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マルチチャネルとは?オムニチャネルとの違いや成功事例を解説

マルチチャネルとは?オムニチャネルとの違いや成功事例を解説


宮崎桃

Nov 19, 2025

消費者の購買行動が多様化する中、注目されているのがマルチチャネルを用いたマーケティング戦略です。顧客と複数の接点を持つことで販売機会を増やし、満足度を高められます。

本記事では、マルチチャネルのメリット・デメリットや導入する際のポイント、成功事例を詳しく解説します。

マルチチャネルとは?

マルチチャネルとは、チャネル(商品やサービスが顧客に届くまでの経路)を複数設けるマーケティング手法のことです。実店舗やオンラインショップ、電話、カタログといった異なる顧客との接点(タッチポイント)を同時に展開します。

マルチチャネルは、商品販売や採用活動、問い合わせの受付などでの活用が可能です。多様なチャネルを設けると、顧客は自分の都合に合った方法を選ぶことができ、サービスを利用しやすくなります。たとえば商品購入で、時間がなくて店舗に行けない場合はオンラインで注文し、実物を見て決めたい場合は店舗で購入することができます。

各チャネルは基本的に別々に管理されていることが、マルチチャネルの特徴といえます。在庫や顧客データはチャネル間で連携されず、店舗とオンラインショップでポイントシステムや会員登録が一元化されていないことが一例です。

クロスチャネル、オムニチャネルとの違い

クロスチャネル、オムニチャネルとの違い

マルチチャネル、クロスチャネル、オムニチャネルは、どれも複数のチャネルを活用するマーケティング戦略であることが共通しています。主な違いは、各チャネルがどの程度つながっているかという点です。

チャネル間での在庫データや顧客データの連携チャネル間でのサービスの連携
マルチチャネル×
クロスチャネル
(一部のみの場合もあり)
オムニチャネル

クロスチャネルは、データを一元化することで店舗での購入をオンラインでの購入履歴に反映させたり、オンラインショップでの在庫を実店舗に回して在庫切れを減らしたりすることができます。

オムニチャネルでは、データが一元化されているだけでなく、オンラインで注文した商品を店舗で受け取ったり、店舗で貯めたポイントがオンラインでも使えたりするなど、チャネル間をまたいだ一貫したサービスが特徴です。

マルチチャネルとクロスチャネルは、オムニチャネルを作り上げるまでの一過程ともいえます。

マルチチャネルが注目される背景

マルチチャネルが注目される背景として、インターネットとスマートフォンの普及が挙げられます。顧客はオフラインだけでなく、オンラインでも商品やサービスにアクセスできるようになりました。

店舗で商品を見てからオンラインショップで価格を比較したり、SNSで口コミをチェックしてから購入したりと、購入までの経路は人それぞれです。求人の応募方法も書類の郵送だけでなく、メールでの送付やWebサイトからの応募フォーマット、会社説明会での手渡しなど、複数の方法があれば応募数の増加につながります。単一のチャネルだけでは、こうした多様な顧客ニーズに応えきれません。

このような状況から、企業は販売機会を逃さないよう、複数の接点を設けるマーケティング戦略が求められるようになっています。

マルチチャネルで使われる主なチャネル

マルチチャネルで活用されるチャネルは、オンラインとオフラインに分けられます。企業の業種やターゲット層に応じて、適切な組み合わせを選ぶことが重要です。

オンラインオフライン
販売ECサイト、ECモール、ライブコマース実店舗、電話注文、カタログ販売
顧客対応メルマガ、SNS、問い合わせフォーム、チャット店頭スタッフ、コールセンター、FAX
採用オウンドメディア、SNS、メール求人誌、採用説明会
宣伝Web広告、SNS広告テレビCM、チラシ、DM、店頭ポスター

オンラインチャネルは24時間対応が可能で、遠方の顧客にもリーチできます。オフラインチャネルは商品を直接手に取れたり、スタッフと対面で相談できたりするのが強みです。

マルチチャネルのメリット

マルチチャネルのメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • 販売機会を増やせる
  • 顧客満足度の向上が見込める
  • チャネルごとに顧客データ収集・分析ができる

それぞれ詳しく解説します。

販売機会を増やせる

実店舗だけで営業していた場合、店舗周辺に住んでいる人や勤務している人などに顧客層が限られますが、複数のチャネルを持つことで、顧客層が広がり、販売機会を増やせます。

ECサイトを開設すれば、世界中からアクセス可能になります。さらにSNSアカウントで日常的に情報発信することで顧客に身近な存在として認識され、ECサイトや実店舗への流入につながることも期待できます。


顧客満足度の向上が見込める

マルチチャネルを導入すると、顧客満足度の向上が期待できます。顧客が自分の都合や好みに合わせてアクセス方法を選べるからです。

たとえば、仕事で忙しい人は深夜にECサイトで注文でき、実物を確認したい人やオンラインサービスに馴染みのない層は店舗で購入できます。また、サービスの問い合わせも、よくある質問コーナーをWebサイトに設けたり自動応答のチャットボットを活用したりすることで、電話がつながるまでの時間を短縮できます。

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チャネルごとの顧客の特徴が明確になる

マルチチャネルでは各チャネルが独立しているため、顧客データの収集・分析から、各チャネルの強みと弱みがはっきりわかることもメリットです。

収集・分析するデータは、具体的には購入履歴やアクセスの時間帯、顧客の年齢層などです。各チャネルでどんな顧客が何を求めているかが見えてくることによって、不要なチャネルを減らしたり、ニーズの高いチャネルに注力したりといった戦略が打てるでしょう。

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マルチチャネルのデメリット・注意点

マルチチャネルのデメリット・注意点

マルチチャネルのデメリット・注意点は以下のとおりです。

  • チャネル間での連携がない
  • 在庫管理が難しくなる
  • 作業負荷・運用コストがかかる

それぞれ詳しく解説します。

チャネル間での連携がない

各チャネルが独立し、顧客情報や在庫データが別々に管理されるため、チャネルをまたいだ情報共有に手間がかかります。たとえば、実店舗で会員登録した顧客情報がECサイトと共有されず、顧客は同じ情報を再度入力する必要があります。ポイントもチャネルごとの管理となり、利便性が下がるでしょう。


在庫管理が難しくなる

在庫情報もチャネルごとの管理となるため、全体の在庫状況を把握しにくいのがデメリットです。在庫があるチャネルから不足しているチャネルへ商品を移すことができず、販売機会を逃すリスクが高まります。また、顧客から「他の店舗やサイトに在庫はあるか」と問い合わせがあっても、即座に答えられず、顧客満足度を下げかねません。


作業負荷・運用コストがかかる

マルチチャネルでは、複数のチャネルを運用するため作業負荷とコストがかかります。チャネルを新たに立ち上げるたびに、導入費用だけでなく、人件費やシステム維持費、広告宣伝費などの運用費も継続的に必要です。スタッフの教育にも時間とコストがかかるでしょう。

費用対効果を事前にシミュレーションすることが重要です。商品やターゲット層に合ったチャネルを選び、売上増加が見込めるものから優先的に導入しましょう。段階的にチャネルを増やすことで、リスクを抑えながら運用体制を整えられます。



マルチチャネルを成功させるポイント3つ

マルチチャネルを成功させるポイント3つ

マルチチャネルを成功させるポイントは以下の3つです。

  • サービス・商品にあったチャネルを選択する
  • 各チャネルで一貫性を保つ
  • 顧客データの分析と継続的な改善を行う

それぞれ詳しく解説します。

サービス・商品にあったチャネルを選択する

自社の商品・サービスの特性に合ったチャネルを選ぶことが重要です。たとえば、高級ブランド品や家具など高価なものやサイズが重要なものは、実物を確認できるよう店舗での販売が向いています。一方、書籍や日用品など直接見て確認する必要のない商品は、ECサイトでの販売が適しているでしょう。使い方がわかりにくいものは、動画での発信が効果的です。

