消費者の広告離れが進むなか、多くの企業が新たなマーケティング手法を模索しています。そこで注目を集めているのが「ブランドアンバサダー」の活用です。
ブランドアンバサダーとは、企業やブランドの魅力を多くの人に紹介する役割を担う人物のことです。単なる広告塔ではなく、ブランドと消費者を繋ぐ重要な橋渡し役として機能するため、適切に選定すればブランドの認知度アップが図れます。
本記事では、ブランドアンバサダーを起用するメリットや注意点、選び方のポイントを詳しく解説します。
ブランドアンバサダーとは
ブランドアンバサダーの主な種類と役割
ブランドアンバサダー起用のメリット4つ
ブランドアンバサダーを起用する際の注意点3つ
ブランドアンバサダーの選び方のポイント5つ
日本人ブランドアンバサダーの事例3つ
まとめ|最適なブランドアンバサダー起用で認知拡大
ブランドアンバサダーとは
ブランドアンバサダーとは、企業やブランドの魅力を多くの人に紹介する役割を担う人物です。アンバサダー(Ambassador)は「大使」を意味する英語で、企業と消費者をつなぐ橋渡し役として機能します。
著名人だけでなく、そのブランドを愛用する一般のファンやロイヤルカスタマーも含まれるのが特徴です。ブランドアンバサダーはブランドへの強い思いを持ち、SNSやイベントなどで商品やサービスの魅力を伝えます。
短期的な広告とは異なり、継続的にブランドと関わることで、ブランディング効果を高め、多くの人にブランドの価値を届ける重要な存在となっています。
インフルエンサーとの違い
ブランドアンバサダーは元々そのブランドのファンとして長期的に活動するのに対し、インフルエンサーは影響力を活用して短期間で認知拡大を図るのが大きな違いです。
アンバサダーは商品やサービスへの深い愛着から生まれる信頼性の高い発信をするのが特徴で、消費者に親近感を与えやすくなります。インフルエンサーは多数のフォロワーを持つ影響力で多くの人にアプローチでき、短期間での認知度アップに効果を発揮します。
また、アンバサダーは1つのブランドに1〜2名の少数精鋭で起用されますが、インフルエンサーはキャンペーン規模に応じて複数名が同時起用されることが一般的です。
ブランドアンバサダー | インフルエンサー | |
---|---|---|
ブランドとの関係 | 元々のファン・愛用者 | 影響力を持つ人物 |
契約期間 | 長期契約(数ヶ月〜数年) | 短期・単発契約 |
起用人数 | 1〜2名程度 | 複数名 |
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ブランドアンバサダーの主な種類と役割
ブランドアンバサダーは「オンラインアンバサダー」と「対面アンバサダー」の2つのタイプに分けられ、それぞれ異なる特徴と役割を持っています。
オンラインアンバサダー
オンラインアンバサダーは、SNSやインターネット上でブランドの魅力を伝えるのが特徴です。InstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどのプラットフォームを活用し、商品の使用感や利用体験を共有します。
具体的な活動内容には、SNSでの商品紹介やブログでの体験レビュー、オンラインイベントへの参加、などがあります。地理的な制約を受けないため、世界中のファンにアプローチできるのが大きな強みです。コロナ禍を機に注目度が高まり、現在では多くの企業が積極的に活用しています。オンラインならではの拡散力を活かし、短時間で多くの人にブランドの情報を届けることができるのです。
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対面アンバサダー
対面アンバサダーは、オフラインのイベントや実店舗でファンと直接交流しながらブランドを紹介するのが特徴です。展示会やPRイベント、店頭での実演販売など、リアルな場での活動が中心となります。
主な業務には、イベント会場での販促品配布やブランドロゴ入りのユニフォーム着用による広告塔として活動すること、商品のデモンストレーションなどがあります。オンラインアンバサダーとの最大の違いは、ファンと顔を合わせて交流できる点です。
アンバサダーが有名人であれば、ファンにとっては直接会える貴重な機会となり、高い集客効果が期待できます。
ブランドアンバサダー起用のメリット4つ
ブランドアンバサダーを起用することで、以下のようなメリットが得られます。
- ブランド認知度の向上
- ブランド信頼性の強化
- ターゲット層への的確なアプローチ
- 顧客エンゲージメント向上
それぞれ詳しく解説します。
ブランド認知度の向上
ブランドアンバサダーを起用する最大のメリットは、ブランド認知度の向上です。影響力を持つアンバサダーを通じて、これまでブランドを知らなかった潜在顧客にリーチできます。
有名人やフォロワー数の多いインフルエンサーがアンバサダーとなることで、一度の投稿によって数万人から数百万人にブランド情報を届けることも可能です。従来の広告と異なり、アンバサダーの投稿は自然な形でフォロワーのタイムラインに現れるため、広告への嫌悪感を抱かれにくいのも特徴です。SNSでの拡散効果により、アンバサダー自身のフォロワーを超えて情報が広がる可能性もあります。
ブランド信頼性の強化
ブランドアンバサダーの起用により、従来の企業広告よりも高い信頼性を獲得できます。消費者が広告離れしているなか、その発信は第三者による客観的な評価として受け取られるためです。
実際にブランドを愛用しているアンバサダーの場合、商品への深い理解から生まれる発信には説得力があり、良い面だけでなく注意点も含めた率直な意見を提供できます。
このように信頼できる人物からの推薦には、ブランドへの信頼性を向上させ、消費者の購買意欲を高める効果があります。
ターゲット層への的確なアプローチ
ブランドに適したアンバサダーを選定することにより、自社のターゲット層にピンポイントでアプローチすることができます。
たとえば、若い女性向けの化粧品であれば、同世代の女性から支持を集める美容系インフルエンサーを起用すれば、関心の高いユーザーに直接訴求できます。フィットネス商品なら筋トレ愛好者のフォロワーを持つトレーナー、ガジェット商品なら技術に詳しいYouTuberといったように、商品特性に合ったアンバサダーを選択すると良いでしょう。
ターゲット層が既にそのアンバサダーに興味を持っているため、ブランドメッセージも受け入れられやすいのがメリットです。
顧客エンゲージメント向上
ブランドアンバサダーは、顧客エンゲージメント向上にも寄与します。従来の一方向的な広告とは異なり、双方向のコミュニケーションを通じて熱心なファンを育成できるからです。
アンバサダーがフォロワーからのコメントに返信したり、質問に答えたりすることで、ブランドへの親近感が高まるでしょう。また、アンバサダーを中心としたファンコミュニティが形成されることで、顧客同士の交流も生まれます。
活発なコミュニケーションは顧客ロイヤルティの向上につながり、長期的に見て売上アップにもつながります。SNSでの高いエンゲージメント率は、プラットフォームのアルゴリズムでも優遇されるため、より多くの人に情報が届きやすくなるのもメリットです。
ブランドアンバサダーを起用する際の注意点3つ
ブランドアンバサダーを起用する際の注意点は以下の3つです。
- 不祥事などのリスク
- 長期的な戦略性と関係維持の難しさ
- 明確な契約条件の提示が必要
順番に詳しく解説します。
不祥事などのリスク
ブランドアンバサダーが不祥事やスキャンダルに巻き込まれた場合、そのダメージがブランドに波及するリスクがあります。
特に有名人やインフルエンサーを起用する場合、その人物の過去の言動や社会的評判を慎重に調査する必要があります。不適切な発言や行動が発覚すると、そのニュースが拡散され、ブランドの失墜につながりかねません。
リスクを最小限に抑えるためには、アンバサダーを選定する際に、徹底した調査を行い、契約期間中も継続的にモニタリングすることが不可欠です。万が一の事態に備えた危機管理体制の整備も重要な対策といえるでしょう。
長期的な戦略性と関係維持の難しさ
ブランドアンバサダーとの関係は長期にわたるため、継続的な関係構築も重要です。アンバサダーのライフスタイルや価値観の変化、ブランド戦略の方向転換などにより、当初の方向性とのズレが生じる可能性があるからです。
