「広告やSNS、イベントなど複数の施策を展開しているのに、思うような成果が出ない」と悩む担当者もいるのではないでしょうか。近年はスマートフォンの普及で様々なメディアにアクセスできるため、製品の発見後に検索を経て購入に至るユーザーが多くなっています。そのプロセスに合わせて複数のメディアを使い分けるのが、クロスメディアという手法です。
本記事では、クロスメディアの基礎知識から、具体的な戦略の立て方、成功事例までを分かりやすく解説します。
クロスメディアとは?
クロスメディア戦略のメリット
クロスメディアで活用する各メディアの特徴
クロスメディア戦略の具体例5つ
クロスメディア戦略の始め方5STEP
【業界別】クロスメディアの成功事例
まとめ|クロスメディア戦略はデータ分析が鍵
クロスメディアとは?
クロスメディアとは、同じ製品やサービスのプロモーションを複数のメディア媒体で連携させて行い、ユーザーを購買や申し込みといった次なる行動に導くマーケティング手法です。活用される媒体は、以下のようにオンラインとオフラインのどちらも含まれます。
活用される主な媒体の例
- マスメディア:テレビ・新聞・雑誌・ラジオなど
- デジタル領域: SNSやWebサイト、公式アプリ、ECサイトの紹介ページ
- 実店舗の販促: 店頭POPやポスター、直接商品を試せるサンプリング
- 屋外・交通広告: 街頭の大型ビジョンや駅構内、電車内のラッピング広告
- 対面イベント:新商品の展示会や試乗会など、実際に商品に触れられる場
例えば、店頭のポスターでQRコードを提示して自社のSNSアカウントに誘導したり、SNS広告のクリック先をWebサイトに設定したりする方法があります。初めに認知を獲得してから、別の媒体に誘導して製品・サービスの詳細を伝えることで、ユーザーの購買を後押しします。
インターネットとスマートフォンが普及し、近年は製品やサービスのことをよく調べたうえで購入する消費者が増えてきました。そのため、ユーザーの認知段階や検討段階などに合わせながら、様々なメディア媒体を使い分けることが、購買促進には効果的です。クロスメディアは、ユーザーの認知から購入までの流れに沿ったアプローチといえるでしょう。
クロスメディアとメディアミックスの違い
クロスメディアとメディアミックスは、どちらも複数のメディアを活用する点は共通していますが、「目的」と「アプローチ」には明確な違いがあります。
メディアミックスとは、テレビCM、新聞、Web広告など、複数のメディア媒体で同じメッセージを繰り返し発信し、認知度を一気に高める手法です。例えば、テレビCMとSNSキャンペーンを組み合わせることで、より幅広い層にアピールできます。
一方でクロスメディアとは、複数のメディア媒体を連携させ、ユーザーを特定のゴールへ導く手法です。「テレビからWebへ」「SNSから店頭へ」といった媒体間の移動を促しながら、より製品について知ってもらうことで、最終的には購買につなげます。
メディアミックスが認知拡大を目的としているのに対し、クロスメディアは認知から検討や購入など次のステップへユーザーに行動喚起させるのが目的です。
クロスメディア戦略のメリット
クロスメディア戦略を取り入れると、多角的なアプローチが可能となります。ここでは、複数メディアを組み合わせることで得られるメリットについて解説します。
複数のメディア活用で情報が補完できる
クロスメディアの大きな強みは、異なるメディアを活用することで、製品やサービスについて多角的に伝えられるという点です。例えば店頭で製品への興味を引き、そこからWebサイトに誘導して使い方などの詳細が示せれば、購買の検討材料になります。単体のメディアでは認知のみに留まる可能性がありますが、複数を連携させることで製品やサービスの情報をより詳しく伝え、購買につなげることができます。
様々なユーザーとの接点を増やせる
デジタルデバイスの普及により情報を得る手段は多様化していますが、ユーザー層によって親和性の高いメディアは異なります。デジタルネイティブ世代にはSNSやWeb動画が有効ですが、シニア層には依然として新聞や折り込みチラシ、テレビの影響力が強い傾向があります。クロスメディア戦略を展開すれば幅広いターゲットにアプローチが可能で、潜在顧客との接触機会も増やすことができます。
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購買行動の促進ができる
消費者の行動は、時代ごとのメディアによって左右されます。行動の流れを整理したものが「購買行動モデル」で、代表的なものは次の通りです。
