SNSを運用していても、成果が思うように出ず「何を基準に効果を判断すればいいのか」と悩む方は少なくありません。特にKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)の設定に迷う担当者は多いでしょう。
これらを正しく理解しないまま運用を続けると、投稿内容や施策の方向性がぶれてしまう可能性があります。
この記事では、この記事では、SNSマーケティングにおけるKPI・KGIの意味や関係性、設定の手順、目的別の具体例まで詳しく解説します。
- SNSにおけるKPIとは?
- SNSでKPIを設定する重要性
- KPI設定に使える指標8つ
- SNSのKPI設定3STEP
- 【目的別】SNSのKPI設定の具体例
- SNSプラットフォーム別のKPIの効果測定方法
- KPIの効果測定はツールを使うと効率的
- まとめ|適切なKPI設定と効果測定がSNS運用のカギ
SNSにおけるKPIとは?
SNS運用において成果を可視化するには、適切な指標の設定が欠かせません。KPIは数値で表示できるため、成果を測る指標として有用といえます。SNSマーケティングでは、KPIとKGIの役割を理解し、目的に応じて使い分けることが重要です。
KPIとは
KPI(重要業績評価指標)とは、企業の中間目標のことです。SNSを運用する際に設定することで、目標達成に向けた施策の有効性と改善点を数値で把握することが可能です。
SNS運用においては以下のようなKPIがあります。
- フォロワー数
- インプレッション数
- エンゲージメント率
- クリック率
- 動画再生回数
あわせて知っておきたいKGI
KGI(重要目標達成指標)とは、企業の最終的な目標のことです。短期目標であるKPIは、長期目標のKGIを達成するために設定されるといえます。
SNS運用においては以下のようなKGIがあります。
- 自社サイトへの流入数を前年比150%にする
- 売上を20%伸ばす
- 認知度を特定の年代層で拡大する
SNSでKPIを設定する重要性
SNSマーケティングでは、KPIという目標数値を設定することで、戦略の精度が高まり、実行に移しやすくなります。最終的な成果を示すKGIだけでは、日々の進捗を実感しづらいのが難点です。そこでKPIを併用することで、途中経過の成果が数値で明確になり、施策の改善を早いうちから実行することができます。
例えば、売上向上をKGIに据える場合、KPIに「クリック率」や「コンバージョン率」などを設定することで、成果の動向を把握できます。また、売上に直結する指標を見出し、そこに施策を注力することも可能です。
短期的な目標を数値化することでチームのモチベーションを保つとともに、施策のブレを防止できることもメリットです。KGIとKPIを連動させることが、SNSマーケティングを成功に導く鍵となるでしょう。
KPI設定に使える指標8つ
目的に応じて適切なKPIを設定することで、SNSマーケティング施策の効果を向上できます。ここではKPIとして活用できる代表的な8つの指標について、それぞれの特徴と活用ポイントを解説します。
フォロワー数
フォロワー数とは、アカウントをフォローしているアカウント数のことです。フォロワー数が増えることは、ブランドの認知度向上につながるといえます。
単に数を追うのではなく、フォロワーの属性を確認することで、ターゲット層に届いているかどうかを意識することが重要です。ターゲットと異なる層が多い場合は、投稿のトーンやテーマを見直す必要があるでしょう。
インプレッション数
インプレッション数とは投稿や広告がユーザーの画面に表示された回数のことで、「閲覧数」と呼ばれることもあります。1人のユーザーに3回表示されたら、インプレッション数は3です。ユーザーとの接触の頻度を測るのに用いられ、投稿の最適なタイミングや頻度を見直すヒントになります。特に新商品やキャンペーンの告知など、広く情報を届けたい場面では重要な指標です。
ただし、表示されていても必ずしも関心を持たれているとは限りません。インプレッション数が伸びていても反応が乏しい場合は、投稿内容に課題がある可能性もあります。
▶︎あわせて読みたい:インプレッションとは?広告評価で活用する指標、計算方法を解説
リーチ数
リーチ数とは、SNS上で投稿や広告を見たユーザーの人数のことです。インプレッションが「表示された回数」であるのに対し、リーチは「何人に届いたか」を測ります。1人のユーザーに複数回表示されてもリーチは1とカウントされるため、重複を除いた接触数がわかります。
