少子化が進む日本社会において、ペットの飼育頭数が15歳未満の子どもの数を上回る逆転現象が起きています。かつて愛玩動物と呼ばれたペットは家族の一員へと役割を変えました。それに伴い、関連する市場規模も拡大を続けています。
今回の記事では、犬猫の推計飼育頭数が子どもの数を上回る背景・世界的な市場動向、今後期待される関連ビジネスについてまとめました。本記事を読めば、ペット関連産業の最新トレンドや社会構造の変化を深く理解できるはずです。
ペットと人が共生する未来に向けて、新たなライフスタイルやビジネスの可能性を探りましょう。
少子化の日本で起きている「静かな逆転」
日本の少子化が想定を超えるスピードで進むなか、ペットの飼育頭数が子どもの数を上回る現象が定着しつつあります。
- 子どもの数を超えたペットの数
- 12年で3倍に広がった差
- 犬は2年連続40万頭台、猫はコロナ特需の反動で4年連続減
ペットと子どもの数の逆転現象を正しく把握するのは、社会構造の大きな変化を理解するうえで重要となります。
子どもの数を超えたペットの数
一般社団法人ペットフード協会によると、2025年時点で日本の犬と猫の推計飼育頭数は合計約1,567万頭に達しました。一方、総務省によると同年4月時点の15歳未満の子どもの数は1,366万人となっており、ペットの飼育頭数はすでに子どもの数を大きく上回っています。
この傾向は、近年の年間データにも表れています。2020年にはペット新規飼育頭数が87.6万頭となり、同年の出生数84万人をはじめて上回りました。同様の傾向はその後も続き、2024年にはペットの新規飼育頭数80.3万頭に対し、出生数は68.6万人まで減少しています。両者の差は約2割にまで広がっており、ペットは家庭内で子どもに相当する存在感を強めています。ペットと子どもの数の逆転は単なる統計上の偶然ではなく、社会の構造変化を映し出す鏡です。
12年で3倍に広がった差
2013年時点では犬と猫の合計飼育頭数は1,712万頭であり、15歳未満の子どもの数は1,649万人でした。当時の差は約63万でしたが、2025年には犬猫合計が約1,567万頭、子どもの数が1,366万人となり、差は約201万まで拡大しています。
静かな逆転の最大の要因は少子化の想定外のスピードであり、2016年以降は出生数の減少スピードが3%を超えました。2022年以降、出生数は大きく減少しており、少子化の進行が従来の見通しより速いことが推測できます。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、出生数が68万人を割る時期は2040年の見通しでしたが、実際には2025年に割り込んでいます。
犬は2年連続40万頭台、猫はコロナ特需の反動で4年連続減
犬の新規飼育頭数はコロナ禍に拡大したあと2023年にはいったん減少しましたが、直近の2024年は44.4万頭に増加しています。2025年も45.1万頭と推計されており、2年連続で40万頭台を維持する見通しです。
コロナ禍で高まった飼育意欲が一巡したあとも、在宅ワークの定着などを背景に犬を迎え入れる流れは根強く続いています。
一方、猫の新規飼育頭数は犬とは異なり、2020年に46万頭、2021年には48.9万頭とコロナ禍で13年間のピークを記録しました。しかしその反動は大きく、2022年は43.2万頭、2023年は36.9万頭、2024年は35.9万頭、2025年は33.3万頭と、4年連続で縮小しています。2025年の新規飼育頭数は、比較起点である2013年の34.3万頭をも下回る水準です。
世界で広がるペット市場
ペットを家族の一員として扱う価値観は世界中に浸透しており、関連市場は着実に拡大しています。
国内外の市場動向を比較し、今後のペット産業の成長性を探るのがビジネスをするうえでも大切な視点です。
世界のペット市場は2030年に5,000億ドルへ成長
世界のペット市場は2023年で約3,200億ドルに達し、2030年までに5,000億ドルへと成長すると予測されています。
市場拡大の背景には、各国での飼育頭数の増加があります。たとえば英国では、2020年~2022年にかけて犬が約900万頭から44%増加し、猫も750万頭から60%増加しました。新型コロナの流行で在宅時間が増加し、癒やしなどを求めてペットを迎える人が増えたのも、市場拡大を後押ししたと考えられます。