| モデル名 | プロセス(購買行動の流れ) | プ主な特徴 |
|---|---|---|
| AIDMA | Attention(注意)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動) | マスメディア時代の基本モデル。広告で注意を引き、記憶に残すことで購買につなげる |
| AISAS | Attention(注意)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有) | インターネット普及後のモデル。端末での保存が可能になったことで「AIDMA」から記憶が消去され、検索と購入後の共有が追加された |
| SIPS | Sympathize(共感)→ Identify(認識)→ Participate(参加)→ Share & Spread(共有・拡散) | SNS時代の共感起点型モデル。投稿や口コミへの共感から、調べたり参加したりするという行動が始まり、情報のさらなる拡散につながる |
| DECAX | Discovery(発見)→ Engage(関係構築)→ Check(確認)→ Action(行動)→ eXperience(体験) | 購入後の体験まで重視されたモデル。購入につなげるだけでなく、ユーザーとの関係構築により良質な体験を提供し、口コミを促す |
| UGC(ユーザーによる投稿)→ Like(いいね!)→ Search1(SNSでの検索)→ Search2(検索エンジンでの検索)→ Action(行動)→ Spread(拡散) | SNS循環型モデル。情報の拡散が、さらなる「いいね!」や検索を生む |
インターネットやSNS(InstagramやYouTubeなど)の普及に伴い、製品を調べる「認識」「確認」「検索」や、消費者自らが情報を広げる「共有」「拡散」などの過程が加わり、消費者の行動は複雑になりました。つまり、複数のメディアの中でも、オンライン上のメディア媒体は特に必要とされているのが分かります。
例えば、AISASモデルはSNS広告で興味を持ったユーザーが検索して公式サイトで詳細を確認し、店頭で実物を見て購入、さらに購入後にSNSでレビューを投稿するといったように、オンラインの媒体が多く用いられます。
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データを統合することで分析の質が向上する
クロスメディアを実施すると、各メディアで得られたデータをまとめて分析できるため、顧客理解の精度が大きく向上します。Webサイトの閲覧履歴、SNS広告の反応、メールの開封率、イベント参加状況などを組み合わせると、「ユーザーがどの情報に反応し、どのタイミングで購買に近づいたのか」を把握できます。
複数メディアの効果測定には、ソーシャルリスニングツールを活用すれば、投稿内容の分析や反応の可視化を効率化でき、改善サイクルを高速化できます。統合データをもとに予算配分を最適化することで、ROIやROASの改善にもつながるでしょう。単一メディアでは見えなかった課題が明確になり、より精度の高いマーケティングが可能になります。
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クロスメディアで活用する各メディアの特徴
主要なメディアの特徴は、以下の通りです。
| メディア | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| Webサイト (公式サイト、ブログ、ニュースサイトなど) | ・効果や反響などのデータ取得が容易 ・Web広告で露出を増やすことができる | ・検索などユーザーの能動的な行動がないと見られにくい |
| SNS (Instagram, X, Instagram, YouTube, Tiktokなど) | ・拡散性が高い ・個人とダイレクトにコミュニケーションが取れる ・ターゲティング精度が高い広告を掲載できる | ・炎上リスクがある ・継続的な運用負荷が高い |
| テレビ | ・視聴率は下がってきているものの、インターネットに次ぐリーチ力がある ・視覚的かつ聴覚的にアピールできる | ・費用が高額 ・放送枠による情報の制限がある |
| ラジオ | ・特定の地域やライフスタイルへ合わせた訴求に強い | ・聴取率が低い ・情報を視覚的に伝えられない |
| 雑誌 | ・読者層が明確 ・情報の信頼性が高い | ・掲載位置を指定しにくい ・出稿から掲載まで時間がかかり、即時性に欠ける |
