コンテンツへスキップ
logo
リレーションシップマーケティングとは?_6

リレーションシップマーケティングとは?意味や企業事例を解説


宮崎桃

Nov 13, 2025

売上を伸ばすには、顧客にどのようなアプローチが有効か悩んでいる方も多いのではないでしょうか。新規顧客の獲得も重要ですが、近年では既存顧客との長期的な関係維持が企業の成長を左右する重要な要素となっています。

そこで注目されているのが「リレーションシップマーケティング」です。顧客ロイヤルティを向上させて、LTV(顧客生涯価値)のアップを図ることで、新規顧客数を大幅に増やさなくても売上を伸ばすことができます。

この記事では、リレーションシップマーケティングの基本的な考え方や導入メリット、具体的な手法を解説します。実際の企業事例も交えながら、顧客との関係性を深める方法を紹介していきます。

リレーションシップマーケティングとは

リレーションシップマーケティングとは

リレーションシップマーケティングとは、顧客との継続的な関係性を重視するマーケティング手法です。新規顧客の獲得に注力するアプローチとは異なり、既存顧客との信頼構築により、長期的な取引や再購入など顧客の生涯価値(LTV)を高めることを目的としています。

顧客と長期的な関係を維持するには、企業やブランドに対する「ロイヤルティ(信頼や愛着)」を育てることが大切です。顧客一人ひとりのニーズや行動をデータから把握し、それに応じた情報提供やサービス対応を行ったり、SNSやコミュニティなどで顧客とのコミュニケーションを図ったりする方法があります。

リレーションシップマーケティングは、企業の持続的な成長を支える戦略として注目されています。


リレーションシップマーケティングの重要性

リレーションシップマーケティングの重要性

市場環境の変化により、リレーションシップマーケティングの重要性が増しています。特に注目すべき変化は、顧客がSNSを利用するようになったことや、サブスクリプション型サービスの普及です。

世界においても日本においても、顧客は検索エンジンやSNS、カスタマーレビューなどからブランドの情報を得て購入しています。中でも顧客と直接つながりを持てるのがSNSです。日本のマーケティング担当者がSNSを活用する理由には、「ブランド認知の向上」と「顧客とつながるため」がトップに挙げられています。顧客とのやり取りを通じてブランド力を上げる方法は一般的になりつつあり、競争力を強化するためにもリレーションシップマーケティングは重要であるといえます。

また、動画や音楽配信のサブスクリプションは年々利用者が増えています。継続利用を促すためには顧客と双方向の関係を築き、信頼と満足を積み重ねることが不可欠です。

参考:Meltwater 2025年グローバル・デジタルレポートMeltwater 2025年 ソーシャルメディアの最新状況


あわせて知っておきたいパレートの法則

あわせて知っておきたいパレートの法則

パレートの法則とは、20%の要素が80%の成果を生み出すという考え方です。この法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートによって提唱されたもので、企業活動に当てはめると、20%の優良顧客によって80%の売上が生まれるということになります。リレーションシップマーケティングでは、この2割の顧客との関係を深めることで、効率的な収益確保を目指します。

ただし、残りの8割の顧客も軽視するべきではありません。今は購買頻度が低くても、適切な対応を続けることで将来的に優良顧客へと成長する可能性があります。企業は、2割の顧客に注力しつつ、8割の顧客との接点も維持することで、長期的な成果につなげることが求められます。


リレーションシップマーケティングのメリット

リレーションシップマーケティングには、企業の収益性や顧客との関係性を高めるさまざまな利点があります。ここでは、代表的なメリットを3つの観点から紹介します。      

顧客生涯価値(LTV)の最大化

リレーションシップマーケティングの導入によって得られる代表的なメリットのひとつが、顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)の向上です。LTVとは、顧客が生涯で企業にもたらす利益の総額を指し、長期的な視点で収益性を測る指標として活用されています。

企業が顧客との関係性を深めることで、リピート購入や関連商品の追加購入が促され、結果として客単価が上がります。 LTVが高まれば、広告や販促に頼らずとも安定した売上が見込めます。


顧客のロイヤルティ向上による競合優位性の確保

リレーションシップマーケティングを実践することで、顧客満足度の維持と向上が可能になります。満足度が高い状態を継続できれば、顧客は企業や商品に対して信頼や愛着を持つようになり、いわゆる「ロイヤルカスタマー」へと育っていきます。

こうした顧客は、他社への乗り換えをしなくなるため、競合優位性を保つことができます。価格競争がなくなることで、より大きな収益が期待できるのがメリットです。特にサブスクリプション型のサービスでは安定した収益確保が見込めるでしょう。

