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ブランド戦略とは

ブランド戦略とは?戦略の立て方や事例・成功のポイントを解説


宮崎桃

Oct 12, 2023

ブランディングの成功には、ブランド戦略が欠かせません。消費者が認識するイメージと、商品・サービスの価値とを近づけるためには、まずは誰に向けたどんなブランドなのかを定義付けしたり訴求方法を決めたりする必要があるのです。

ただ、そもそもブランド戦略が一体どのようなものなのか、どのような手順でブランド戦略を考えればいいのか、分からない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ブランド戦略の意味やブランディングとの違い、ブランド戦略を立てるメリット、失敗しないブランド戦略の立て方やポイント、成功事例をご紹介します。

消費者を引き付けるような魅力的なブランド戦略の参考になれば幸いです。

ブランド戦略とは?

ブランド戦略とは、ブランドを生み出していくための戦略を意味しています。企業の経営理念(ミッション・ビジョン)や経営戦略、マーケティング戦略、コミュニケーション戦略、これらすべてがブランド戦略となります。

「どのように経営して理念を実現するのか?」という経営戦略、「どのように事業を成功させるのか?」というマーケティング戦略、そして「どのように消費者に伝えるのか?」というコミュニケーション戦略のすべてが、「なぜその会社が社会に存在するのか?」という経営理念のもと一貫性を持つことがブランド戦略には必要です。

What is brand strategy?

商品・サービスを長期的に安定して販売していくには、価格競争に陥らないことが大切です。一度競合と価格のみで比較されるようになってしまっては、どんどん価格を下げて販売するしかなくなり、価格競争から抜け出せなくなります。この状態を避けるためにも、消費者に対して働きかけるブランド戦略が重要になるのです。

ブランド戦略とブランディングの違い

Difference between brand strategy and branding

よく混同しやすい言葉として「ブランディング」が挙げられます。

ブランディングとは、ブランドの世界観を決める取り組み、その世界観に基づいて消費者に働きかける活動、そしてブランドの世界観に一貫性を持たせるための管理を指しています。この、ブランドの世界観を決める取り組みの部分が「ブランド戦略」です。

そもそも「ブランド」は、消費者一人ひとりの心の中に存在する、商品・サービスに対する感情やイメージを指しています。消費者の感情を作り上げるために、ブランドの在り方や見せ方を決めるのが「ブランド戦略」です。

つまり、ブランド戦略は「ブランディングの方向性」であり、ブランディングは「ブランドづくりの取り組み全体」を指しています。

ブランディングの定義や種類、実践する流れについては以下の記事をご覧ください。

▶あわせて読みたい:ブランディングとは?メリットや実践する流れについて解説

ブランド戦略を立てるメリット

ブランド戦略を立てることで、商品・サービスを消費者にどのように思ってもらいたいか、そのブランドの方向性や在り方が決まります。ブランド戦略が決まれば、具体的なブランドマーケティングへと落とし込んでいくことになります。

ブランド戦略を立てることは、以下のようなメリットに繋がります。

1. 競合との差別化ができる

ブランド戦略を行うことで、商品・サービスの知名度が向上し、競合サービスとの差別化ができるようになります。消費者が「こんなものが欲しい」と思ったときに、イメージに合う特定の商品・サービスが自然と思い浮かべば、購入率が高まるでしょう。競合との価格競争も避けられます。

2. リピート率向上や長期的な売上に繋がる

知名度とともに消費者からの信頼が強くなれば、購入のリピート率が高まり、長期的に売上を上げていくことができるようになります。「この商品・サービスだから欲しい」という消費者の思いが、リピート購入の決め手の一つになります。

3. 広告宣伝費を削減できる

ブランド戦略によってブランドが確立できれば、広告宣伝をしなくてもブランド自体が広告の役割を果たします。長期的に消費者に「指名買い」される状態を目指すのがブランド戦略です。短期的な売上向上には広告宣伝が効果を発揮しますが、ブランド戦略を立てて活動することで、広告宣伝がなくとも選ばれるようになるでしょう。

ブランド戦略に失敗するとどうなるか?

What happens when brand strategy fails?

ブランド戦略に失敗すると、ブランドに悪いイメージがついたり、ブランドのイメージと実際の商品がマッチしなかったりします。消費者は離れていき、最悪の場合は悪いイメージが長く続く可能性もあります。主な原因は、消費者目線で考えなかったことです。

ブランドに悪いイメージがつく場合

方向性やロゴなどが短期間で何度も変わるのは、悪いイメージがつきやすいです。消費者にブランドが浸透せず、応援してくれているファンを裏切ることにもなります。

アメリカのファストファッション「GAP」は2010年に突然ロゴを変えましたが、消費者から大批判を浴び、わずか1週間ほどで元のロゴに戻すことになりました。長年親しまれていたロゴが急に変わってしまう消費者の不安感を、理解していなかったことが要因の一つでしょう。

多面的な視点で配慮することも大切です。イタリアのファッションブランド「ドルチェ&ガッバーナ」は、2018年に広告動画でアジア系女性モデルがピザやパスタをはしで食べるという演出をしました。「人種差別的だ」と批判され、中国では不買運動が広がりました。

その地域の人の目線に立たなかったことが、失敗の要因です。

また、社員にブランド戦略が共有されていないと、社員自身の中でブランドへの意識が高まりません。結果、社員の不祥事や態度の悪さに繋がり、ブランドイメージを損なうこともあります。

ブランドのイメージと商品が合わない場合

悪いイメージはつかなくても、商品やサービスのイメージと合っていない戦略も、失敗事例と言えます。

例えばユニクロなどを展開する「株式会社ファーストリテイリング」は、2002年に野菜をネット販売する事業を立ち上げましたが、1年半後には大赤字を出しました。「ファーストリテイリング=アパレル」というイメージが強かったためでしょう。

また「マクドナルド」が2006年に発売したサラダマックがヒットしなかったのも、「ジャンクなものを食べたい」という消費者の潜在的ニーズを見失っていたことにあると見られます。

会社がチャレンジしてみたいという思いも大切ですが、消費者が抱くイメージとずれていないことが重要です。消費者目線に立ってどうしたら自社の良さや商品の特別感を出せるか、考え直してみると良いでしょう。

失敗しないブランド戦略の立て方

How to develop a fail-proof brand strategy

では、ブランド戦略をどのように立てるか、その手順を見ていきましょう。

step1. 誰に向けたブランドなのか、ターゲットを定義する

ブランディングにおいて大事なのは、自社の商品・サービスを支持してほしい消費者層を絞り、その対象に伝わるように働きかけることです。そのため、誰に向けたブランドなのか、ターゲティングすることから始めましょう。年代・性別・属性の他にも、好みやニーズなども含めて詳細に明確化していきます。

step2. 市場における立ち位置(ポジション)を決める

商品・サービスが展開される市場において、自社がどのような立ち位置にいるのか、そのポジショニングを考えましょう。自社ブランドの独自性や他にはない魅力など、差別化するポイントを特定します。ポジショニングの観点としては、価格帯・品質・デザイン性・機能性など様々あります。

step3. どのようなブランドなのか、アイデンティティを定義する

消費者から商品・サービスに対してどのようなイメージを持ってほしいのか、そのアイデンティティを定義します。ブランドが何を達成しようとしているのか、どのような価値観を提供したいのか、といったコンセプトまで定義することが大切です。他社と差別化できるような、自社の強みを生かしたアイデンティティを設定します。

▶あわせて読みたい:ブランドアイデンティティとは?定義や構成要素、成功事例を解説

step4. ブランドを象徴するロゴ・デザイン・キャッチコピーなどを作る

商品名・サービス名以外に、ロゴ・デザイン・キャッチコピーなどもブランドを象徴するものです。CMやパンフレット・商品パッケージ・Webページなどでロゴを見ただけで、商品・サービスが思い浮かんだり、キャッチコピーがすぐに出てきたりするようになれば、イメージ作りに成功したと言えます。

step5. 最も効果的にブランドを訴求できる方法を決める

ターゲットである消費者にブランドを認知してもらうために、最も効果的な訴求方法を決めます。手法としては、広告・広報・PR・イベント・プロモーションなどがあります。どのようなアプローチが適切かを検討するにあたって、作りあげたいブランドやイメージ、対象者であるターゲットに合うものを選びましょう。

これらのステップの中で、最も重要なのは自社の強みを明確にすることです。市場のトレンドを掴み、競合との差別化ポイントを見出し、消費者のニーズや思いを汲み取り、それらをブランド戦略に活かすことが求められます。とはいっても、なかなかトレンドや消費者の考えを掴むのは難しいでしょう。

その場合、ソーシャルメディア分析ができるツールを活用するのも一つの手です。Meltwaterでは、ブランドのモニタリングやSNS上でのインサイト・トレンドの把握、オーディエンスを理解する消費者インテリジェンスが利用できます。ぜひ活用してみてください。

ブランド戦略の成功事例

ブランド戦略が成功している商品・サービスをご紹介します。

1. Apple

iPhone・iPad・Apple Watchなど様々な商品を展開するAppleは、熱狂的なファンを生み出すブランディングに成功しています。

その一つとして挙げられるのが、商品を販売する専用の実店舗「アップルストア」を作ったことです。アップルストアには、商品の購入タイミングだけでなく、修理依頼や新商品のお披露目イベントなどでもファンが集まります。魅力的な体験をしたファンたちが繋がり、「またApple製品を買おう」と思うようになっているのです。Apple製品を使っていない消費者の目にも留まりやすいシンプルなデザインが、ブランド力にさらに寄与しています。

2. 星野リゾート

リゾートホテルを展開する星野リゾートは、ブランドのコンセプト設計を行い、競争から抜け出すことに成功しています。

例えば、「星のや」では、非日常を求める人たちに向けて、客室にテレビも時計も置かず、ここでしかできない滞在体験を提供しています。アクティビティを豊富に提供する「リゾナーレ」では、宿泊だけでなく「その場所で誰とどんなことができるか」でブランディングを行っており、他の施設と重ならないポジショニングに成功しています。

3. ルイ・ヴィトン

中上流階級をターゲットに定め、生産量をあえて絞り込んでマーケティングを行ったのがルイ・ヴィトンです。独創的なデザインでありながら、あえて露出を制限して生産量を絞り込むことで、限定感を生み出し、誰もが手に入れたいと思うようなブランドへと育てることに成功しています。

ブランド戦略を成功に導く3つのポイント

Three key elements of a successful brand strategy

最後に、ブランド戦略成功のポイントを5つご紹介します。以下のような点に気をつけて、ブランド戦略を行ってみてください。

1. 正しいステップでブランド戦略を立てる

ブランドが消費者に浸透するには、正しいステップでブランド戦略を立てて、ターゲットやアイデンティティがぶれないようにすることがポイントです。方向性を決めずにいきなりコンセプトやキャッチフレーズを決めたとしても、消費者の心には響きません。先ほどご紹介したステップのとおりにブランド戦略を立てることをおすすめします。

2. ブランドマーケティング手法がコンセプトからズレないようにする

ブランド戦略を立てたあと、いわゆるプロモーション活動を行う「ブランドマーケティング」において、商品・サービスが大切にするコンセプトからズレないように注意してください。訴求したいポイントがズレている状態でいくらプロモーションを行ったとしても、ターゲットには届きません。

「操作が簡単」であることがポイントの商品・サービスであれば、機能面の事細かな説明は不要です。ポイントを絞って訴求をしましょう。

3. ブランド戦略がうまくいっているか検証する

ブランドは短期間で醸成されるものではありませんが、定期的に検証することは大切です。ブランドがどの程度浸透しているのかを「顧客推奨度調査(NPS/ネット・プロモーター・スコア)」で測りましょう。

NPSは「この商品・サービスを家族や友人に勧めたいですか?」というシンプルな質問に、10段階評価で回答するものです。0〜6は「批判者」、7・8は「中立者」、9・10は「推奨者」で、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値を推奨意向度として定点観測します。結果に応じて戦略を見直しましょう。

まとめ|適切なブランド戦略で、ブランドを確立させよう

ブランド戦略がなければ、どのような方針で商品・サービスのイメージを持ってもらうのか決める軸がなくなります。軸がぶれてしまうと、持ってほしいイメージとはズレたものになったり、イメージが一気に悪くなったりする可能性があります。

自社の理念やコンセプトを基にしながら、ターゲットや市場におけるポジション、コアとなるアイデンティティを明確にして、ブランドを作っていきましょう。

ターゲット理解や市場トレンド把握には、ソーシャルメディア分析が役立ちます。Meltwaterでは、消費者インサイトの理解や、SNS上での消費者の声を集約・分析することなどが可能です。適切なブランド戦略の検討にあたり、Meltwaterを使った分析も取り入れてみてはいかがでしょうか?

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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