KGIという言葉を聞いたことはあっても、KPIとの違いや設定方法が曖昧なまま業務に取り組んでいる方も少なくありません。業務目標を数値で管理したいのに、何を基準にすればよいか迷っている担当者もいるでしょう。
この記事では、KGIの基本的な意味とKPIとの関係をはじめ、KSFやOKRなどの関連用語についてもわかりやすく解説します。さらに、SMARTの法則を活用したKGIの設定手順や、KPIツリーによる連動方法、実務で活かすための運用体制構築についても説明していきます。
KGIとは?
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とは、企業や組織が目指す最終的な成果を、売上高や契約件数などの数値で評価するための指標です。事業やプロジェクトのゴールを明確にし、進捗状況を客観的に把握する基準となります。
KGIを設定することで、戦略的な意思決定や改善活動の指針としても活用でき、組織全体が同じ目標に向かって行動しやすくなります。マーケティング戦略においても、数値でゴールを定義することで、目標が抽象的にならず、成果の達成度を判断しやすくなります。組織の方向性が揃い、施策間の整合性も保ちやすくなるのがKGIの大きな利点です。
KGIとKPIの違い
KGIが最終的な成果を測る指標であるのに対し、KPI(Key Performance Indicator)はその達成に向けたプロセスを評価するためのものです。KGIが「ゴール」なら、KPIは「道中での進捗確認ポイント」と捉えると理解しやすいでしょう。
例えば「月間売上1,000万円」というKGIに対して、「週ごとに新規顧客を50人獲得する」といった行動目標がKPIに該当します。KPIは日々の業務や施策が適切に進行しているかを確認するために用いられ、現場レベルでの行動指針となります。
両者を組み合わせて運用することで、目標までのプロセスが可視化され、改善すべき箇所も把握しやすくなります。その結果、組織全体が戦略的かつ効率的に目標達成へと向かうことが可能になります。
知っておきたい関連用語KSF・OKR
KGIの理解を深めるには、関連する概念であるKSFやOKRの意味も押さえておく必要があります。これらはKGIやKPIと密接に関わるもので、組織の目標達成を支える重要な考え方です。
KSF:重要成功要因
KSF(Key Success Factor:重要成功要因)は、KGIやKPIを達成するために欠かせない要素を表す概念です。KFS(Key Factor for Success)やCSF(Critical Success Factor)と呼ばれることもあります。KGIやKPIが数値で成果や進捗を測るのに対し、KSFは定性的な要素を含みます。
例えば「対前年売上150%」というKGIを設定した場合、KSFに該当するのは、そのKGIの達成に必要な「顧客視点を重視した営業活動」や「営業チームのスキル強化」です。KPIとの違いは、KPIが具体的な数値で設定されるのに対し、KSFは数値化が難しい行動方針やマインドセットを含む点にあります。
KPIが「結果を出すための行動量」だとすると、KSFは「その行動を成功に導く質的なポイント」と言えるでしょう。企業によっては、KSFの抽出を外部に委託し、他社の成功要因を分析するケースも見られます。
OKR:目標と主要な成果
OKR(Objectives and Key Results)は、挑戦的な目標と、それに対する成果指標をセットで管理する手法です。KGIやKPIが事業全体の成果や進捗を測るのに対し、OKRはチームや個人単位での目標設定に活用され、成長を促す仕組みとしても機能します。
例えば「新規顧客の獲得数を増やす」という目標に対し、「月内に50件の商談を成立させる」といった、挑戦や学習を重視した具体的な成果を設定します。
OKRは人事評価や組織運営にも関わるため、メンバーの役割や貢献度を明確にする目的でも使われます。KGIやKPIの達成には個々の行動が連動している必要があり、OKRはその橋渡しとして機能しているのです。組織の目標と個人の努力をつなぎ、全体最適を実現する仕組みといえるでしょう。
KGIを設定する目的・メリット
