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パーソナライズとは?メリットや活用方法、注意点を解説

パーソナライズとは?意味・メリット・具体的な活用方法を解説


山﨑伊代

Jul 7, 2025

あらゆる製品・サービスの機能性がコモディティ化した現代において、他社との競争に勝ち抜くには、顧客の多様なニーズに個別で応えていかなければなりません。そこで、パーソナライズという手法が活用できます。

この記事ではパーソナライズの概要やカスタマイズなどとの違いを踏まえつつ、パーソナライズのメリットや注意点、成功事例も併せてご紹介します。

パーソナライズとは?

パーソナライズとは?

パーソナライズ(Personalize)とは、顧客の属性や購買履歴などのデータを分析し、各個人に最適化された製品やサービス、情報を提供するマーケティング手法です。一例としては、インターネット上での検索履歴と関連性の高い広告やおすすめ動画を表示したり、購買履歴からレコメンド表示したり、位置情報からメルマガの配信内容を変えたりすることが挙げられます。

パーソナライズは顧客の興味関心に沿ったアプローチを実現できるため、購買や問い合わせなどのコンバージョンを得やすいという特長があります。

カスタマイズとの違い

カスタマイズとは、自分の好みに合わせて既存のものを作り変えることです。自社に合わせてWebサイトのデザインを変えたり、ユーザーがニュースアプリで関心のあるカテゴリーを選択したりする行為が当てはまります。

一方、パーソナライズは企業側が消費者の行動データや属性を分析し、個々の顧客に合わせた最適な情報提供などを行う取り組みのことを指します。カスタマイズは自分自身や所属グループのニーズに合わせ、パーソナライズは相手のニーズに合わせるのが相違点です。

レコメンドとの違い

レコメンドとは、顧客の購買データや閲覧履歴などに基づき、おすすめの製品やサービスを紹介することです。動画配信サービスの「あなたへのおすすめ」や、オンラインショップの「関連商品」といった表示が代表例です。レコメンドはパーソナライズの一種として位置づけられます。

パーソナライズが重要になった背景

現代のマーケティングにおいて、パーソナライズは企業の競争力を左右する重要な要素となっています。その背景を見ていきましょう。

顧客ニーズの多様化

現代の顧客ニーズが多様化していることが、パーソナライズが必要とされる最大の理由です。従来のマーケティングは、テレビCMのように不特定多数に対して画一的にアプローチする手法が一般的でした。しかし、スマートフォンの普及により、消費者一人ひとりが個別に情報を収集できるようになった結果、万人向けの施策は効力を失いつつあります。

マッキンゼーの2021年の調査によると、71%の消費者がパーソナライズされたサービスを期待しています。NetflixやSpotify、Amazonなどのパーソナライズされた「おすすめ」機能は、いまや消費者にとって当たり前の体験といえるでしょう。

現代はモノやサービスが溢れる中で、消費者は「多くの人におすすめ」ではなく「私にとって必要な情報」を求めています。多様化・複雑化する顧客の好みや行動に最適な情報をベストなタイミングで届けるため、個々のインサイトを深く理解したパーソナライズが不可欠といえるでしょう。

▶︎あわせて読みたい:消費者インサイトとは?事例や調査方法、活用のポイントを解説

AIなどの技術の進歩

AIや分析ツールの進歩により、膨大なデータから個々の顧客ニーズを特定することが可能になりました。例えば、Meltwaterの分析ツールを使うと、パーソナライズのための調査にかかる時間を25%ほど削減できます。また、各部署でのデータ共有も容易になり、組織全体でパーソナライズに取り組める環境が整っています。

▶︎Meltwaterのソーシャルリスニング(クチコミ分析)ツール

BtoCとBtoBで求められるパーソナライズの違い

パーソナライズはBtoCとBtoBで活用されます。それぞれどういった活用がされるのかを確認しましょう。

BtoCにおけるパーソナライズ

BtoCとはBusiness to Consumerの略で、事業者が消費者に対してサービスを提供するビジネス形態のことです。BtoCでは、消費者個人の属性や傾向などを基にパーソナライズを実施し、購買や継続利用を促すことを目指します。

例えばスニーカーについて検索エンジンで調べていた消費者に対して、スニーカーのディスプレイ広告を表示したり、購入履歴などを基におすすめのコンテンツを表示させたりすることが挙げられます。

BtoBにおけるパーソナライズ

BtoBとはBusiness to Businessの略で、事業者が他の事業者に対してサービスを提供するビジネス形態のことです。ビジネスに直結する商品が扱われるため、BtoCよりも顧客の購買検討期間が長いことが大きな違いです。購買検討フェーズに合わせた適切な情報提供に、パーソナライズが重宝されます。

例えば自社サイトへの訪問状況によっておすすめのコンテンツを変えたり、ホワイトペーパーをダウンロードした顧客に対して営業担当者からフォローアップを入れたりすることが例です。

パーソナライズのメリット

パーソナライズのメリット

パーソナライズに取り組むことで以下のようなメリットを得られます。

顧客ニーズに的確に応えられる

パーソナライズは、顧客の属性や購買履歴、行動データを分析します。これにより、個々の顧客が真に求める商品やサービスを正確に把握し提供できます。特に重要なのは、顧客自身が気づいていない潜在的なニーズも発見できるかどうかです。新たな価値の提供は競合他社との差別化にもなり、売上拡大を実現できます。

信頼を獲得し長期的な関係性を構築できる

パーソナライズで顧客が求める情報を適切なタイミングで提供することで、顧客からの信頼を得ることができます。企業に対するロイヤルティやエンゲージメントが高まり、自社製品・サービスの継続利用に繋がれば、LTV(Life Time Value/顧客生涯価値:顧客が生涯にわたって自社にもたらす利益・価値)の最大化も期待できるでしょう。競合他社への流出も防げます。

潜在顧客の開拓ができる

パーソナライズにより、これまでアプローチできなかった潜在顧客を新規顧客として獲得できます。多くの見込み客は自分が抱えている課題やニーズを明確には認識していません。パーソナライズの一環として見込み客の行動データや属性情報を分析し、真のニーズに近づくことで、見込み客に「こんな課題があったのか」「この商品が必要だった」という気づきを与えられます。

マーケティングの効率化を図れる

パーソナライズは顧客データに基づいたアプローチを行うため、マーケティング活動全体の効率化や精度向上が期待できます。例えばアクセサリーに興味のない消費者にジュエリーの広告を表示したり、購買意欲が十分に高まっていない見込み顧客に商談を設定してしまったりすることを防ぐことができます。購買意欲の高い顧客に対してリソースを集中的に充てられるのが最大のメリットです。


パーソナライズの活用方法

ここでパーソナライズの具体的な活用方法をご紹介します。

1. Web広告 

パーソナライズの代表的な活用方法の一つが、Web広告です。特に、ユーザーの興味と関連性のあるWeb広告のことを、パーソナライズド広告と言います。

GoogleやAmazonなどのWeb広告サービスでは、ユーザーの検索・閲覧履歴といったオンライン上に存在するデータに基づいて、パーソナライズド広告を配信できます。一般的な広告よりもクリック率やROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果)などを高めやすいのが特長です。

実際、マーケティング支援事業を行う株式会社リチカが2022年に行った調査によると、「CMや広告を見たい」と回答した割合はわずか13%であるのに対し、「興味関心にあったクリエイティブなら必要」と答えた割合は39.4%に及びます。このことからも、ユーザーの興味に合わせたパーソナライズド広告の有効性を理解できるでしょう。

参考:【広告・CM意識調査】を実施「広告を見たい」はわずか13%、一方「興味関心にあったクリエイティブなら必要」は39.4% | 株式会社リチカのプレスリリース

2. SNS

SNSではユーザーの閲覧履歴やフォローしているユーザーの傾向などを基に、おすすめの投稿が表示されます。また、X(Twitter)やFacebook、Instagramなどはパーソナライズド広告の配信機能もあり、自社製品に興味を持ちそうな潜在顧客にアプローチできます。パーソナライズド広告により自社アカウントのフォロワーが獲得できれば、広告配信を続けなくても継続的な繋がりができるのがメリットです。

さらに、SNS上では自社投稿に対するコメントに反応したり、自社製品を紹介したユーザーの投稿にいいねをしたりするなど、ユーザーとのやり取りも可能です。自社ブランドに親しみを持ってもらうきっかけにもなります。

▶︎あわせて読みたい:【SNS広告の基本】特徴や費用・成功事例までわかりやすく解説

3. ECサイト

ネットショッピングが楽しめるECサイトでは、顧客の登録情報はもちろん、商品の検索・閲覧履歴や過去の購買データなど、顧客データが豊富です。そのため、レコメンド表示やクーポン配布などパーソナライズされたサービス提供が可能です。レコメンド表示で商品を絞り込むことで購買を促し、ECサイトによる売上向上が期待できます。

4. 動画

動画分野では、視聴者一人ひとりに最適化されたコンテンツ配信が広く活用されています。NetflixやYouTubeなどでは、ユーザーの視聴履歴や属性データを分析し、興味のありそうなコンテンツをおすすめ表示することで継続利用を促し、満足度向上を図っています。


5. メールマガジン

メールマガジンは、ツールを使ってメール内容や配信タイミングを最適化することができます。例えば、メール配信システムやマーケティングオートメーション(MA)などに蓄積された、問い合わせ履歴や顧客の業種、過去に開封したメール内容などを参照にします。メールのタイトルなども工夫し、開封率アップに繋げていきましょう。

6. LP

LPとはLanding Pageのことで、広告やURLをクリックした際に表示されるWebページを指します。クリック元の広告や流入キーワード、アクセスした地域といった条件に応じて、複数のLPを用意しておくことで、顧客に合わせて訴求点を強調できます。問い合わせや購買に繋げやすくなるでしょう。

パーソナライズに取り組む際の注意点3つ

続いてパーソナライズに取り組む際の注意点についてご紹介します。

過度なパーソナライズで信頼を損なう恐れがある

過度にパーソナライズに取り組むと、何度も繰り返し同じコンテンツが表示され、その商品・サービスに対して「しつこい」といった、ネガティブな印象を持つ顧客も一定数出てくることが予測されます。またCookieを利用したパーソナライズ施策は、「Web上での行動を監視されている」といった印象を顧客に与えかねません。パーソナライズの実施頻度や範囲に気をつけ、顧客に不快な思いをさせないようにしましょう。

ニーズに合っていないことがある

パーソナライズしたからといって、必ずしも顧客ニーズに対応できるとは限りません。実際に、76%の消費者が的外れなパーソナライゼーションに不快感を抱いているというマッキンゼーの調査もあります。経験や勘に頼るのではなく、データに基づいたニーズに沿うことが大切です。また、ECサイトでのおすすめ表示を顧客側で削除できるようにするなど、顧客側でも情報の調節ができるようにするとよいでしょう。

多様なコンテンツが必要になる

パーソナライズは顧客それぞれに最適化したアプローチを行うため、手間とコストがかかります。顧客データの分析はもちろん、提供するコンテンツの設計や制作も工数が必要です。マーケティングに割けるリソースが不足している企業では、パーソナライズの施策展開が難しい可能性があるでしょう。

パーソナライズ施策に役立つツール

パーソナライズを効果的に実施するには、顧客データの収集と分析が不可欠です。Meltwaterでは、消費者の行動や嗜好を深く理解し、個別最適化されたアプローチを支援する専門ツールを提供しています。

消費者インテリジェンスは、AIを活用して世界中のSNSデータから消費者の潜在ニーズを見つけ出すツールです。行動・態度・影響力レベルなどに基づいて消費者をセグメントすることもできます。

ソーシャルリスニング(クチコミ分析)では、SNS上や口コミサイトでの自社に関するコメントを収集・分析するツールです。自社の商品やサービスを利用した顧客の本音が把握できます。15カ月分の履歴データにより長期的なトレンド分析も可能です。

▶︎Meltwaterへお問い合わせ

パーソナライズの成功事例

最後にパーソナライズの成功事例として、以下の3社の事例をご紹介します。

Amazon

大手ECサイトを運営するAmazonは、パーソナライズの仕組みを取り入れたレコメンド機能により、顧客の購買意欲の醸成を図っています。購買履歴や検索・閲覧履歴、購入頻度などの顧客情報に加え、他の顧客の購買傾向なども活用されています。

また、「アカウントサービス」の「ショッピングのカスタマイズ設定」で、顧客自らが服のサイズや肌質などを入力することで、よりニーズに合った商品に出合える仕組みを作っていることも特徴的です。閲覧履歴から興味のない商品を削除することもでき、顧客のカスタマイズと事業者のパーソナライズが融合されています。

ダノン

世界的食品メーカーのダノンでは、他社よりも一足先にトレンドとなる食品を販売しています。Meltwaterの消費者インテリジェンスを活用することで、1,500種類もの食材候補と現在人気の食材のわずかな兆候から、今後人気が高まる可能性のある食材を統計学的に特定できるようになりました。

マーケティング、インサイト、研究開発チーム全体でツールを活用し、分析結果を共有することで、一貫した顧客体験をパーソナライズすることに成功しています。

▶︎Meltwaterのお客さま事例をもっと見る

株式会社エムアイカード

株式会社エムアイカードは、自社のクレジットカード会員向けのサイト運用において、パーソナライズを活用しています。会員の性別や年齢、利用月額などによって細かくセグメントを分け、それぞれに最適化されたコンテンツを提供しています。

また、「どのようなサービス名が印象に残るか」などの課題に対して、2つの案を比較検証するABテストを実施することで、より顧客目線のサイトに近づけました。こうした取り組みにより、各コンテンツやキャンペーンからのコンバージョン率を改善するなど、着実に成果を挙げています。

参考:クリエイティブ訴求の表現を変えただけでCVR30%改善を記録!〜エムアイカードのABテスト事例〜 - DLPO株式会社

まとめ|ニーズに応えるパーソナライズ施策を

顧客ニーズの多様化が進み、一人ひとりのニーズに合わせた情報提供やアプローチを実現できるパーソナライズは、マーケティング活動にとって不可欠な取り組みといえます。

注意点は、過度なパーソナライズにならないようにすることです。顧客の視点に立って工夫することで、ネガティブな反応を避けられるでしょう。

Meltwaterの消費者インテリジェンスやソーシャルリスニングツールを活用すると、パーソナライズ施策の精度向上につながります。ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


▶︎あわせて読みたい:大規模なパーソナライゼーション戦略: KKD(経験・勘・度胸)に頼らない消費者調査

この記事の監修者:

山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。

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