顧客の行動パターンを分析することも大切です。ターゲット層がどのチャネルを普段利用しているかを把握し、そこに注力することで費用対効果を高められます。自社のリソースも考慮しながら、優先順位をつけてチャネルを選定しましょう。

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各チャネルで一貫性を保つ

各チャネルで一貫したメッセージやブランドイメージを伝えることが重要です。チャネルごとに雰囲気や対応が大きく異なると、顧客が混乱し、ブランドへの信頼が低下する可能性があります。

たとえば、店舗では高級感を提供しているのに、SNSではカジュアルすぎる投稿をしていると、ブランドイメージにばらつきが生じるでしょう。ビジュアルデザインやトーン、提供する情報の質なども統一する必要があります。


顧客データの分析と継続的な改善を行う

マルチチャネルでは各チャネルからさまざまなデータを収集できます。購買履歴やアクセスの時間帯、離脱率などのデータを分析すれば、チャネルごとの顧客の行動パターンが見えてきます。どのチャネルでどんな商品が売れているか、どの時間帯にアクセスが多いかといった情報をもとにPDCAサイクルを回していきましょう。

Meltwaterのソーシャルリスニングツールは、X(Twitter)やFacebook、InstagramといったSNSのほか、ブログや口コミサイト、YouTubeのコメントなどからも幅広く顧客の声を収集することが可能です。日次・週次・月次のレポートを自動作成できる自動レポーティング機能も併用でき、業務の手間が省けます。

▶︎Meltwaterのソーシャルリスニングツール

マルチチャネル戦略の成功事例

マルチチャネル戦略の成功事例を3つ紹介します。

Netflix:SNSなどを活用し採用のミスマッチを防止

動画配信サービスのNetflixは、採用活動でマルチチャネル戦略を展開しています。InstagramやYouTubeでは社員紹介やオフィスの様子、LinkedInでは最新ニュースやイベントの裏側、経営者からのコメントなどを発信しています。また、オウンドメディアで求人情報を常時掲載し、独自の応募フォームを活用しています。

各プラットフォームの特性を活かして多角的な情報発信を行うことで、応募者とのミスマッチを防いでいます。

東急ハンズ:SNSで顧客の声をタイムリーに把握

東急ハンズは、Meltwaterのソーシャルリスニングツールを活用し、ニュースやSNSから顧客の声をリアルタイムで収集しています。ソーシャルリスニングとは、SNS上の会話を収集・分析して自社のビジネスに活かす手法です。顧客のポジティブな反応もネガティブな声も広範囲に把握し、サービスの改善につなげています。

また、展開するイベントごとに、反応があるコミュニティやインフルエンサーの影響なども分析できるようになりました。販売だけでなく、イベントにおいてもマーケティングのヒントが得られるのがメリットです。

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東日本旅客鉄道株式会社:サポートセンターのマルチチャネル化

JR東日本は会員数の増加に対応するため、モバイルSuicaサポートセンターのマルチチャネル化を推進しました。従来は電話のみでしたが、「よくあるご質問」の検索フォームの設置のほか、メールやチャットでも問い合わせを受け付けるようになりました。

音声を介さないカスタマーサポート(ノンボイスチャネル)の利用率は初めのうちは10%台でしたが、マルチチャネルの体制を整えた結果、80%に達しました。問い合わせが複数のチャネルに分散したことで、電話のつながりやすさも改善され、顧客満足度向上に寄与した事例です。

まとめ|マルチチャネル戦略で顧客満足度を高めよう

マルチチャネルとは、複数の顧客接点を作り出すマーケティング手法です。顧客が自分の都合に合わせて商品やサービスへのアクセス方法を選べるため、満足度の向上につなげられます。

マルチチャネル戦略を実行する際は、自社の商品・サービスの特性やターゲット層に合わせたチャネルを選び、一貫したブランドの世界観を提供することが重要です。

Meltwaterはソーシャルリスニングツールを提供しています。SNSを含む各チャネルのデータ収集や分析にお困りの際は、ぜひ導入をご検討ください。

⇒Meltwaterへお問い合わせ

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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