KGIの設定は、組織の目標達成に向けた土台づくりとなります。数値でゴールを定義することで、戦略の方向性や業務の優先順位が明確になり、意思決定や改善活動の精度も高まるのです。ここでは、KGIを設定することで得られる主なメリットを3つの観点から解説します。
施策の優先順位を明確にできる
KGIを設定することで、目標達成に向けて必要な施策を具体的に検討する流れが生まれます。数値でゴールが示されるため、業務の重要度や緊急度を判断しやすくなり、施策の優先順位を整理する基準となります。
例えば「売上130%増」というKGIを掲げた場合、既存顧客の対応だけでは不十分と判断されることもあるでしょう。その場合は、新規顧客の獲得に向けた施策が優先されます。過去に接点のあった企業やメルマガ登録者など、成果につながりやすい層へのアプローチが有効と考えられるのです。
このように、KGIを起点に逆算して行動計画を立てることで、短期間で成果を出すための戦略設計が可能になり、無駄な施策を省くことができます。
具体的な目標設定ができる
KGIを設定することで、組織全体のゴールが数値で明示され、抽象的な目標によって発生しがちな認識のズレを防ぐことができます。
例えば「多くの顧客に商品を届ける」という表現では、従業員ごとに解釈が異なり、行動計画にばらつきが生じかねません。一方で「売上を前年比140%にする」といった数値目標を設定すれば、何をもって達成とするかが明確になり、具体的な行動に落とし込みやすくなります。
このように、具体的な目標を設定することで、営業部門では新規開拓の件数、マーケティング部門ではリード獲得数など、各部署が目標に向けて役割を果たすための指針が整います。
また、KGIが明確であれば、マーケティング施策のターゲット設定にも活用でき、より効果的な戦略立案が可能になります。数値化されたKGIは、組織の動きを統一し、成果につながる行動を促す基盤となるのです。
事業の進捗を定量的に確認できる
KGIは定量的な指標であるため、進捗状況を客観的に把握することが可能です。売上や契約件数など、数値で管理できる目標を設定することで、感覚や主観に左右されない評価が実現します。
例えば「売上1,000万円」というKGIを設定した場合、現時点で750万円の成果が出ていれば、達成率は75%と定量的に評価できます。これにより、事業が順調に進んでいるか、目標にどれだけ近づいているかを客観的に把握できるようになります。進捗が可視化されることで、必要な改善策や追加施策の検討もスムーズに行うことができるでしょう。
KGIの数値を基準にすることで、事業全体の動きを冷静に分析できる環境が整い、成果への道筋がより明確になります。定量的に評価できるKGIは、事業の方向性をブレさせず、組織のパフォーマンスを継続的に高めるための有効な指標と言えるでしょう。
KGIの設定方法と具体例
KGIを設定する際は、まず企業全体の方向性やビジョンと一致しているかを確認することが大切です。例えば、営業部門で「第4四半期の売上を前年比10%アップさせる」という目標をKGIと設定します。この最終目標を達成するために、KPIとして「商談件数」「アポ件数」「提案件数」「案件受注数」などを決め、具体的な行動指標に落とし込むのが一般的な流れです。
ただし、数値目標は高すぎても低すぎても効果が薄くなるため、適切な設定が欠かせません。そこで役立つのが「SMARTの法則」です。これは目標設定の基本原則であり、KPIの妥当性や実行可能性を判断するための有効なフレームワークです。
SMARTの法則を活用する
KGIを効果的に設定するには、SMARTの法則に沿って目標を構築するのが有効です。ここでは、各要素の意味と具体例を交えて、実践的な活用方法を紹介します。
S:Specific(明確性)
目標を設定する際には、誰が見ても内容が明確で、解釈の余地がないようにするのが重要です。これがSMARTの「S(Specific)」にあたります。
例を挙げると、「新規顧客を増やす」という表現では、どの程度増やすのかが不明確です。これを「新規顧客を50社獲得する」といった形にすれば、目指すべき成果が明確になります。具体性を持たせることで、各メンバーの行動にも一貫性が生まれます。