口コミによる宣伝効果

リレーションシップマーケティングによって優良顧客が増えると、口コミによる宣伝効果も高まります。SNSやレビューサイトなどでの自発的な感想の発信は、広告とは異なり、実際の利用者による評価として高い信頼性を持ちます。

特に新規顧客は、購入前に他者の意見を参考にすることが多く、ポジティブな口コミは購買意欲を後押しする材料になるでしょう。ロイヤルカスタマーが増えることで、自然な形で情報拡散が進み、企業は広告費をかけずに認知度を高めることも可能になります。

▶︎あわせて読みたい:口コミマーケティングとは?メリットや代表的な手法・成功事例を解説


リレーションシップマーケティングの具体的な手法

リレーションシップマーケティングを効果的に実践するには、顧客との接点を増やし、信頼関係を深めることが欠かせません。ここでは、顧客の声を取り入れながら関係強化を図る具体的な施策を紹介します。


顧客との接点を強化するための手法

リレーションシップマーケティングを成功させるには、顧客との継続的な接点を意識的に増やすことが重要です。従来のように販売の場や企業からの一方的な広告だけではなく、購入前後のコミュニケーションを充実させたり、顧客が主体的に情報発信したりすることで、ブランドへの愛着を育てられます。

SNSマーケティング

X(Twitter)やInstagramなどを活用したSNSマーケティングは、顧客とのエンゲージメントを高める有効な手段となります。情報発信だけでなく、コメントやメッセージを通じた双方向のやり取りが可能です。

例えばSNS上で寄せられた質問に個別対応することで、企業への信頼感を高める効果があります。さらに、インフルエンサーとの連携により、ブランド認知の拡大とファン層の定着を同時に図ることも可能です。ただし、SNSは情報の拡散力が高いため、対応を誤ると炎上や誤解を招くリスクもあります。継続的な運用には、迅速な対応力と慎重な情報管理が欠かせません。

コミュニティマーケティング

コミュニティマーケティングは、既存顧客同士のつながりを活かしてブランド価値を高める手法です。企業が主導してファン同士が交流できる場を設けることで、商品やサービスへの理解と愛着が深まります。専用サイトやイベントなど、オンライン・オフライン問わず展開できるため、BtoB・BtoCを問わず幅広く活用されています。

コミュニティ内で得られる顧客インサイトは、商品開発やサービス改善にも役立ち、マーケティングの効果向上にもつながります。一方で、運営には継続的なリソースが必要であり、参加者の活性化が課題となることもあります。

▶︎あわせて読みたい:コミュニティマーケティングとは?注目される背景、メリットや成功事例を解説


データ活用形の手法

リレーションシップマーケティングをより効果的に展開するには、顧客データの活用が欠かせません。顧客の属性や行動履歴をもとに、最適なタイミングで適切な情報を届けることで、関係性の質を高めることができます。ここでは、BtoB向けのアプローチからSNS分析まで、代表的な3つの手法を紹介します。

アカウントベースドマーケティング(ABM)

アカウントベースドマーケティング(ABM)は、BtoB領域で活用される手法で、特定の企業(アカウント)に対して個別にマーケティングを行うアプローチです。優良企業との関係を深めたい場合に有効な手法です。例えば、ホワイトペーパーなどを特定の企業用に作成したり、データを活用し複数の企業向けに広告配信したりする方法があります。

効率的な営業活動と高い成約率が期待できる一方で、企業ごとに戦略を練る必要があるため、リソースや時間がかかるという課題もあります。

▶︎あわせて読みたい:ABMとは?導入のメリットや手順、役立つツールを解説

データドリブンマーケティング

データドリブンマーケティングは、顧客の行動や施策の効果を数値で把握し、その分析結果に基づいて施策を立案・実行する手法です。経験や勘に頼るのではなく、客観的なデータをもとに判断することで、施策の再現性や改善精度が高まります。例えば、過去のキャンペーン結果を分析することで、成果につながった要素を把握し、次回の施策に反映できます。

この手法のメリットは、成果と要因の関係が明確になり、再現性のあるノウハウを蓄積しやすい点です。根拠に基づいた意思決定が可能になるのも特徴です。一方で、データ収集や分析体制が整っていないと活用が難しく、導入初期には時間とコストがかかる場合もあります。

▶︎あわせて読みたい:データドリブンマーケティングとは?実行の手順や成功に導くポイントを解説

ソーシャルリスニング

ソーシャルリスニングは、SNS上の投稿やコメントを収集・分析し、顧客の声や評価をリアルタイムで把握するマーケティング手法です。Meltwaterの調査によると、日本国内の活用目的は「ブランド認知の把握」が約37%と最も多く、次いで「研究開発のためのリサーチ」が約35%、「市場のトレンド予測」が約34%でした。

SNSの反応を継続的にモニタリングすることで、炎上リスクの早期検知や顧客ニーズの把握が可能となり、企業の評判管理や商品改善にもつながります。ただし、膨大な情報の中から有益な声を抽出するには専門的な分析力と、対応体制の整備が不可欠です。

参考:Meltwater 2025年 ソーシャルメディアの最新状況

▶︎あわせて読みたい:ソーシャルリスニングとは?重要性や分析手法、事例を解説

リレーションシップマーケティングの注意点

リレーションシップマーケティングの注意点

リレーションシップマーケティングを導入する際は、いくつかの注意点があります。最大の課題は、短期的な成果が見えにくい点です。

顧客との関係性を深めるには時間がかかり、LTVの向上も月単位・年単位で評価する必要があります。施策を始めたからといってすぐに売上が伸びるわけではなく、かけた時間やコストに対して期待通りの効果が得られない可能性もあります。

また、顧客との関係を維持するには、商品やサービスの品質を継続的に改善し続ける姿勢が求められます。顧客の期待値が高まる中で、対応が追いつかないと信頼を損なうリスクもあるでしょう。リレーションシップマーケティングは、長期的な視点で取り組むべき戦略であり、社内体制やリソースの確保も含めて慎重に進めることが重要です。


リレーションシップマーケティングの企業事例

リレーションシップマーケティングの実践例を見ることで、顧客との長期的な関係構築がどのように利益につながるのか理解できます。以下では、具体的な企業事例を通じて、戦略の有効性と運用方法を紹介します。


スターバックス®:リワードプログラムで独自のサービスを展開

スターバックスのリワードプログラムは、顧客の購入行動を評価し、長期的な関係を育む成功事例として知られています。購入金額によってStarが付与され、一定のStarを貯めることでドリンク・フードのeTicketやオリジナルグッズなどに交換できる仕組みです。

ポイント制は他の店でもよく見られる仕組みですが、スターバックスはStarという独自の基準を設けていることが特徴です。スターバックスでしか使えないのはデメリットのようにも見えますが、ブランド力を高めるのに効果的であるといえます。また、リワードプログラムは会員制のため、コーヒーのお代わりの割引や先行販売など、会員ならではの特典がついてくるのもファンの増加につながっているでしょう。

井筒まい泉:顧客の声により商品を改良

レストラン「とんかつまい泉」を運営する井筒まい泉は、リスクやレピュテーションのマネジメントのために、ソーシャルリスニングツールを導入しました。SNSや口コミによる顧客の声を、リアルタイムで把握できるようになりました。

顧客からの好評をすぐに得られることで、業務の励みになっています。また、SNS上にあった「ヒレかつサンドの紙パックのフタが開けにくい」との声を拾い上げ、シールをはがしやすく改良し、利便性を向上させることができました。顧客自らのSNS投稿により、レストランの情報が自然に拡散され、ブランド力アップの効果も期待できます。

▶︎Meltwaterのお客さま事例:井筒まい泉株式会社


ザ・リッツ・カールトン:顧客データを活用したおもてなし体験

高級ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンのザ・リッツ・カールトン・クラブは、顧客情報を活用し、パーソナライズされたサービスを提供しています。宿泊者一人ひとりを名前で呼び、個別の招待状や過去の行動をもとにしたおすすめの観光スポットを用意し、記憶に残る体験を提供することで顧客との関係を築いています。

また、X(Twitter)やInstagramなどでは、英語での情報発信も行っており、世界中のファンとコミュニケーションを図っています。

▶︎あわせて読みたい:パーソナライズとは?意味・メリット・具体的な活用方法を解説


まとめ|リレーションシップマーケティングで顧客と良好な関係を築く

リレーションシップマーケティングは、顧客との信頼関係を築き、LTVやロイヤルティを高める長期的な戦略です。SNSやコミュニティを通じた接点の強化や、顧客データの活用による個別対応が重要な要素となります。

Meltwaterは顧客の声を可視化するエクスプロア<Explore>というツールを提供しています。顧客のリアルな声に応え、リレーションシップマーケティングの効果をさらに高めることが可能です。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

LinkedIn