また、長期契約であるがゆえに、市場の変化に柔軟に対応することが困難になる場合もあるでしょう。アンバサダー自身のモチベーション維持も重要な要素です。
この問題を解決するためには、企業とアンバサダーが定期的に話し合いの場を設け、お互いの現状や課題を共有することが大切です。同時に、アンバサダーの活動がブランドの方針と合致しているかを定期的にチェックし、必要に応じて調整する仕組みも必要になります。柔軟性を保ちながらも、一貫したメッセージを発信できる体制づくりが求められるでしょう。
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明確な契約条件の提示が必要
ブランドアンバサダーとの契約では、あいまいな条件設定によるトラブルを避けるため、詳細で明確な契約書の作成が不可欠です。報酬体系や契約期間、活動内容、遵守すべき事項など、すべての条件を具体的に定める必要があります。
特に報酬については、定額制かフォロワー数連動制かを明確にし、支払い時期やその条件も詳細に規定しましょう。活動内容については、SNSの投稿頻度やイベントへの参加義務などを記載することが重要です。
また、契約終了の条件や、不祥事発生時の対応についても事前に取り決めておく必要があります。
法的な観点からも専門家のチェックを受け、双方にとって公平で実行可能な契約条件を設定しましょう。
ブランドアンバサダーの選び方のポイント5つ
ブランドアンバサダーを選ぶ際には、以下の5つのポイントを重視しましょう。
- ブランドイメージとの一致度
- ブランドへの熱量と理解度
- 信頼性の高さ
- ファンとのエンゲージメントの高さ
- SNSやメディアでの影響力
ブランドイメージとの一致度
ブランドアンバサダーの選定において最も重要なポイントは、候補者の価値観やイメージがブランドイメージと一致しているかどうかです。アンバサダーの個性や信念がブランドと調和することで、消費者に一貫性を感じてもらえ、効果的なメッセージ伝達が可能になります。
知名度やフォロワー数だけに目を向けず、自社の経営理念やミッションに合った人物を選ぶことが大切です。たとえば、環境に配慮したブランドであれば、普段からエコ活動に積極的な人物を選定するといった具合です。ブランドのターゲット層とアンバサダーのフォロワー属性が一致することも重要な要素となります。
表面的に人気のある人物ではなく、ブランドの本質と共鳴する人物を選ぶことで、長期的で信頼性の高いパートナーシップを築けるでしょう。
ブランドへの熱量と理解度
自社のブランドに対する強い思い入れと深い理解を持つ人物を選定することが重要です。日頃から商品やサービスを実際に利用している熱心なファンであれば、ブランドコンセプトを真に理解し、情熱を持って情報発信してくれるからです。
「このブランドを多くの人に知ってもらいたい」、「商品の良さを伝えたい」という高い熱量を持つ人物は、自然で説得力のあるメッセージを発信できます。マニアレベルの知識を持つファンであれば、商品の細かな特徴や使い方のコツまで詳しく紹介してくれるでしょう。
また、熱心なアンバサダーからのフィードバックは商品開発にも活用できる貴重な情報源となります。
信頼性の高さ
ブランドアンバサダーの候補者が消費者から信頼される人物かどうかを見極めることも重要です。SNS上での発言内容や投稿の質をチェックし、専門分野に関する知識の正確性やフォロワーからの質問に対する回答内容を確認しましょう。
責任感があるかどうかも重要な要素です。投稿スケジュールを守る、契約条件を遵守するといった基本的な信頼関係を築く行動ができるかを見極め、長期的なパートナーシップに適した人物を選定しましょう。
消費者に対して正直で透明性の高い情報発信ができる人物であることが、ブランドの信頼性アップにつながります。
ファンとのエンゲージメントの高さ
ブランドアンバサダーがフォロワーと良好な関係性を築けているかも大事です。単にフォロワー数が多いだけでなく、投稿に対するいいねやコメントへの返信率が高い人物を選びましょう。
コメントへの返信やファンとの会話を積極的に行う人物は、双方向のコミュニケーションを通じてファンとの信頼関係を深めてくれるはずです。
エンゲージメントが高いアンバサダーは、ファンからの意見や要望を企業に伝えてくれる貴重な存在です。交流を通じて商品改善のヒントを得られることも多く、ブランド価値向上に大きく寄与してくれるでしょう。
SNSやメディアでの影響力
ブランドアンバサダー候補者のSNSでの影響力も重要です。フォロワー数だけでなく、投稿の質やリーチ数、拡散力なども重要な指標となります。
膨大な候補者の中から最適な人物を見つけ出すには、専門ツールの活用がおすすめです。たとえば、Meltwaterのインフルエンサーマーケティングツールを使うと、3,000万人のインフルエンサーの中からAIの力で条件にあったクリエイターを探し出すことができます。インフルエンサーの精査や分析、管理、効果測定がひとつのツールで完結します。さらに、このツールはあらゆるSNSに対応しているのです。
このようなツールを活用すれば、データに基づいて客観的に選定できるようになります。
▶︎Meltwaterのインフルエンサーマーケティングツール
日本人ブランドアンバサダーの事例3つ
ブランドアンバサダーの起用効果を理解するために、実際の成功事例を見てみましょう。以下の3つの事例は、それぞれ異なるアプローチでブランド価値向上を実現しています。
大谷翔平選手×ECC
英会話大手のECCは、ブランドアンバサダーである大谷翔平選手の結婚発表の翌日、共同プロジェクト「SHOW YOUR DREAMS 2024」を発表しました。
このプロジェクトは大谷選手が発案したもので、日本在住の小学4年生から高校3年生までの100人をアメリカ短期留学に招待するという取り組みです。3月5日にライブドアニュースが本件について報道すると、すぐさま拡散され、メンション数は38,000まで急上昇しました。
Meltwaterのツールの分析によると、関連キーワードには、「大谷翔平」、「海外留学」、「ホームステイ」などのほか、同業他社のキーワードまで挙がり、大きな波及効果があることが分かりました。この事例は、アンバサダーの社会貢献活動とブランドのサービスが自然に融合した理想的なコラボレーションといえるでしょう。
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渡辺直美×Adidas
スポーツブランドのadidasは、女性のインクルーシビティ(全ての人々が参加し、平等に扱われること)に着目したキャンペーンで芸人の渡辺直美さんをブランドアンバサダーに起用しました。
渡辺直美さんは就任にあたり「私はアディダスの『”不可能”なんて、ありえない。』というブランドの姿勢がとても好きで共感をしています」とコメントしました。彼女自身の体験として「周りから『不可能なんじゃないの?』と言われてきたのですが、なんとかチャレンジをし、夢をかなえるために今はニューヨークに移住しております」と語り、ブランドメッセージを体現する存在として説得力を持っています。
多様性を重視する現代の価値観に沿ったブランドイメージの構築を図った事例といえるでしょう。
キャンプ系インフルエンサー×ワークマン
ワークマンでは、製品が好きで継続的に発信してくれる方や専門分野に精通して製品開発に助言をしてくれる方を対象とした公式アンバサダー制度を設けています。いち早く新製品を見られたり新製品発表会に招待されたりする特典があり、アンバサダー自身がブランドの成長に積極的に関われます。
この制度を活用した成功事例が、キャンプ系インフルエンサーのサリーさんです。「サリーのキャンプチャンネル」でワークマンの商品を使ったキャンプ動画を配信し、実用性を実証しています。
専門分野に精通したインフルエンサーとの継続的なパートナーシップがブランド価値向上に寄与する好事例といえるでしょう。
まとめ|最適なブランドアンバサダー起用で認知拡大
ブランドアンバサダーは、従来の広告とは異なり、信頼性の高いマーケティング手法として、多くの企業で注目を集めています。
アンバサダーを選定する際は、知名度やフォロワー数だけでなく、ブランドの価値観と合致しているかが重要です。
自社ブランドに適したアンバサダーの起用により、認知度向上と顧客エンゲージメントの強化を実現し、持続的なブランド成長を目指しましょう。
この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。