自社で完結させる独自のビジネスモデルを作り上げ、オウンドメディアでも体制づくりに関する熱い思いを発信しています。覚えやすいキャッチコピーと、それを裏付ける納得のいく価格と品質が、揺るぎないポジション確立へとつながった事例です。
ソフトバンク:ユニークで記憶に残るPR
ソフトバンクは、他社とは一線を画す広告戦略で第一想起を勝ち取りました。テレビCMの「白戸家」シリーズで、意外性のあるキャラクター設定とストーリー展開により、幅広い世代へ強烈なインパクトを残しています。競争が激しい通信業界において、一度見たら忘れられないユーモアを押し出すことで、ブランド認知を確固たるものにしました。さらに、プロ野球球団「福岡ソフトバンクホークス」の運営を通じ、スポーツ支援の側面からも信頼を深めています。
よくある質問(FAQ)
第一想起の獲得に向けて、多くの担当者が直面する疑問にお答えします。
Q. 第一想起はB2Bにおいても重要ですか?
A. 非常に重要です。顧客が「課題を解決したい」と考えた時点で自社ブランドが想起されれば、RFP(提案依頼書)の送付先やベンダー選定のリストに優先的に選ばれ、商談を有利に進められます。ブランドイメージに沿えるよう、実際に顧客の困りごとに応えていきながら信頼を育んでいくことも、もちろん大切です。
Q. 大企業でなくても第一想起を獲得できますか?
A. 十分に可能です。 大手企業と正面から競うのではなく、特定のシーンや文脈に絞った「想起の細分化」戦略を推奨します。
例えば「オフィス家具」全体で一番を目指すのは難しくても、「リモートワーク中の姿勢を正す椅子」といった狭いカテゴリーであれば、中小企業でも第一想起を獲得できるチャンスがあります。製品の利用場面を具体的に絞り込み、その領域での専門性を徹底して発信しましょう。
まとめ:第一想起獲得で選ばれるブランドに
第一想起とは、特定のカテゴリーで顧客が真っ先に思い浮かべるブランドのことです。この座を勝ち取ることで、比較検討の土俵に優先的に乗れるだけでなく、過度な価格競争から脱却し、良質な口コミが自然に広がる好循環を生み出せます。
第一想起の獲得には、想起のきっかけとなる「CEP」を意識した広告運用、SNSでのUGC活用、そしてブレないメッセージの発信が欠かせません。また、アンケートや検索データの定点観測を通じて施策の成果を可視化し、PDCAサイクルを回し続けることが成功を引き寄せます。
自社の市場における立ち位置を正確に把握するのに活用されるのが、メディアインテリジェンスなどの専門ツールです。データに基づいた効率的なブランド管理を実現しましょう。
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この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