ペットフードやケア用品だけでなく、医療・衛生用品・見守りサービスなど、関連する消費の幅も広がっています。
欧米で広がる「Pet Parents(ペットの親)」という価値観
欧米のZ世代やミレニアル世代を中心に、「ペットを子ども」「飼い主をペットの親」と表現する価値観が広がっています。2022年の米国世論調査では、Z世代の70%が子どもを持つよりもペットを飼うほうを好むと回答しており、その傾向は顕著です。
意識の変化は消費行動に直結し、飼い主は人間と同等の品質を求めて高級フードや先進的な医療サービスに費用をかけています。こうした支出拡大の背景には、ペットを飼う世帯そのものの増加もあります。米国ペット製品協会の推計でも、1頭以上のペットを飼う世帯は2023年の8,200万世帯から増加傾向にあるとのことです。
2025年には9,400万世帯に増加する見込みであり、ペットの家族化は着実に進行していると見られます。
日本でも広がるペット関連市場
日本でもペット関連市場は拡大を続けており、EC市場は2030年に4,388億円規模にまで成長すると予測されています。共働き世帯の増加や高齢ペットの健康管理といったニーズを背景に、IT技術を活用したペットテック市場も2030年には106億円規模まで拡大すると予測されています。
具体的には、スマホと連動して遠隔から給餌できる自動給餌機などが、飼い主の間で普及しはじめています。排せつ物の重量から健康状態を見守るスマートトイレなども、飼い主の不安を解消する人気の高い製品です。
今後期待できる注目のペット関連市場は?
ペットの家族化が進むなかで、より高度で多様なニーズに応える新しいビジネスが次々と誕生しています。
各分野の現状と将来性を把握し、新たなペット関連のビジネスチャンスや投資のヒントを見つけましょう。
ペット保険
ペット保険は、今後の成長が期待される分野のひとつです。海外では加入率が30%~40%ほどと比較的高い水準にある一方、日本の加入率は各種データから約20%程度です。
日本でもペットの長寿化や医療の高度化が進み、治療費への備えとして保険の必要性は高まっています。家族の一員としてペットの健康を守りたいという意識が広がれば、ペット保険の加入を検討する飼い主はさらに増えていくでしょう。
ペットツーリズム
愛犬と旅行をしたい飼い主は94.5%にのぼり、旅費が高くても同行したい人は81.6%にも達しています。強いニーズを背景に、ペットツーリズムの市場規模は2020年の約400億円から2023年には約650億円に拡大しました。ペット同伴客の宿泊単価は1人あたり平均2万円以上と、一般の旅行客よりも高い傾向にあります。
宿泊施設にとっては高単価を見込める有望な客層ですが、ペット同伴を受け入れている国内施設は全体の6%程度です。需要に対して供給が明らかに不足している状態は、新規参入を検討する事業者にとって有望なビジネスチャンスです。
ペットテック
ペットテックとは、IoTやAI技術を活用してペットの見守りや健康管理を自動化する製品やサービス全般を指す新しい分野です。
共働き世帯の増加やペットの高齢化などの社会的背景から、自動給餌機や行動を記録するスマートトイレなどの需要が高まっています。国内市場は2023年度で約50億円規模とまだ小さいものの、今後の成長余地は大きく、期待が寄せられています。
月額制で高機能デバイスをレンタルできるサービスも広がっており、導入のハードルは下がりつつある点も特徴のひとつです。
まとめ
日本では少子化が急速に進む一方で、ペットの飼育頭数は子どもの数を上回りました。ペットは、家族の一員としての存在感を確実に増しています。かつてペットは動物として飼われる存在でしたが、いまやもうひとりの家族としての存在へと変化しました。
ペットの家族化に伴い関連市場も拡大を続けており、経済に与える影響は無視できない規模にまで拡大しています。
ペットと子どもの数の逆転現象は日本の社会構造や消費のあり方そのものを映し出す鏡であり、今後も注目すべきテーマでしょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwater Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

