CX(顧客体験)を改善しようと施策を重ねても、なかなか成果が出なくて悩んでいる担当者もいるのではないでしょうか。社内の部門ごとにCXの施策が分散していると、顧客体験の全体に統一性がなくなります。
CX戦略は、顧客が商品・サービスなどを通じて企業と関わるすべての段階を設計・管理し、顧客体験の質を継続的に改善していく取り組みです。本記事では、CX戦略の立て方5ステップや活用すべき指標、成功事例を解説します。
CX戦略とは
CX戦略が求められる背景
CX戦略に取り組むメリット
CX戦略でよくある課題
CX戦略を成功させるポイント
CX戦略の立て方5STEP
CX戦略の効果測定で活用したい指標・データ
CX戦略の成功事例
まとめ|CX戦略は顧客の声と事業成果をつなぐ設計図
CX戦略とは
CX戦略とは、CXを向上させるための戦略のことです。CXは「カスタマーエクスペリエンス」の略で、顧客体験を意味します。商品・サービスの購入時点のみではなく、購入前の認知段階・検討段階、そして購入後の利用段階での体験も含まれます。
施策をいくら積み重ねても顧客満足度が変わらない場合、部門間の動きが噛み合っていないことに原因があると考えられます。CX戦略を実行することで、顧客の認知段階から利用段階まで一貫したサービスが提供できます。
CX施策との違い
CX施策とは、特定の問題を解決するための具体的な計画とアクションのことです。たとえば「問い合わせへの返信を2時間以内にする」「購入ページのキャプションの出現をボタン式にして、画像をメインにして見やすくする」などです。
一方でCX戦略は、「どんな顧客体験を提供したいのか」のような全体的な構想を指します。戦略が先にあることで、カスタマーサポートやマーケティングなどの各部門の施策に一貫性を持たせることができます。
CX戦略が求められる背景
いま、CX戦略が求められている背景として、以下の3つが挙げられます。
- 機能や価格だけでは差別化しにくくなっているため
- 顧客接点が増え、顧客体験の統合が必要なため
- SNSや口コミで“体験”そのものが可視化されるため
それぞれ詳しく解説します。
機能や価格だけでは差別化しにくくなっているため
機能や価格が似た商品が増えた市場では、商品のみでの差別化が難しくなっています。価格の引き下げは短期的には有効でも、続けると収益を圧迫します。そこで重要になるのが、顧客が商品・サービスを検討し購入、利用、問い合わせ、継続利用するまでのすべての場面での体験です。各接点での良質な体験が積み重なることで、顧客が競合に乗り換えるのを抑えることができます。
顧客接点が増え、顧客体験の統合が必要なため
近年の顧客接点は、Webサイトやアプリ、SNS、店舗、営業、カスタマーサポートなど多様です。商品の認知段階は店頭ポスター、購入段階ではWebサイトなど、顧客の段階ごとに接点が異なるようになり、部門ごとの対応や方針も統一性が求められるようになりました。
たとえば、問い合わせの電話対応とWebサイトの案内の内容が異なっていると顧客は困惑し、信頼関係の損失にもつながります。ひとつの方針のもとで各接点の体験を管理することが重要です。
▶︎あわせて読みたい:クロスチャネルとは? 顧客体験を向上させるための重要なポイントを解説
SNSや口コミで“体験”が発信されるようになったため
SNSや口コミレビューの普及により、顧客が体験を自ら発信するようになりました。ポジティブな内容が拡散されれば、広告のような宣伝効果も期待できます。また、発信内容は、顧客が一連の体験を実際にどう感じたかを知る手がかりにもなります。自発的な投稿のため、企業アンケートよりも率直な声を拾えるのが特徴です。
SNSやレビューに投稿された生の声を継続的に収集・分析する手法がソーシャルリスニングです。分析ツールを活用することで、顧客体験の実態をリアルタイムで把握できます。CX戦略を改善し続けるには、顧客の声を定期的に確認する仕組み作りが欠かせません。
▶︎あわせて読みたい:ソーシャルリスニングとは?最新事例・始め方ガイド・ツール活用を解説
CX戦略に取り組むメリット
CX戦略に取り組むメリットとして以下の3つが挙げられます。
- LTV・継続率・解約率の改善につながる
- 口コミなどによる推奨が、ブランド価値の向上につながる
- 部門ごとの施策がつながり、投資判断がしやすくなる
それぞれ詳しく解説します。
LTV・継続率・解約率の改善につながる
CX戦略の実施により質の高い体験を提供できれば、顧客満足度が向上します。体験に満足している顧客は価格より関係性を優先するため、値引きをしなくても継続率が高くなります。さらにはアップセルの増加にもつながり、顧客ひとり当たりが生涯にわたって生み出す収益(LTV)が向上することも期待されるでしょう。
短期的なコンバージョンを追う施策と異なり、CX戦略は時間をかけて顧客との関係を深めるアプローチのため、LTVのような長期的な評価軸の成果を出すのに向いています。
口コミなどによる推奨が、ブランド価値の向上につながる
顧客体験の質が上がると、顧客自らが商品・サービスを周囲に勧める行動が生まれます。SNSへの投稿や口コミサイトへのレビュー、友人への推奨などの顧客の行動は、新規顧客を増やすきっかけになります。費用がかからないうえに、広告や販促活動とは別の経路で新規顧客が増えていくのが、CX戦略の特徴のひとつです。
ポジティブな口コミが増えることでブランドへの信頼が高まり、価格競争に巻き込まれにくいブランドとしての立ち位置も形成されていきます。
部門ごとの施策がつながり、投資判断がしやすくなる
CX戦略がない状態では、各部門が独自の優先順位で動きます。問い合わせ対応においても、Webサイトと電話対応で緊急性を要する順位が共有されていないと、顧客体験全体の改善につながらないケースがあります。
CX戦略を策定すると、施策の効果を全体的に俯瞰できるのがメリットです。施策間のつながりが見えると、「次はどこに投資すべきか」が明確になり、重複投資や抜け漏れを減らすことにもつながります。
CX戦略でよくある課題
CX戦略でよくある課題を紹介します。
- 部門ごとにKPIが分かれ、体験全体を把握できていない
- アンケートだけでは顧客の本音をつかみきれない
- 成果検証をしないと、改善施策が場当たり的になる
部門ごとにKPIが分かれ、体験全体を把握できていない
KPIとは、施策の進捗状況を把握するための中間目標のことです。マーケティング部門はリード獲得数、営業部門は受注率、カスタマーサポート部門は問い合わせ解決率と、部門ごとに異なる指標を追っていると、顧客体験の全体像を把握できなくなります。CX戦略では、部門横断で共有できる顧客体験の指標を設計することが必要です。
アンケートだけでは顧客の本音をつかみきれない
CX戦略の効果測定の方法のひとつにアンケートがありますが、アンケートに積極的に回答するのは、強い不満か強い満足を感じた顧客が中心です。他の利用層の声がすくい取れないと、顧客体験の効果が正確につかめません。
より正確な効果測定には、SNSの投稿や口コミサイト、問い合わせログなどの顧客の率直な声も参考にするのが得策です。顧客体験全体の実態を把握するには、複数のデータソースを組み合わせることが求められます。
▶︎あわせて読みたい:VOC分析とは?メリットや効果を最大化する3つのポイント
成果検証をしないと、改善施策が場当たり的になる
CX戦略の効果測定をしたものの、原因まで検証しないために改善のサイクルがスムーズに回らないことがあります。「チャットボットを導入したのに問い合わせ件数が変わらない」「ページを改修したのに離脱率が下がらない」といった結果を得たら、原因を推測することが必要です。
検証が難しくなる背景には、評価基準が部門ごとに分かれていることが考えられます。CX戦略で施策全体を見ることで、別の部門に原因があることが発見できることもあります。原因を特定することで、次回の各施策の目的と評価指標を設定でき、検証まで含めた改善サイクルを回せるようになります。
CX戦略を成功させるポイント
CX戦略を成功させるには、以下の2つが重要です。
- 事業KPIとCX指標をつなげて設計する
- アンケートだけでなく顧客の声を多面的に捉える
それぞれ詳しく解説します。
事業KPIとCX指標をつなげて設計する
中間目標値の事業KPIは、効果測定のためのCX指標とセットで設計することが、CX戦略を事業成果につなげるうえで欠かせません。たとえば、「半年で顧客ロイヤリティを20%上げる」といったように設定します。
CX指標には顧客ロイヤルティを測定するNPS®(や、顧客満足度を測るCSATなどがありますが、継続率やLTV、解約率など複数の指標とも合わせると、より施策効果の全体像が見えてきます。施策の優先順位や予算配分などの決定時にも、重要な判断材料になるでしょう。
アンケートだけでなく顧客の声を多面的に捉える
顧客の声は、チャネルによって表れる内容が異なります。アンケートはあらかじめ質問が用意されているため、企業が得たい回答を得ることができます。一方、SNSの投稿や口コミサイト、問い合わせログでの意見は自発的なものであり、それまで気づかなかった課題や新たなアイディアに結びつく可能性があります。
