メンズ美容の商品企画や販促を考える際、どの分野で需要が伸び、国や年代によって何が違うのか迷う担当者もいるでしょう。男性美容では、メイクや美容医療の若年層への広がりと、手軽さと悩みへの対応を両立する商品の需要が特徴です。
この記事では国内外の市場規模をはじめ、日本の購買・利用動向、米国・韓国・中国の特徴、最新の商品動向をまとめました。成長率の大きさだけに左右されず、対象顧客の生活に合った商品や伝え方を検討するための判断軸を得ることができるでしょう。
拡大傾向にある男性の美容への自己投資
市場の広がりを把握するには、男性の美容行動と商品・サービスの規模を、次の3つの視点から捉えることが大切です。
- メイクから美容医療まで、広がる男性の美容投資
- 国内メンズ美容市場の現状
- 世界のメンズグルーミング市場、2030年に1,000億ドル規模へ
自社が扱う商品やサービスの範囲を定めたうえで、対応する市場の規模と消費者の変化を確認しましょう。
メイクから美容医療まで、広がる男性の美容投資
男性の美容への自己投資は、肌の手入れにくわえてメイクや美容医療にも広がり、とくに20代で活発になっています。
社会的な受容もひとつの背景で、インテージの2024年調査では、男性が肌の手入れや化粧をすることについて、男女合わせて57.9%が好意的でした。リクルートの2025年調査でも、20代男性の過去1年間のメイク購入率と美容医療利用率は、いずれも前年を上回っています。
美容医療の利用率は同年代の女性を上回っており、若年男性を「美容に関心の薄い層」と一括りにする見方をしていては需要を捉えきれません。
国内メンズ美容市場の現状
国内の男性美容では化粧品の購買が伸びる一方、カテゴリーによって成長に差があり、サービスも含めるとニーズはさまざまです。国内市場を調べるときは、金額とともに対象と時点を確認し、自社の事業に近いデータを選びましょう。
| 調査主体・対象 | 時点・規模 | 対象を読むポイント |
|---|---|---|
| インテージ・男性化粧品 | 2024年:497億円で前年比14.8%増 | 消費者の購買データから推計 |
| 富士経済・メンズ整肌料 | 2025年:326億円で前年比4.5%増の見込み | 男性向け保湿ケア・顔拭きシート・メイク |
| リクルート・男性の美容サロン | 2025年:9,524億円 | 化粧品購入とは異なるサービスの市場 |
インテージの推計では2019年比で市場が1.8倍となり、男性向け化粧品の購買は拡大しています。
世界のメンズグルーミング市場、2030年に1,000億ドル規模へ
世界の男性向け身だしなみ用品市場は拡大が予測され、The Business Research Companyは2030年に1,013.5億ドルに達すると見込んでいます。グルーミングとは清潔さや身だしなみを整える行為で、同社の調査対象はシェービング・ヘアケア・スキンケア・ボディケア・香りの製品です。
成長の背景として、同社はセルフケア意識や高価格帯製品への需要、オンラインで商品を売買するECの浸透などをあげています。商品を選ぶときの成分情報への関心や多機能製品の広がりも、日常的なケアを充実させたい需要と関わる要素です。
地域別では2025年の最大市場が北米であるのに対し、予測期間の成長速度はアジア太平洋がもっとも速いとされています。
日本のメンズ美容市場の現状
国内で商品やサービスの対象顧客を絞り込むときは、次の3つについて、利用の広がりと年代差をあわせて見ると有効です。
- 男性のスキンケアが一般化
- 若年男性に広がるメイク需要
- 20代男性の美容医療利用率は20%超
自社が提供するケアの目的に近い分野を選び、購入・利用経験と継続需要の両面から顧客像を具体化してください。
男性のスキンケアが一般化
男性のスキンケアは洗顔にとどまらず、保湿や紫外線対策にも広がっており、20代を中心にスキンケアアイテムの購入率が高くなっています。リクルートの「美容センサス2025年下期」によると、男性全体の1年以内購入率は化粧水32.1%、日焼け止め26.2%でした。
20代男性の購入率を品目別に見ると、洗顔から保湿、美容液による追加のケアへと需要が広がっています。
調査は人口20万人以上の都市に住む15~69歳が対象で、各数値は自分用に1個以上買った人の割合を示しています。
若年男性に広がるメイク需要
若年男性のメイクは、肌色や気になる部分の見え方を整えるベースメイクを中心に、商品企画の機会が広がっています。肌荒れやひげのそり跡をカバーする使い方も注目されており、目的は色を足して華やかに見せることだけではありません。
2025年の20代男性の購入品目を見ると、肌の見え方を整えるアイテムはいずれも4人に1人以上が購入しています。
メイク全体の購入率も2021年の18.2%から2025年の34.8%へ高まり、直近の2024年と比べて8.9ポイント上昇しました。
20代男性の美容医療利用率は20%超
美容医療の利用は20代男性で伸びており、2025年の過去1年間の利用率は22.8%と、前年の16.4%から上昇しました。リクルートの調査では同年代女性の21.7%をはじめて上回りましたが、男性全体では8.8%であり、年代差の大きい分野です。
ここでいう美容医療には、「病院・クリニックの医療脱毛」「美容内科・美容皮膚科」「美容外科」「審美歯科・矯正歯科」が含まれます。継続需要も見られ、美容医療の経験者に限ると、20代男性の77.1%がリピート契約を経験していました。
海外の男性美容市場とトレンド
海外の需要を国内施策の参考にするときは、美容への関心だけでなく、次の国別の利用場面や購入接点にも目を向けることが重要です。
自社の顧客に近い行動を選び、商品の使い方や売り場、情報発信に取り入れることができる要素を検討しましょう。
米国:男性の美容意識と支出が拡大
米国の若年・中堅男性では、外見への関心にくわえ、日々の身だしなみに時間やお金をかける意識が高まっています。
Talker Researchが2026年に公表した調査では、対象男性の68%が5年前より外見を気にすると回答しました。Just For Menの委託で2025年12月に実施した調査で、対象は25歳以上のZ世代800人とミレニアル世代1,200人です。
グルーミングに3~5年前より時間をかける人は56%、お金をかける人は51%に上っています。美容習慣への影響源には家族38%・SNS32%・友人31%があがり、オンラインの情報と身近な人からの影響の両方が見られました。
韓国:男性メイクが日常化
韓国の男性美容で注目したいのは、スキンケアにとどまらず、肌や唇の印象を自然に整えるメイクも日常的に取り入れられていることです。
ほんのり色づくリップバームも、自然な血色感を添えるアイテムとして韓国では定着しつつあります。目立つ化粧よりも、清潔感や身だしなみを整えた印象につながる自然な仕上がりが好まれるようです。
海外生活者調査「Global Viewer」(2024年)では、韓国の18~49歳男性のBBクリーム使用率は約30%、リップグロス使用率は約20%でした。
なお、肌から唇までメイクの需要がある一方、男性全員の習慣とはいえず、品目別の使用率も毎日の実施頻度を示すものではありません。商品企画・販促では、調査対象の年代や品目別の使用率を踏まえ、肌や唇の印象を自然に整えることができる点にも着目するとよいでしょう。
中国:男性向け美容カテゴリーが多様化
中国の動画プラットフォームDouyinでは、男性向け美容のカテゴリーとして、メイクにくわえてボディケアやヘアケアも伸び、美容の対象が多様化しています。WPICが公表した調査結果では、Douyin上の男性向けカテゴリーで次の成長率が報告されました。
| 男性向けカテゴリー | 2025年の前年比成長率 |
|---|---|
| メイク | 176%増 |
| ボディケア | 363%増 |
| ヘアケア・スタイリング | 259%増 |
同氏は男性の発信者がケアの手順を見せる短い動画にも着目し、使い慣れない商品の利用を身近なものにする役割を指摘しています。新しいカテゴリーを提案するときは、商品を一覧に並べるだけでなく、生活のどの場面でどう使うかを見せる方法が参考になります。
男性美容の最新トレンド
新商品の企画では機能を増やすだけでなく、次の2つの変化を踏まえ、顧客が負担なく継続できる使い方を考えると有効です。
- 時短・高機能化が進む男性向けケア
- メンズ美容は顔・髪から全身へ
日々の身支度で減らしたい手間と新たにケアしたい部位を顧客に聞き、商品やサービスの提案に反映しましょう。
時短・高機能化が進む男性向けケア
男性向けケアでは、手順を減らす手軽さと肌悩みに応じた機能を組み合わせ、日常に取り入れやすくする提案が進んでいます。
富士経済の報告では、男性向け保湿ケアで需要が強いのは、ワンステップで使えるオールインワンです。複数の役割をひとつにまとめる商品なら、何種類も使い分ける負担を抑えながら、朝や入浴後の習慣に組み込む提案ができます。
オールインワン・美容液・モイスチャークリームを含む「モイスチャー他」は、2023年に約30%増、2024年にも約15%増となりました。同カテゴリーでは年齢に応じたケアなどの機能を訴求する商品も展開されており、簡便さだけでなく対応する悩みの明確さも重要です。
メンズ美容は顔・髪から全身へ
メンズ美容は顔と髪の手入れを軸に体の保湿や眉や香りなどへと広がり、生活場面に応じた商品企画の余地が生まれています。
日本でもリクルートの2025年の調査では、20代男性の30.1%が過去1年間にボディローション・クリーム・オイルを購入しています。眉の手入れは男性向けアイブロウ専門店などのサービスにもなっており、商品販売だけでなく専門家に任せる需要も見られます。
Cosmetics Businessが2026年の男性向けグルーミングのトレンドとしてあげているのが、ボディケアや眉のケア、固形コロンや白髪対策を訴求するヘアセラムなどです。固形の香り製品や年齢による髪の変化に着目した商品は、部位だけでなく製品の形状や利用目的も企画の切り口になる例です。
まとめ
メンズ美容の成長を事業に結び付けるには、市場全体の拡大だけでなく、年代ごとの利用目的と伸びるカテゴリーを捉えることが重要です。国内では若年男性の購買・利用の広がりが目立つ一方、商品分野や一人あたりの支出によって動きが異なります。
海外の事例を取り入れるときも、普段使いか特別な日の利用か、どの売り場や情報接点で選ばれているかを確かめる必要があります。自社顧客が手間に感じるケアと試したい商品を調べ、その結果を使い方の説明や体験の機会に反映し、生活に定着する提案につなげましょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwater Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