リーチ数が多ければ、それだけ多くのユーザーが投稿に触れていることになり、認知拡大の成果を判断する材料になります。特定のターゲット層に届いているかを確認することで、コンテンツの方向性や配信タイミングの見直しにも効果的です。
SNS運用では、リーチとインプレッションを組み合わせて分析すれば、より正確な接触状況を把握できます。
▶︎あわせて読みたい:リーチとインプレッションの違いとは?意味・計測方法・増やすコツを解説
メンションされた数
メンションとは、ユーザーが投稿に@をつけて特定のアカウント名を言及する機能を指します。メンションされた数はユーザーの関心を測る一定の目安となります。
メンションされると通知が届くため、メンションしたユーザーにコメントを送るなどしてユーザーとの関係を深めることができます。また、その投稿を見たユーザーにブランドへの関心を持ってもらうきっかけにもなり、広告に頼らない認知拡大の手段としても有効です。ポジティブなメンションが多ければブランドイメージの向上につながる一方で、ネガティブな言及が目立つ場合はサービスや対応に課題がある可能性もあるため、内容の確認と対応が必要です。
VOC(Voice of Customer)
VOC(Voice of Customer)とは顧客の本音のことです。SNS上でのユーザーの投稿内容やコメントを収集・分析することで、商品やサービスに対する期待や不満などを読み取ることができます。
数値では表せない定性的な情報ではありますが、内容によってポジティブなものとネガティブなものに分ければ、「ポジティブなVOCの割合を増やす」といったKPIが設定できます。
▶︎あわせて読みたい:VOC分析とは?メリットや効果を最大化する3つのポイント
エンゲージメント率
エンゲージメント率とは、ユーザーの反応率のことです。反応には、いいねやコメント、シェアなどの行動が含まれており、投稿に対する関心の深さを測ることができます。
ユーザーとのつながりを強化し、ブランドへの愛着を育てる場合に重要な指標になります。投稿ごとのエンゲージメント率を比較することで、反応の良い表現やテーマを見極め、次の施策やコンテンツ改善に活かせるでしょう。
コンバージョン率(CVR)
コンバージョン率(CVR)とは、企業が設定した目的の行動を取ったユーザーの割合のことです。目的の行動とは、商品購入、資料請求、会員登録など、企業が成果とみなすアクションのことで、ユーザーがSNSを離れた後の行動を指します。CTRがクリック率であるのに対し、CVRはクリック後に購入などの目的の行動まで進んだ割合を示すKPIです。
CVRが高いということは、投稿の内容や導線がうまく設計され、ユーザーを効果的に行動へ導けているということです。一方、表示回数が多くてもCVRが低い場合は、訴求内容やリンク先ページに改善の余地があります。
クリックスルー率(CTR)
クリックスルー率(CTR)とは、広告やリンクが表示された回数のうち、実際に広告やリンクがクリックされた割合のことで、クリック率とも呼ばれます。どれだけのユーザーがクリックしたかがわかり、興味の度合いを測る目安となります。
CTRが高い場合、投稿の内容やビジュアル、タイトルがユーザーの関心を引いていることを意味します。逆に、CTRが低ければ訴求ポイントや商品の説明が十分に伝わっていない可能性があります。
SNSのKPI設定3STEP
SNSのKPIを効果的に設計するには、目的の明確化から指標の選定、運用まで段階的なステップが必要です。ここでは、KPI設定の基本となる3つのステップを順を追って解説します。
STEP1 SNS運用の目的を明確にする
まずSNS運用の目的をはっきりさせます。目的を設定することで、どの指標を使えばよいか適切な判断ができるようになり、成果も測りやすくなります。代表的な例として、「自社の認知を拡大したい」、「自社サイトへの誘導を増やしたい」、「購買行動を促進したい」などが挙げられます。
STEP2 KGIを設定する
SNS運用の目的に合わせ、何を達成したいのかをKGIとして具体的な数値に落とし込むことが重要です。例えば、ブランド認知度の向上を目指す場合は「半年以内に10代〜20代の認知率を15%向上させる」、売上向上を目的とするなら「SNS経由の月間売上を100万円以上にする」などがKGIになります。事業全体の目標として、単体のSNSではなく、活用しているすべてのSNSの総合的な目標を立てることがポイントです。
STEP3 KPIを設定する
KGIを設定したら、次に中間的な数値目標としてKPIを設定します。例えば、KGIを「SNS経由での売上20%増」とした場合、KPIとして「フォロワー数を3ヶ月で5,000人増やす」「月間投稿のエンゲージメント率を5%向上させる」といった設定が考えられます。
KPIを決める際に役立つのが「KPIツリー」です。これはKGIを起点に、そこへ到達するまでのプロセスを細分化して可視化する手法で、いわば目標達成までのロードマップです。「SNS経由での売上20%増」という幹から「フォロワー数」「エンゲージメント率」が枝分かれしていくイメージです。
【目的別】SNSのKPI設定の具体例
SNSを運用する目的によって、適切なKPIは異なります。ここでは代表的な目的別に、どのようなKPIを設定すべきかを具体例とともに紹介します。
| SNSの運用目的 | KPIとして活用される指標の例 |
|---|---|
| 認知拡大 | ・インプレッション数 ・リーチ数 ・フォロワー数 ・メンションされた数 |
| 自社サイトへの誘導 | ・クリック率 ・エンゲージメント率 |
| 購買促進 | ・クリック率 ・コンバージョン率 |
| ロイヤル顧客の育成 | ・フォロワー数 ・エンゲージメント率 ・VOC ・メンションされた数 |
認知拡大の場合
ブランドやサービスの認知拡大は、マーケティングファネルという顧客の購買までの心理段階を示す流れのうち、初期段階の「認知(awareness)」に向けた施策です。まだ商品やブランドを知らない層に情報を届けます。
KPIの例は以下のとおりです。
- インプレッション数を前月比20%増
- リーチ数を3ヶ月で15%増
- フォロワー数を前月比10%増
- ブランド検索数を6ヶ月で30%増
自社サイトへの誘導の場合
SNSから自社サイトへユーザーを誘導する施策は、マーケティングファネルにおける認知の次の段階である 「興味(Interest)」や「比較・検討(Desire)」にいるユーザーが対象です。SNSでユーザーの関心をひき、より詳細な商品説明が掲載されている自社サイトへ誘導することで、購買意欲をさらに高めることができます。
効果的なKPIとして、以下のようなものがあります。
- クリック率を2.5%以上増
- エンゲージメント率を半年で10%増
- 1つのページのみに留まってページを離れる直帰率を40%以下に削減
購買促進の場合
SNSを活用して購買行動を促すことは、マーケティングファネルの最終段階である「行動(Action)」段階にいる顧客に対して効果的です。すでに商品やサービスに興味を持ち、購入を検討している層に対して、最後の一押しをする役割があります。
以下のようなKPIが考えられます。
- コンバージョン率を前月比5%以上増
- クリック率を3ヶ月で10%以上増
- SNSのショップからの購入件数をキャンペーン後に10%増
ロイヤル顧客の育成の場合
ロイヤル顧客とは、企業に対して信頼と愛着心を持っている顧客のことです。ロイヤル顧客の育成を目的としたSNS運用は、継続・再購入を検討しているフェーズにいるユーザーに向けた施策です。すでに購入経験がある顧客との関係性を深め、継続的な利用やブランド支持を促すことが狙いです。
ロイヤル顧客育成のKPIには、以下のようなものがあります。
- エンゲージメント率を前年比10%増
- ポジティブなVOCを上四半期より10%増
- ユーザーの投稿数やメンションの数を5%増
- 月間リピート購入率を20%以上増
SNSプラットフォーム別のKPIの効果測定方法
SNSの種類によってユーザー層や機能が異なり、KPIの設定や効果測定の方法も変わります。ここでは代表的なプラットフォームごとに、KPIの測定ポイントを紹介します。
| SNS | 活用できるKPI例 |
|---|---|
| X(Twitter) | ・リポスト数 ・いいね数 ・インプレッション数 ・エンゲージメント数 ・エンゲージメント率 ・動画のリテンション(保持率) ・動画の再生率 ・動画の再生完了率 |
| ・リーチ数 ・インプレッション数 ・「いいね!」数 ・コメント数 ・保存数 ・シェア数 ・フォロワー数 | |
| TikTok | ・フォロワー数の推移 ・プロフィールの閲覧数 ・いいね数 ・コメント数 ・シェア数 ・お気に入り数 ・エンゲージメント率 ・動画の再生回数 ・動画の平均視聴時間 |
| ・リーチ数 ・インプレッション数 ・フォロワー数 ・エンゲージメント数 (コメント、クリック、シェアなどの数) ・動画の3秒再生数 ・動画の1分再生数 |
X (Twitter)
X(Twitter)は、短文による情報発信がメインのSNSです。総務省の令和6年度の調査によると、10代~30代の利用が多い結果となっています。他のSNSで発信された情報もXで引用されることがあり、拡散力が高いのが特徴です。
効果測定には「Xアナリティクス」が利用でき、リポスト数、いいね数、インプレッション数、エンゲージメント数、動画の再生率などのデータは無料で取得可能です。ただし、クリック率やフォロー率などは、クリック数やインプレッション数から手動で計算する必要があります。
参考:総務省 令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
NTTコムオンライン ソーシャルリスニングでわかる消費行動の変化の兆し ~「プレステージ化粧品」編~
▶︎あわせて読みたい:X(Twitter)分析の重要性やメリット・指標や分析方法を解説
Instagramは、写真や動画のような視覚的な投稿に強みを持つSNSです。シェア機能により拡散性も高く、特にライフスタイルや商品紹介との相性が良いとされています。
効果測定には「Instagramインサイト」が使われており、ビジネスアカウントかクリエイターアカウントで無料で利用できます。KPIとして設定できる指標には、リーチ数、インプレッション数、エンゲージメント数などがあります。フォロワーが100人以上いる場合は、フォロワーの地域や年齢層、アクティブな時間帯などの詳細なデータも閲覧できます。利用できるインサイトは最大2年分です。
参考:Instagram Instagramインサイトについて
▶︎あわせて読みたい:【2025年最新】Instagramインサイトの見方・分析方法を解説!
Tiktok
TikTokは、ショート動画を中心としたSNSプラットフォームで、エンタメ性の高いコンテンツが拡散されやすいのが特徴です。総務省の令和6年度の調査によると、10代と20代に人気があります。
効果測定の際は、無料で利用できるSINISという分析ツールが便利です。TikTok BuisinessのAPIに対応しています。エンゲージメント率やフォロワー数の推移、再生回数、平均視聴時間、ユーザーの属性など確認できるデータは幅広いです。すべての分析データを見るには、ビジネスアカウントに切り替える必要があります。
参考:SINIS for TikTok - TikTokアカウントの成長を可視化する分析ツール
Facebookは、30代〜50代によく利用されています。ビジネス目的で利用されることも多く、BtoBや地域密着型の企業に適したSNSです。また、利用車は実名の登録が基本のため、発信される情報に信頼性があります。
「Facebookインサイト」では、フォロワー数の推移やエンゲージメント数、インプレッション数、リーチ数、投稿のクリック数、動画の再生回数などを確認できます。取得できるデータはInstagramと同様に過去2年分に限られています。
参考:Facebook Facebookのページインサイトを確認する
Facebookページのインサイト | Metaビジネスヘルプセンター
KPIの効果測定はツールを使うと効率的
SNSのKPIを効率的に管理するには、専用の分析ツールを活用するのが効果的です。各SNSには無料の分析機能がありますが、X(Twitter)やInstagram、Facebookなどを横断して一括でデータの取得・分析はできません。
そこで役立つのが、統合型SNS分析ツールです。Meltwaterが提供するツールでは、複数のSNSやブログ、ニュースサイトなどから投稿データをリアルタイムで収集し、エンゲージメントや拡散状況を一元的に可視化できます。
さらに、炎上リスクの早期発見や競合分析、ブランド評価の変化など、SNS上の動きを幅広く把握できることも強みです。手作業では難しい広範なデータ管理も、ツールを活用すれば短時間で効率的に行えます。
まとめ|適切なKPI設定と効果測定がSNS運用のカギ
SNS運用を成功させるには、明確な目的に基づいたKPI設定と、定期的な効果測定が欠かせません。KGIとの整合性を保ちながら指標を設けることで、運用の方向性が明確になります。さらに、SNSプラットフォームごとの特性に合わせた分析を行うことで、施策の改善点を具体的に把握できるようになります。
SNSの成果を正確に評価するには、複数のSNSにまたがった分析ツールを活用するのも有効です。Meltwaterではソーシャルメディア分析ツールを提供しています。効率的なデータ管理と可視化によって、より戦略的なSNS運用を実現しましょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム
