近年、「ひとり焼肉」「ひとりカラオケ」「ひとり旅」など、ひとりで楽しむ行動がごく自然なものとして定着しつつあります。こうした動きを「ソロ活(ソロ活動)」と呼びます。誰かと予定を合わせる必要がなく、やりたいことに気兼ねなくお金を使えることから、年齢や性別を問わず支持が広がっています。
今回の記事では、「ソロ活が支持される社会的な背景」「日本と海外の市場動向」を解説したうえで、「今後のビジネス展望」について掘り下げていきます。
ソロ活をしている人の割合
「僕と私と株式会社」は、2025年9月に行った調査で「直近3か月以内に、一般的に複数人で行くことが多い場所や活動をひとりで楽しんだことはありますか」と質問しました。
「はい」と回答したZ世代(1995年以降生まれ)は40%を超えています。Y世代(1980年〜1995年頃生まれ)は約37%、X世代(1965年〜1980年頃生まれ)は約23%でした。若い世代ほど多いということは、今後ソロ活需要が高まることの表れでもあるでしょう。
ソロ活が人気の理由は、以下のとおりです。
ソロ活が人気の理由は、以下のとおりです。
- 単身世帯の増加でひとり行動がしやすくなった
- ひとり行動が前向きに受け止められるようになった
社会構造の変化は、従来の「集団行動」を前提とした常識を覆し、個人の時間を優先する新たな価値観を生み出しました。
単身世帯の増加でひとり行動がしやすくなった
厚生労働省によると、国内の単身世帯は年々増加しています。社会全体で行動単位がグループから個人へとシフトしたことが、ひとり行動の増加につながったと考えられます。
2021年の調査では、若者が結婚しない理由として「適当な人が見つからない」と出会いの機会がないことを挙げた回答が最多でした。スマートフォンの普及で、ひとりでも知らないことを調べられたり、充実した時間を過ごせたりするようになったことで対面での交流が減ったことも、単身世帯を押し上げている要因といえるでしょう。
ひとり行動が前向きに受け止められるようになった
ソロ活に対するネガティブなイメージは払拭され、むしろポジティブな価値観として再定義されています。
ソロ活のイメージについて、「僕と私と株式会社」の調査データによれば、全世代の約35%がソロ活に対して「楽しそう」「気楽そう」、約31%が「自分らしくいられそう」といった肯定的な印象を抱いています。かつてのような「寂しい人に見られる」という懸念は薄れているようです。
また、ひとりで充実した時間を過ごす様子を「普通に話す」「SNSにも発信する(むしろ誇れる)」と答えたZ世代は約20%で、「SNSには載せない」の12%を上回りました。ひとり行動は、主体的に選んだ決断として認知されているようです。ソロ活を共有する文化が根付くことで、今後も他者のソロ活を後押しする循環を生んでいくでしょう。
日本のソロ活シーン
ソロ活の人気の高まりに合わせ、企業や店舗側もソロ客をターゲットにしたプランや座席配置を積極的に導入しはじめました。ソロ活をビジネスに応用できる場として、日本では飲食関係や趣味が代表例です。
飲食業界で広がるソロ飯文化
ソロ活において、外食産業はもっとも顕著な広がりを見せている分野のひとつであり、ビジネスモデルの変革すら起きています。
調査ではソロ活のなかで「ひとりカフェ・外食」が最多でした。カウンター席の拡充やひとり専用鍋、タッチパネル注文など、店員や他の客との接触を最小限に抑える工夫が支持されています。
おひとりさま対応は、店舗側にとっても回転率の向上やアイドルタイムの稼働確保という実利をもたらします。利用者は自分のペースで食事を味わうことができ、店側は効率的な運営が可能になり、双方にとって合理的です。
趣味でのひとり時間を最大化する没入型体験
エンタメや趣味の領域でも、ソロ化の波は確実に押し寄せており、消費単価の高い「没入型体験」が人気です。
ひとり映画やひとりカラオケにくわえ、最近ではひとりスポーツ観戦やひとりライブ参戦、ひとり推し活といったアクティビティも一般的になりました。誰かとその場で感動を共有するよりも、作品や体験そのものに深く没入したいというニーズが高まっていると見られます。
海外でも広がるソロ活
海外でもソロ活は広がっており、先進国を中心に世界規模で進行している不可逆的なトレンドと言えます。海外の調査によると、ひとり外食を選ぶ理由として34%が「me time(自分時間)」の確保、20%が「自分の都合で食事をしたい」と回答しています。ひとりでは外食しないのではと思われるかもしれませんが、長時間労働のあとでの外食は利便性が高いようです。
中国では単身世帯の増加を背景に、「シングルエコノミー(単身者市場)」が巨大化しているとのことです。サービスを利用したいときに利用できる自由さも、重要視されているようです。
韓国では、ひとりで来店した客に対して、2人前以上の注文を要求したり追い返したりといった事例がありました。しかし、YouTuberによりこの事態が取り上げられたことにより、ソロ客のためのサービスが徐々に広まっています。
ドイツでもひとりで食事する人は、2024年は前年比18%の増加で、ソロ客のためのサービスを充実させるようになりました。
これからのソロ活ビジネスはどうなる?
今後はサービスを選ぶ際に、「ひとりでも利用しやすいかどうか」が、事前に重視される傾向が強まっていくと考えられます。そもそも2人以上でなければ成立しない体験もある一方で、外食や旅行、映画鑑賞、ライブなどのように、1人でも複数人でも楽しめるサービスについては、「ソロ活向きであるか」が選ばれやすい重要な判断基準になり得ます。
特に需要が伸びている旅行業界や飲食業界では、ソロ活を前提とした設計や配慮を行っておくとよいでしょう。
ひとり旅行体験の広がり
旅行業界では、ソロトラベラーをターゲットにした専用プランや施設設計が増加傾向にあり、収益構造の変化が見られます。33か国・地域の合計約27万人の成人旅行者を対象に実施された2024年の調査では、58%が2024年にソロ旅行を計画中と回答し、市場のポテンシャルの高さが浮き彫りになりました。
ソロ活需要に応えるために、以下のような対策が必要と考えられます。
- 交流を強制しないラウンジの設計
- ひとりでも割高にならない料金設定1名1室の部屋の増築
ひとり外食の広がり
2025年9月の調査データでは、日本でのソロ活で最も多いのは「ひとりカフェ・外食」でした。世界でもひとりでの食事が普及しているため、海外拠点の店や国内の外国人客が多いレストランでも、ソロ活の環境を整えておくとよいでしょう。
ソロ活環境構築のための対策は、以下のようなものがあります。
- ひとり用のメニューや席の設置
- ひとり客が気兼ねなく過ごせるよう、パーテーションなどの工夫
- タブレットやメニューの多言語化など、注文しやすさの工夫
- 宅配サービスの充実
まとめ
ソロ活市場の拡大は単なる現象にとどまらず、社会やサービスの設計そのものが変わりつつあることを示しています。
日本でも海外でも、ひとり前提のサービスが整いはじめています。このような変化を踏まえると、外食やエンタメ領域では、「ひとり利用を前提にどう設計するか」が問われる局面にあります。
今後のマーケティングには、複数人利用の訴求にくわえ、ソロ客の心理を想定した体験設計が重要になっていくでしょう。ソロ活市場への適応は、多様化する現代社会で生き残るための必須条件といっても過言ではありません。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム
