GW明けは長期休暇で崩れた生活リズムと仕事再開の負荷が重なり、疲れやだるさを感じる人が増えやすい時期です。疲労を翌日に残さないため、睡眠を最適化してパフォーマンスを高めるSleepmaxxing(スリープマキシング)が世界的に注目されています。
今回の記事では、Sleepmaxxingの意味や海外での流行背景、日本における眠活市場の広がりについて詳しくまとめました。本記事を読めば、睡眠を単なる休息ではなく、翌日の集中力や気分を高める自己投資として捉える新しい視点を得ることができます。
自身の生活習慣や環境を見直し、無理なく継続できる睡眠改善のヒントを見つけて日々のパフォーマンス向上に役立てましょう。
Sleepmaxxingとは?睡眠を極める人が世界で増加
Sleepmaxxingとは、睡眠時間や睡眠の質を最大化するために、生活習慣や寝室環境などを調整する動きを指す言葉です。
TikTokなどのSNSで広がった言葉で、若年層の自己最適化文化やウェルネス消費と結びつきながら浸透しています。従来の睡眠改善は、眠りにくい人へのケアとして語られる場面が中心でした。
Sleepmaxxingでは、睡眠が不調対策だけでなく、翌日の仕事や学習などの成果を高める投資として扱われています。たとえば、Amerisleepの調査によるとアメリカ人の45%がSleepmaxxingに取り組み、Z世代では48%が積極的に睡眠を最適化しているのです。アメリカ人の8%は過去1年で睡眠関連商品やツールに500ドル以上を使い、睡眠が支出対象として存在感を増しています。
イギリスでも、ウェアラブル睡眠トラッカーを使う成人が2,000万人超と報じられ、睡眠の見える化が日常に浸透しています。睡眠時間や心拍などを確認する習慣は、健康管理の一部でありながら、新しい消費接点にもなっているのです。
なぜいま、海外では睡眠に注目が集まっているのか?
海外で睡眠への注目が集まる背景には、健康ブームだけでは説明できない、疲れたくない社会の広がりがあると考えられます。
仕事やSNSでのコミュニケーションが絶えず続くなかで、人々は疲労を翌日に残さない設計を求めているのです。専門家やトレンド分析では、Sleepmaxxingをパフォーマンス保険として捉える見方も出てきています。
一方、睡眠トラッカーの普及は、行動改善だけでなく不安の増幅という逆側の反応も生み出している点が注目されます。イギリスでは、睡眠トラッカー利用者の一部が目標達成に強くこだわり、低スコアで不安を感じる傾向があると報道されました。
睡眠への過度なこだわりやデータへの執着が眠りにくい状態を招き、オルソソムニアにつながる場合があると指摘されています。市場を考えるうえでは数値化への期待だけでなく、プレッシャーを和らげる設計や安心して継続できる体験価値が重要です。
睡眠不足大国「日本」
世界でSleepmaxxingが広がる一方、日本は睡眠不足大国とされ、消費トレンド以前に生活基盤の課題があるといえます。
ブレインスリープの2025年調査では、日本の有職者の平均睡眠時間は6時間50分で、前年と同水準にとどまりました。OECDの比較でも、日本は睡眠時間が短い国としてたびたび言及され、働き方や生活リズムの問題と結びつけられています。
睡眠不足は個人の夜更かしだけではなく、仕事や家事などの時間の奪い合いによって生まれる構造的な課題です。同調査では睡眠を優先したい人が36.4%いる一方、実際に優先されている時間は仕事が最多とされています。本音では睡眠を大切にしたいのに、現実の時間配分では仕事が上回るというギャップが、日本市場の特徴です。
通勤時間も睡眠に影響しており、30分未満の群は平均6時間58分、3時間以上の群は6時間24分と差が出ています。睡眠の質にも、通勤時間ゼロの群が57.3ポイント、3時間以上の群が51.4ポイントと差が見られます。
日本でも広がる眠活市場
日本では睡眠不足の人が多く、睡眠関連の商品やサービスへの関心はここ数年で確実に高まっています。日本で広がる眠活市場の具体的な動向について、以下の3つのポイントにまとめてみました。
睡眠関連商品の需要拡大やエンタメ要素を取り入れたサービスのヒットにより、睡眠は新しい消費テーマへと進化しつつあります。機能訴求にとどまらず、自身の生活導線に無理なく組み込みやすい睡眠改善の仕組みを見つけて実践してみましょう。
睡眠が生活習慣として再設計されはじめている
楽天市場では40万点以上の睡眠関連商品を扱い、2024年の流通総額は2019年比で約6.4倍に拡大しました。
睡眠関連の消費は寝具だけにとどまらず、ナイトウェア・エアコン・サプリメントなどへと広がっています。楽天の発表では、回答者の約8割が睡眠の重要性を認識している一方で、約半数が睡眠に何らかの不満を抱えていることが分かりました。
つまり、人々は睡眠の価値を理解しているものの、十分な満足を得られていないという状態にあるといえます。市場拡大の余地は、睡眠時間を増やす提案だけでなく、限られた時間でも回復感を高める提案にもあります。
マーケターにとっては睡眠を単独の商品として売ることよりも、食事や入浴などにデジタル習慣を束ねた生活導線を設計することが重要です。睡眠は単なる休息ではなく、日々のパフォーマンスを支える基盤として再定義されつつあるといえるでしょう。
睡眠の質を訴求する商品がヒット
日本市場では、睡眠の質を訴求する商品がヒットし、日常購買におけるわかりやすい価値軸になっています。
代表例のポケモンスリープは2026年時点で全世界累計3,000万ダウンロードを超え、7億回以上の睡眠が計測されています。ポケモンスリープは睡眠を義務ではなくゲーム体験に変換し、眠る動機づけをエンタメの文脈で作ったのが特徴です。
ポイントは睡眠改善を正論で迫るよりも、続けたくなる仕組みを設計したほうが行動変容につながりやすいということです。エンタメ以外では、ヤクルト1000のようなストレス緩和・睡眠の質向上を訴求する機能性表示食品も登場しています。
今後は睡眠改善を訴求するだけでは差別化が難しくなり、生活シーンへの自然な組み込みが評価されやすくなるでしょう。消費者は「眠れる」と聞くだけで動く段階から、自分の生活に合うか、無理なく続くかを見極める段階へと進んでいます。
よく眠るために旅行する、スリープツーリズムが誕生
睡眠消費は自宅向け商品だけでなく、旅行やホテル体験にも広がり、スリープツーリズムという新たな領域が注目されています。
楽天は2025年の睡眠トレンド予測で、ホテルや旅館が上質な眠りを提供する体験価値を高める流れに言及しました。5つ星ホテルなどでは、機能性の高いベッドや静音環境を組み合わせ、休息自体を旅の目的にする動きが見られます。
従来の旅行では観光や食事が主役でしたが、疲れを癒すために移動するという発想が新しい需要を生んでいます。日本では温泉や旅館文化との相性も良く、睡眠を切り口にした滞在設計はインバウンドと国内旅行の双方で展開しやすい領域です。ビジネス面では宿泊単価の向上だけでなく、寝具メーカーやヘルスケア企業などとの提携余地も広がります。
スリープツーリズムは観光市場とウェルネス市場をつなぐ接点であり、休む体験を商品化する発想が成長の鍵になるでしょう。人々が旅先に求める価値は、見る・食べる・遊ぶだけではなく、帰宅後に元気でいられる回復体験へと広がっています。
まとめ
海外でSleepmaxxingが広がり、睡眠は単なる休息から自己投資やパフォーマンス管理の対象へと変わっています。日本では睡眠不足が続いており、ポケモンスリープ、ヤクルト1000などの睡眠関連商品やスリープツーリズムが注目されています。
眠活市場の拡大は、日本人が睡眠を後回しにしながらも、回復感や翌日の調子を強く求めている表れでしょう。今後は数値化や機能訴求だけでなく、「無理なく続く生活導線」「不安を増やさない体験設計」が重要です。
自身のライフスタイルに合わせて睡眠を見直し、日々のパフォーマンス向上と心身の健康維持に役立てていきましょう。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwater Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム。