アンケートでの満足度スコアが高くても、SNSには少数派の不満が見られるかもしれません。複数のデータソースを組み合わせることで、顧客が実際にどう感じているかを多面的に把握できます。
CX戦略の立て方5STEP
CX戦略は、何を目指すかの定義から始まり、課題の可視化、データ収集、体制構築、継続的な改善まで、5つのステップで設計します。
1. カスタマージャーニーマップで課題を可視化する
まずは現状把握です。顧客がどの段階で購入を決断し、どの段階で離脱しているかを把握するには、段階ごとに顧客の行動をまとめるのが有効です。認知、比較検討、購入、初回利用、問い合わせ、継続利用の段階順に横並びにし、各フェーズでの接点や課題、顧客が感じていることをカスタマージャーニーマップとして可視化します。部門をまたいで作業することで、見えていなかった課題が出てくることもあるでしょう。
2. 目指す顧客体験と優先課題を決め、KPIを設計する
課題を洗い出したら、目標を定めます。「顧客にどんな体験をしてほしいか」を中間目標のKPIとともに設計しましょう。たとえば「初回購入後のフォローを改善し、使い始めの不安を取り除く」が体験のゴールなら、「3ヶ月で継続率を現状比10ポイント向上させる」が対応する事業指標になります。
複数の課題がある場合は、影響が大きく比較的取り組みやすい課題から着手するのが得策です。また、KPIの設定の際には目標期間も定めることが重要です。特に、継続率や解約率は長期の測定期間が必要になります。
3. 部門横断の実行体制をつくる
CX戦略を動かすには、CX推進の担当者またはチームを設けることも重要です。マーケティング部門のみならず、営業部門やカスタマーサポート部門など、部門間の調整役になることで、各施策に一貫性が生まれます。
まずは課題とKPIの共有です。KPIは計測方法も明示しておくと、より目標が明確になるでしょう。また、各部門の代表メンバーが定期的に現状報告し合う場を設けることで、問題の早期発見や方針のズレの防止につながります。
4. 効果検証する
施策を実行したら、どのくらい効果があったかを検証します。アンケートのスコアやCSATなど、あらかじめ設定したKPIと照らし合わせます。
それから、KPI達成度の原因を探ります。口コミ・SNSなどのソーシャルリスニングや問い合わせログといったテキストデータも分析することで、有用なヒントが見つかるかもしれません。複数のデータを合わせて見ることで、次に手を打つべき箇所が特定しやすくなります。
5. 改善を継続する
効果測定から課題を見つけ出したら、改善のサイクルを回すことが重要です。目標期間とKPIを新たに定めます。
また、効果を定期的にKPIと照らし合わせるだけでなく、顧客の声を追い続けることで問題の早期発見につながります。リアルタイムの声を拾うには、アンケートよりもソーシャルリスニングツールを使ってSNSや口コミの反応を見るのが適しているでしょう。
CX戦略の効果測定で活用したい指標・データ
CX戦略の効果を測るための指標・データには、数値で表せる定量的な指標と、テキストなど数値で表しにくい定性的なデータがあります。
NPS・CSAT・CESなどの定量指標
CX戦略で使われる定量指標の例は以下のとおりです。
| 指標 | 正式名称 | 何を測るか | 活用場面 |
|---|---|---|---|
| NPS® | Net Promoter Score (ネットプロモータースコア) | 顧客ロイヤルティ (商品・サービスを他の人にどのくらい勧めたいか)/td> | 社内の年次調査時、顧客の商品・サービス利用後など |
| CSAT | Customer Satisfaction Score (顧客満足度スコア) | 顧客満足度 (商品・サービスにどのくらい満足したか) | 顧客の商品・サービス利用後、問い合わせ後など |
| CES | Customer Effort Score (顧客努力スコア) | 顧客の手間や負担感 (商品・サービス利用時にどのくらい負担に感じたか) | 手続きや初回利用後、問い合わせ後など |
NPSとCSATは似ていますが、推奨度を測るか満足度を測るかが相違点です。CESは、NPS・CSATと対照的な指標といえます。
問い合わせのテキストや会話などの定性データ
NPSやCSATのような数値で表せる指標のほかに、問い合わせのテキストや会話などからも顧客の声(VOC)を読み取ることができます。数値からは「何が起きているか」が把握できますが、原因を深掘りするには定性データが有効です。特に、問い合わせ内容の分析は、問題点を知るのに効果的でしょう。
収集元は、問い合わせログやカスタマーサポートの会話記録などです。対応後に顧客から対応評価をスコアでもらい、好評価とそれ以外に分けて具体的な対応を見返すことで、どこに問題があったか見えてきます。
SNS・ソーシャルリスニングなどの定性データ
SNSやブログなどのソーシャルメディア上の顧客の声(VOC)を聞くことを、ソーシャルリスニングといいます。ソーシャルリスニングは、顧客が自ら発信した声を収集できる点が、アンケートにはない強みです。感情がより出やすく、潜在的な不満や期待を把握しやすくなります。また、問い合わせのデータと異なり、積極的な検討段階にいない層の意見も把握できます。
活用場面は、新商品やキャンペーン直後の反応確認、競合ブランドへの言及のモニタリング、カスタマーサポートでは見えてこない不満の早期発見などです。定量指標と組み合わせることで、顧客体験の全体像をより精度高く把握できるようになります。
CX戦略の成功事例
顧客体験の改善を進めるには、顧客の声をリアルタイムで収集し施策に反映させる仕組みが必要です。Meltwaterの分析ツールを活用してCX戦略を推進する3社の事例から、具体的なアプローチを見てみましょう。
NTTドコモ|施策効果と顧客の声を可視化し、次の施策に活かす
NTTドコモは、施策の効果をSNS上の反応で即日確認し、次の施策立案に活かす仕組みを構築しています。以前は施策の手応えを肌感覚でしか掴めず、幹部層への報告にも説得力が欠ける状況が続いていました。
Meltwaterの分析ツールの導入により、施策のリリース直後からX(Twitter)上の反応を数値とテキストで把握できる環境が整いました。競合他社との比較も定期的に行い、自社の市場での立ち位置を客観的に確認しながら次の戦術を組み立てています。担当者が成果を「自分たちごと」として実感できるようになったことで、チームのやりがいの向上にもつながっています。
▶︎あわせて読みたい:導入事例: Meltwater x NTTドコモ
RICOH|お客様の声を各国・各部門で共有し、提案価値を高める
RICOHではタイや香港、オーストラリアなど各国のチームが異なるツールで独自に分析を行っており、データ形式も統一されていなかったため、知見を横断的に共有できていませんでした。
Meltwaterのツールの導入後は、各国の担当者が同じ環境からデータを参照できるようになりました。顧客のニーズや各国の市場事情を把握したうえで提案に臨めるようになったことが、チームにとって手応えとなっています。レポート機能やAIアシスタント機能がついていることも、業務の効率化を加速させています。
▶︎あわせて読みたい:導入事例: Meltwater x RICOH
井筒まい泉|応対品質の向上と商品改善、UGC活用を同時に進める
「とんかつ まい泉」を運営する井筒まい泉は、SNSに投稿される顧客の声を商品改善のヒントとして活用しています。以前は、オンライン上の顧客の声を把握していなかったことが課題でした。
Meltwaterのエクスプロア導入後は、「カキが苦手なうちの子が、まい泉のカキフライをおいしく食べた」「フタが開けにくい」というSNS上の声を把握できるようになり、季節商品の訴求やパッケージの改善に活かされています。また、SNSでのユーザー投稿(UGC)を自社サイトに掲載するなど、顧客参加を促すような取り組みが行われています。
▶︎あわせて読みたい:導入事例: Meltwater x 井筒まい泉
まとめ|CX戦略は顧客の声と事業成果をつなぐ設計図
CX戦略では、顧客接点全体を見渡したうえで、どこを改善し、何を指標にし、どう改善サイクルを回すかを組織として決めることが重要です。感覚や部署ごとの判断に頼っていると、施策が増えるほど顧客体験はバラバラになってしまいます。戦略として体系化することで、施策の優先順位が明確になり、成果の検証と次の改善がつながっていきます。
顧客の声を継続的に把握するうえで、ソーシャルリスニングは有力な手段のひとつです。アンケートではすくい取りにくいリアルな声を収集できれば、CX戦略の改善サイクルはより効率的に回っていきます。SNSや口コミをリアルタイムで分析するMeltwaterのソーシャルリスニングツールを、CX改善の起点としてぜひご活用ください。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwater Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム。