| 新聞 | ・社会的信頼が高い ・地域セグメントが可能 | ・1日で情報が古くなる ・若年層へのリーチが弱い |
| 屋外広告 (街頭の大型ビジョン、駅構内や電車内のラッピング広告など) | ・特定地域での反復接触に強い ・視認性が高い | ・属性を絞ったターゲティングが難しい ・アナログ広告の場合は差替えに時間がかかる |
| 店頭ポスター | ・実際に製品やサービスを使用する場にあると、訴求力が高まる | ・破損しやすい ・定期的な差替えが必要 |
| イベント (新製品の展示会、試乗会など) | ・イベントならではの特別な雰囲気の中で、消費者の好奇心を引き出せる ・消費者と対面でやり取りでき、信頼関係を構築できる | ・場所の確保や移動に時間とコストがかかる |
クロスメディア戦略の具体例5つ
クロスメディア戦略の代表的な5つのパターンを紹介します。
テレビCM→公式サイト
テレビCMから公式サイトへ誘導する手法は、クロスメディアの最も代表的なパターンです。テレビは短時間で強いインパクトを与えられる半面、伝えられる情報量には限りがあります。そこで「続きはWebで」といった導線を設けることで、公式サイトで製品説明、FAQ、事例紹介などの詳しい情報を届け、購入検討を促すことができます。
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SNS広告→オウンドメディア
口コミやレビューを起点とするULSSASタイプの購買行動が一般的になった現在、SNS広告は強力なメディア媒体です。SNS広告からオウンドメディアへ誘導すれば、開発秘話や比較記事、詳細な導入事例など、広告だけでは伝えきれない情報を届けられます。SNS広告はターゲティング精度が高いうえに、自社アカウントのフォローにもつながり、ユーザーとの継続的な接点を作り出すことが可能です。
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Webサイト→目的に沿ったCTA
Webサイトは製品の詳細が掲載できるため、「資料請求」「メルマガ購読」「無料トライアル」などのCTA(行動喚起)につなげやすいのが特徴です。購入を促すだけでなく、検討材料を用意することで、離脱を防ぎながら関心を深めてもらえます。
屋外広告→SNS
街頭ビジョンや電車内広告などの屋外広告(OOH)は、外出中のユーザーに自然な形で接触できる媒体です。一度に伝えられる情報量には限りがありますが、広告内にQRコードやアカウント名を明示してSNSの自社アカウントのフォローを促せば、ユーザーとの一過性の接触を継続的な接点へと変えられます。
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イベント・展示会→メール購読
展示会やセミナーなどのリアルイベントは、来場者と直接対話できる貴重な機会で、製品デモなどを通じて高い信頼関係を築けます。その場限りの接触で終わらせず、イベント後のフォローとしてメルマガ登録を促し、継続的な接点を確保することが重要です。登録後は、新製品情報や具体的な導入事例、限定キャンペーンなどを段階的に配信し、イベント当日に高まった熱量を維持しながらユーザーの検討を後押しします。
クロスメディア戦略の始め方5STEP
クロスメディア戦略を成功させるための、具体的な5つのステップを解説します。
STEP1. 自社の現状と市場の分析を行う
まずは、自社の現状と市場環境を客観的に把握することから始めましょう。自社製品の特徴や売上構造、市場シェアを整理するとともに、競合分析を行います。「価格は高いが品質で勝っている」「知名度は低いが顧客満足度が高い」など自社の立ち位置を正確に把握することで、ターゲットに響くメディア選定やメッセージの方向性が明確になり、戦略の強固な土台が築けます。
STEP2. ターゲット・ペルソナを設定する
クロスメディア戦略の成果は、ターゲットに最適なメディアを選べるかどうかにかかっています。性別・年齢・職業・居住地といった基本属性を整理し、具体的な人物像であるペルソナを設定しましょう。例えば「30代・共働き・時短家事に関心が高い女性」や「コスパ重視のガジェット好きな学生」など、実在しそうな人物像に落とし込みます。ペルソナが明確になればチーム内の認識も統一され、戦略全体の精度が大きく向上します。
STEP3. カスタマージャーニーマップを作成する
ペルソナが定まったら、その人物が製品を知り、興味を持ち、比較を経て購入に至るまでのプロセスを「カスタマージャーニーマップ」にして可視化します。「認知」フェーズではSNS広告、「興味関心」ではブログ記事、「比較検討」では公式サイトや資料請求といったように、段階ごとに最適な接点を割り当てていきながら、予測される課題を整理します。この際、マーケティングファネルの考え方を組み合わせて各フェーズに至るユーザー数を把握しておくと、施策の全体像がより明確になります。
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STEP4. KGI・KPIを設定する
クロスメディア戦略では複数のメディアを扱うため、明確な指標があると、施策の一貫性が保てます。まずは最終目標であるKGI(重要目標達成指標)を定め、その達成に向けた各プロセスの進捗を測るKPI(重要業績評価指標)を逆算して設定しましょう。例えば「月間売上1,000万円」をKGIとする場合、「週ごとに新規顧客を50人獲得」などの各メディアが担うべき具体的な数値をKPIとして割り振ります。各メディアの役割が客観的に評価できるようになり、戦略全体の整合性と投資対効果が高まります。
STEP5. 効果測定や改善など、PDCAを回し続ける
クロスメディア施策の実施後は、効果測定と改善を行い、PDCAのサイクルを継続的に回しましょう。PDCAとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の流れを繰り返し、施策の質を高めていく手法です。
複数のメディアを並行して運用する場合、全体の反響を一元的に把握できると利便性が高まります。Meltwaterのソーシャルリスニングツールを活用すれば、SNSを含めたWeb上の口コミや話題量が確認でき、施策の影響を広く捉えられます。得られた知見を次の施策に反映させることで、改善の精度はさらに高まるでしょう。
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【業界別】クロスメディアの成功事例
複数のメディアを連動させることで、実際に成果を上げた企業の事例を紹介します。
食品・飲料業界:サントリー
飲料メーカーの「サントリー」は、テレビCMとポスターを組み合わせたクロスメディア施策で成功しました。テレビCMでは仕事終わりに店に飲みに来る客を描き、働く人が実際に帰りに寄りそうな居酒屋にもポスターを掲示しました。テレビで認知した製品を、実際の飲用シーンで再び喚起することで「今、飲みたい」という購買行動へ結びつけました。複数のメディアを連動させ、認知から購入までをスムーズに設計した好事例です。
▶︎Meltwaterのお客さま事例:Suntory Beverage & Food Asia
QRコード決済サービス:PayPay
QRコード決済サービス「PayPay」は、テレビCMやYouTube広告など動画を中心としたクロスメディア戦略で認知を大きく広げました。印象的な音楽とダンスを組み合わせたテレビCMや、インフルエンサーとのコラボ動画を展開し、幅広い層へのリーチに成功しています。そして、実際にPayPayが使用される店頭では、ポスターにQRコードを掲示することでアプリのダウンロードを促進しました。
化粧品業界:ドモホルンリンクル
スキンケアブランド「ドモホルンリンクル」は、テレビCMやYouTube、公式サイトなどを組み合わせ、ターゲットを明確に絞り込むクロスメディア戦略で成果を上げました。広告内では成分や効果を詳しく説明せず、「肌の水分を保つ力は、30代頃から急激に減少すると言われています」とターゲットの関心を引くことに徹しています。そこからテレビCMでは製品購入のための電話番号を、YouTubeでは公式サイトや申し込みの詳細ページのリンクを提示し、次のアクションへと誘導しています。様々な媒体の導線を用意しているのが特徴です。
まとめ|クロスメディア戦略はデータ分析が鍵
クロスメディア戦略は、複数のメディアを有機的に組み合わせて、ユーザーの行動を強力に後押しする手法です。メディアを連携させると、単一媒体では届かなかった層へアプローチできるだけでなく、購買意欲を段階的に高めることが可能になります。
成果を出し続けるには、各メディアの反響を正確に捉える「データ分析」が欠かせません。ターゲットのライフスタイルに寄り添ったメディア選定をし、データに基づいて柔軟に改善を続けることが、クロスメディア戦略を成功させる最大のポイントです。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