また、目標が明確であればあるほど、進捗の確認や改善策の検討も容易になります。KGIやKPIを設定する際は、抽象的な表現を避け、誰が見ても同じ内容として理解できるような具体的な言葉を選ぶことが求められます。
M:Measureable(計量性)
SMARTの「M(Measurable)」は、目標が数値で測定できるかどうかを表す要素です。定量的な指標がなければ、進捗状況や達成度を客観的に判断することができません。
例えば「顧客満足度を向上させる」という目標では、どの程度向上させればよいのかが曖昧です。これを「アンケート満足度を80%以上にする」や「解約率を前月比で5%減らす」といった形にすれば、成果を数値で把握できるようになります。
計測可能な目標を設定することで、PDCAサイクルを回しやすくなり、改善のタイミングや効果も明確になります。KGIやKPIを策定する際は、達成状況を定期的に確認できるよう、具体的な数値と測定方法をセットで考えることが大切です。
A:Achievable(達成可能性)
目標を設定する際には、現実的に達成可能かどうかを見極めることが重要です。SMARTの「A(Achievable)」は、理想と現実のバランスを取るための視点であり、無理のない目標設計に役立ちます。
「半年で売上を45%増加させる」といった目標を設定しても、それが過去の実績や市場環境と大きく乖離している場合、現場の意欲を損なう可能性があります。達成可能性を判断するには、競合分析や市場調査を通じて業界全体のポテンシャルを把握し、自社のリソースや強み・弱みを客観的に理解することが欠かせません。
こうした情報をもとに、実現可能な範囲で目標を設定すれば、メンバーのモチベーション維持にもつながり、着実な成果を積み重ねる土台が整います。高すぎず低すぎない目標が、組織の成長を支える鍵となります。
R:Relevant(関連性)
SMARTの「R(Relevant)」は、目標が事業の目的や戦略と関連しているかどうかを表す要素です。KGIやKPIを設定する際には、組織の方向性と一致しているかを確認する必要があります。
売上拡大が最優先課題であるにもかかわらず、「社内研修の満足度を向上させる」といった目標をKGIに設定してしまうと、成果に直結しない可能性があります。KPIも同様で、設定した指標がKGIの達成に貢献するかどうかを見極めることが重要です。
「新規顧客の獲得数」や「提案件数」など、売上増加に直結する指標であれば、KGIとの関連性が高いと判断できます。目標の妥当性を検証することで、無駄のない施策設計が可能になります。
T:Time-bound(期限設定)
SMARTの「T(Time-bound)」は、目標に対して明確な期限を設けることを意味します。目標に期限が設定されていないと、行動の優先度が曖昧になり、実行力が低下する恐れがあります。
「売上を前年比15%増加させる」というKGIを設定する場合、それを3か月で達成するのか、1年かけて達成するのかによって、必要な施策やリソース配分が大きく変わります。期限を明示することで、いつまでに何を実行すべきかが明確になり、KPIの設計にも具体性が生まれます。
また、進捗管理や振り返りのタイミングも設定しやすくなり、PDCAサイクルの運用にも役立ちます。期限の設定は、目標達成に向けた行動を促すために欠かせない要素です。
KGIと連動したKPIを設定する
KGIを達成するには、目的に直結するKPIを設定することが重要です。関連性の薄い指標を追っても、最終成果にはつながりません。
例えば「売上を20%増加させる」というKGIに対して、「SNSのフォロワー数を増やす」だけをKPIにしても、売上に結びつかない可能性があります。重要なのは、フォロワー数の増加がサイト訪問数や購入率の向上など、売上に直結する行動に繋がっているかどうかです。
KGIを構成する要素を分解し、現場で実行可能なKPIに落とし込むことで、目標達成までの道筋が明確になります。KGIとKPIの連動性を意識することで、組織全体の行動が統一され、成果につながる施策が展開しやすくなります。
KPIツリー(ロジックツリー)
KGIを具体的な行動に落とし込むには、KPIツリー(ロジックツリー)を使って要素を分解する方法が効果的です。KPIツリーとは、目標を構成する要素を階層的に整理し、因果関係を明らかにするフレームワークです。
例えば「売上を15%増加させる」というKGIを設定した場合、まず売上を「顧客数」と「平均購入額」に分け、さらに「顧客数」を「新規顧客数」と「既存顧客数」に分類することが効果的です。
このように段階的に分解することで、各要素に対してどのような施策が必要かが明確になります。新規顧客の獲得には広告施策、既存顧客の維持にはフォローアップ活動など、具体的なKPIが導き出されるでしょう。
KPIツリーを活用することで、KGIとKPIの関係性が可視化され、従業員が取り組むべき課題や優先順位も整理されます。目標達成に向けた行動計画の精度を高めるための有効な手法です。
改善可能な指標を使う
KGIを設定する際は、施策によって数値が変化しやすい指標を選ぶことが重要です。従業員の行動が反映される指標であれば、取り組みの成果を測りやすく、改善の余地も見込めます。
例えば「成約件数」や「新規顧客数」は、営業やマーケティング活動によって増加が期待できるため、KGIとして適しています。一方で、商品が定額かつ購入頻度が限られている場合、「顧客単価」のような指標は改善が難しい可能性があるでしょう。その場合は、リピート率や新規顧客の獲得数など、より変化を起こしやすい指標に切り替える判断も必要です。
KGIは成果を測るための基準であると同時に、行動の方向性を示すものでもあります。改善可能な指標を選ぶことで、実行力のある目標設定が可能になるのです。
KGIを達成するためのポイント
KGIを設定するだけでは、成果にはつながりません。KGIの達成には、進捗を把握しながら柔軟に対応できる仕組みを整えることが重要です。ここでは、効果的に目標を管理し、それを達成するためのポイントを解説します。
進捗を継続的に計測できる体制を整える
KGIを着実に達成するには、進捗状況を継続的に確認できる体制づくりが欠かせません。目標が数値で定められている以上、現状を定期的に把握し、必要に応じて軌道修正できる仕組みが必要です。そのためには、報告や確認のプロセスを簡素化し、関係者がいつでも進捗を確認できるようにすることが重要です。
例えば、営業部門であれば、各自の活動状況や成果を共有しやすい環境を整えることで、チーム全体の動きがスムーズになります。また、KGIの達成率や変化の傾向を定期的に振り返ることで、改善点や強化すべき施策も見えやすくなります。
こうした仕組みを整えることで、目標に向けた行動が日常業務の中に自然と組み込まれ、組織全体の成果につながっていきます。
ツールの使用も効果的
KGIの進捗を効率よく管理するには、ツールの活用が欠かせません。人件費を抑えながら業務を自動化するには、レポート機能を備えたツールの導入が有効です。数値の取得や集計が自動化されれば、担当者の負担が軽減され、分析や改善に集中しやすくなります。
さらに、リアルタイムでデータを確認できる環境が整えば、状況の変化に応じて戦略の軌道修正を迅速に行うことも可能です。
Meltwaterのソーシャルリスニングツールは、TV・オンラインメディア・SNSなどから消費者の声をリアルタイムで収集でき、PRやSNS施策の効果測定や目標設定に活用されています。120か国以上で2万件を超える導入実績があります。
こうしたツールを活用することで、精度の高い意思決定と柔軟な対応が実現し、KGI達成に向けた効果的な体制を構築できるでしょう。
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まとめ|KGI活用で着実な事業目標達成を実現しよう
KGIは、組織の最終目標を数値で明確に示す指標です。SMARTの法則を活用することで、達成可能で測定しやすい目標を設計でき、さらにKPIツリーによって行動計画も具体化されます。
また、進捗を継続的に確認できる体制やツールを整えることで、状況に応じた柔軟な対応や改善が可能になります。KGIは単なる目標ではなく、組織の行動を導く羅針盤です。正しく設定・運用することで、戦略的な意思決定が促され、事業目標の達成を着実なものにできるでしょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム