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BANI時代のマーケティング!「失敗への恐れ」を持つ消費者に響く戦略を徹底解剖

BANI時代のマーケティング!「失敗への恐れ」を持つ消費者に響く戦略を徹底解剖


宮崎桃

Dec 2, 2025

近年、従来の手法が通用しづらくなったと感じているマーケティング担当者も、多いのではないでしょうか。

成果を得るには、脆く不安定なBANIと呼ばれる現代社会の消費者心理を捉え、信頼を担保し、行動を後押しする戦略が必要です。今回の記事では、BANI時代の消費者が抱える「失敗への恐れ」の正体を徹底的に解剖し、わかりやすくまとめました。

本記事を読めば、現代の消費者の防衛心理を理解し、信頼を獲得するマーケティング設計のヒントを得ることができます。まずはBANIという新たな時代の特性を深く理解し、失敗を恐れる消費者に響く最適な戦略を構築しましょう。

現代社会の不確実性を示す「BANI」とは

BANI(バニ)とは、従来のVUCA(ブーカ)よりもカオス的で深刻な現代社会の不確実性を示す新しい概念です。

BANIは、Brittle(脆い)・Anxious(不安な)・Non-linear(非線形な)・Incomprehensible(不可解な)の4つの形容詞の頭文字で構成されています。従来のVUCAが変動性・不確実性・複雑性・曖昧性といった客観的な状態を示すのに対し、BANIは人々の主観的な視点や感情を含むのが特徴です。

現代社会の不確実性を示す「BANI」とは

つまり、VUCAが予測困難な状況を描写しているのに対し、BANIはシステムの突然の崩壊可能性や人々が抱く不安を示唆しているのです。「原因と結果が釣り合わない非線形性」「論理的に理解できない不可解さ」など、より深刻で身近なカオスを表現しています。

BANI時代においては、とくにAnxious(不安)の要素が現代の消費者の心理に深く根付いているのがポイントです。将来への漠然とした不安感が日常化するなかで、消費者の失敗したくないという心理は、購買行動に影響を与えています。

たとえば、年齢や性別を問わず、購入前に評判を徹底的に確認するレビュー絶対主義ともいえる傾向が顕著です。また、新しい商品やサービスに挑戦するよりも、すでに多くの高評価を得ている無難で確実な選択肢を選ぶ傾向も強まっています。

BANIという新たな時代の特性を理解し、VUCA時代とは異なる前提で物事を捉え直す視点がマーケティングでは求められます。

「世代」で人を語れない時代に

現代社会において、人々を世代という枠組みだけで分類し理解しようとするアプローチは限界を迎えています。これは、ライフスタイルの多様化によって、個々人を年齢層で一括りにする従来の世代論では実態を捉えきれなくなっているためです。

消費者の購買行動や意思決定は、所属する世代よりも個々のニーズやおかれた状況によって大きく左右されます。社会が複雑化し、情報があふれる不確実な時代のなかで、年齢という軸だけでは説明できない共通の心理状態が見られます。

従来は、失敗したくないというリスク回避的な心理は、ゆとり世代・Z世代の特徴とされていました。しかし、BANI時代と呼ばれる現代では、この心理は年齢層を問わず多くの人々に共通する傾向にあります。

したがって、マーケティングでは世代というステレオタイプの認識は避け、個々人の価値観や心理状態にアプローチする必要があります。

消費者の心のなかにある「失敗への恐れ」

消費者の心のなかにある「失敗への恐れ」は、以下のとおりです。

消費者の心のなかにある「失敗への恐れ」

現代の消費者が抱える金銭・時間・社会的な損失回避性という防衛心理を押さえ、安心感を与えるマーケティング設計をしましょう。

金銭的リスク:「費用対効果」への不安

消費者が購買をためらうもっとも大きな要因のひとつが、買って後悔したくないという金銭的リスクへの不安です。支払ったコストに対し、期待した価値が得られないかもしれないという防衛本能的な心理が働くためです。

とくに、高額な商品や継続的な支払いが発生するサービスでは、費用対効果への疑問が購買決定の高い壁となります。たとえば、利用頻度が低い場合でも固定費が発生するサブスクは、損につながるリスクが大きいと消費者に認識されます。

したがって、不安を抱える消費者に対しては低価格の訴求だけでは不十分で、返金保証制度の提供や成功事例の提示が必要です。

時間的リスク:「探す・試す時間」の無駄への不安

インターネットにコンテンツがあふれる情報過多な時代において、消費者は自らの時間を貴重な資源と捉えています。そのため、商品やサービスを探す・試すための時間が無駄になるのを、リスクとして強く警戒しています。

「商品の選択のために情報を調べる・比較する」「購入後に使い方を習得」といったプロセスも、消費者にとってはコストです。「複雑なマニュアル」「わかりにくいWebサイト」などは、タイムパフォーマンス(タイパ)を損ねる失敗体験と見なされます。

タイパを重視し、時間的リスクを回避したい消費者には、直感的に操作できるシンプルな設計が求められます。

社会的リスク:「選択が間違っている」と評価される不安

SNSの普及により、自らの購買行動が常に他者の評価にさらされている意識を持っているのが、現代の消費者です。そのため、自分の選択ミスだと他者からネガティブに評価されることを、社会的リスクとして恐れる傾向が強まっています。

たとえば、「流行遅れだと思われたくない」「センスが悪いと軽蔑されたくない」といった不安が挙げられます。また、周囲から理解されないニッチすぎる選択をして、コミュニティのなかで浮いた存在になることも恐れられています。

BANI時代におけるコミュニケーション戦略のポイント

BANI時代におけるコミュニケーション戦略のポイントは、以下のとおりです。

BAMI時代におけるコミュニケーション戦略のポイント

正直さや人間らしさを伝え、信頼を担保するCX設計により、失敗を恐れる消費者の行動を後押しする戦略を実現しましょう。

過度な期待値を避ける「正直なコミュニケーション」

BANI時代においては、過度な期待値をあおる訴求を避け、正直なコミュニケーションを徹底し、安心感を醸成しましょう。誇張された表現より現実的で信頼できる情報を重視する消費者の傾向が強まっているためです。

たとえば、製品やサービスの紹介では、従来のように革新性や目新しさばかりを強調しないほうがよいでしょう。安心感・実績・安定性を示すデータや導入事例を示すほうが、消費者の信頼を得やすくなります。

くわえて、購入後の不安を払拭するため、返品・交換ポリシーをわかりやすく提示するといった対策が有効です。

UGCと第三者による「信頼の担保」の設計

信頼を獲得するためには、企業からの一方的な情報発信だけではなく、UGCや客観的な第三者による担保が必要です。

UGCとは、ユーザーが自ら作成・公開したコンテンツで、SNSの投稿や商品レビューなどが該当します。消費者は企業の広告よりも利用者のリアルな体験談や、利害関係のない専門家の意見を信頼する傾向にあります。

重要なのは極端な高評価ばかりを集めず、ポジティブ・ネガティブが混在する正直なレビューを前面に出すことです。ネガティブな意見も隠さずに公開すれば、レビュー全体の信頼性を高めることができ、企業の誠実さがより伝わりやすくなります。

ブランドの「人間らしさ」が伝わるストーリー開示

脆く不安定なBANI時代に消費者の信頼を得るには、完璧な姿だけを見せることではなく、人間らしさの伝わるストーリーが必要です。これは、消費者は無機質な製品やサービスよりも、背景にある開発者の思いや苦労といったプロセスに共感し、親近感を抱きやすいためです。

具体的には完成品だけをPRするのではなく、開発や製造過程の裏側にあるストーリーを開示しましょう。また、過去の失敗から学んだ教訓など一見すると弱みともとれるような情報の開示は、企業の人間らしさを演出できます。

行動を後押しする「ステップ・バイ・ステップ」なCX設計

不安感が強く、失敗したくないと考えるBANI時代の消費者を、ステップ・バイ・ステップで実際の行動へと後押ししましょう。

そのためには、消費者を迷わせないCX(Customer Experience:顧客体験)の設計が重要です。消費者は購入の各段階でさまざまな不安や疑問を抱えるため、次になにをすべきか明確でないと離脱しやすくなります。

購入前から購入に至るまでのすべての接点において、消費者が次にとるべき行動を明確に示す導線設計が求められます。

とくに、高額商品・導入が複雑なサービス・サブスクにおいては、購入のハードルが高くなる傾向が強いです。そのため、無料相談や体験コンテンツを充実させ、購入前に試す機会を提供し、不安・疑問を解消しましょう。

BANI時代の消費者心理に最適なマーケティングを展開しよう

深刻な不確実性があるBANI時代において、消費者はさまざまな不安から「失敗したくない」という心理を強く持っています。そのため、従来の世代論ではなく、個々の価値観や金銭的・時間的・社会的な損失回避性など防衛心理への理解が求められます。

現代の消費者に対応するため、マーケティングでは過度な期待をあおらず安心感を醸成する正直なコミュニケーションが重要です。企業からの一方的な発信に頼るのではなく、UGCや専門家といった第三者による客観的な信頼の担保を設計し、誠実な姿勢を示しましょう。

失敗を恐れる消費者の心理に寄り添い、信頼を基盤としたマーケティング戦略への転換を意識してみてください。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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