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海外市場拡大のアニメ産業!要因やマーケティング活用事例を解説

海外市場拡大のアニメ産業!要因やマーケティング活用事例を解説


宮崎桃

Sep 30, 2025

留まることを知らない日本のアニメ人気。「NARUTO -ナルト-」「ONE PIECE」といった長年に渡る人気作のほか、「鬼滅の刃」「進撃の巨人」「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」なども近年、世界で爆発的な人気を誇っています。

本記事では、海外需要が高まるアニメ産業の人気の背景や要因、さらに日本のアニメをマーケティングで取り入れた事例も解説します。

右肩上がりのアニメ産業 海外需要の加速で制作費も上昇

世界を席巻する日本のアニメ業界の市場規模は、目覚ましい成長を遂げています。

一般社団法人日本動画協会の報告書「アニメ産業レポート2024」によると、アニメ産業は2013年以降、右肩上がりの成長を続けています。2023年のアニメ産業市場は前年比114.3%、4,188億円増の3兆3,465億円となり、初めて3兆円を突破しました。

また、株式会社レポートオーシャンの調査によると、日本アニメ市場は2023年から2032年までに132億1,000万米ドルから186億4,000万米ドルに達すると予測されており、今後も継続的な成長が見込まれます。

特筆すべきは、海外との番組契約やグッズ販売などの海外市場の拡大です。

2023年の国内市場が1兆6,243億円(前年比110.6%、1,558億円増)であったのに対し、海外市場は1兆7,222億円(前年比118%、2,630億円増)と、海外市場が国内市場を上回る結果になりました。

しかしながら、アニメ産業には新たな課題も浮上しています。近年は円安や物価高の影響をはじめ、人件費等のコスト増により、制作費の高騰が深刻化しています。この状況は、業界の持続的な発展にとって乗り越えるべき重要な壁となっています。

出典:

アニメの海外における人気ぶり  

今や世界的なエンターテインメントの一つとして地位を確立した日本のアニメ。

動画配信サービスの普及により、日本のアニメは海を越えて世界の視聴者にも簡単に届けられるようになりました。ここでは、日本のアニメ産業を牽引する海外市場の背景を見ていきましょう。

アニメの海外における人気ぶり

アメリカのZ世代44%がアニメを視聴

2022年7月に電通マクロミルインサイトが約1,800人を対象に実施した調査「米国における日本アニメに関する意識調査」によると、アメリカのZ世代(1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代)の44%が「流行っているアニメを視聴する」と回答したことが分かりました。

また、本調査では「原作漫画を読んだことがある」と答えた人が42.3%、「アニメについて話す相手がいる」と答えた人が47.7%と全体の約4割に上っています。この要因は、動画配信サービスの普及が大きく影響していると言えます。

この調査からも分かるとおり、もはやアニメは一部のファンが楽しむ趣味ではなく、幅広い層に親しまれる一大エンターテインメント産業になっています。

出典:数字でわかる!ANIMEは世界のZ世代へのキラーコンテンツに

欧米のエキスポに20万人以上の来場者

欧米では、アニメファンが集うエキスポも開催されています。

2025年には、アメリカ・ロサンゼルスで「Anime Expo®(アニメエキスポ)」が開催されました。Anime Expo®の来場者数は2012年の5万人から年々増加傾向にあり、2016年には10万人、2024年には64カ国以上から40万人、2025年には65カ国以上から41万人の来場を記録。現在では北米最大のアニメ関連展示会となっています。

ヨーロッパでもアニメ人気は高く、その象徴ともいえるのが、毎年フランスで開催される大規模なイベント「JAPAN EXPO(ジャパン・エキスポ)」です。初回開催の1999年には来場者は2,400人でしたが、2008年には13万人を突破。2025年には22万人の来場者を記録しました。2025年のJAPAN EXPOには、日本のアニメのファンとして知られるマクロン大統領も会場を訪問し、大きな盛り上がりを見せました。

どちらのエキスポも年々規模を拡大していることから、欧米における日本のアニメ文化への関心の高さがうかがえます。

出典:

ハリウッド映画実写化プロジェクトの増加

日本のアニメのハリウッド実写映画化の動きも、次々と進んでいます。

「北斗の拳」(1995年)を皮切りに、アニメ「マッハGoGoGo」を原作とした「スピード・レーサー」(2008年)、「DRAGONBALL EVOLUTION」(2009年)が公開されました。

以降、「名探偵ピカチュウ」(2019年)をはじめ、「ONE PIECE」や「聖闘士星矢 The Beginning」(2023年)などがハリウッドで実写映画化されました。近年では原作の世界観を尊重する傾向が強まり、「ONE PIECE」の実写版では、原作者である尾田栄一郎氏がエグゼクティブ・プロデューサーを務めています。その尾田氏も「一切の妥協なし」というほどの熱の入れようで、アメリカの大手映画批評サイト「ロッテントマト」では、視聴者支持率が86%(2025年9月3日現在)と高評価を獲得しています。

今後も日本のアニメのハリウッド映画化プロジェクトは増加傾向にあると考えられます。「僕のヒーローアカデミア」の海外配給権はNetflixが獲得。現在もプロジェクトは進行中です。また、「NARUTO -ナルト-」はデスティン・ダニエル・クレットン氏が監督および脚本を務めることが決定し、その旨が2024年に公式サイトで告知されました。まだ企画はスタート段階ですが、実写版の公開に期待が高まります。

出典:

アニメは海外市場でなぜ拡大している?

日本のアニメの拡大の背景には、次の4つの要因が関係していると考えられます。

アニメは海外市場でなぜ拡大している?

一つずつ詳しく見ていきましょう。

ファンダム文化の浸透

ファンダム(Fandom)とは、「熱狂的なファン」を意味する「fan(ファン)」と接尾語「dom」を組み合わせた造語です。具体的には、特定のアニメやアーティスト、作品などを愛好する熱狂的コミュニティを指します。

ファンダムは日本のアニメに限らず、アイドルやアーティスト、スポーツなどでも起こっているムーブメントです。アメリカの掲示板サイト reddit(レディット)はテーマに応じたサブレディット(コミュニティー)に分かれており、“Anime” のサブレディットには1,400万人以上もの人が参加しています。(2025年9月3日現在)

単なるファンではなく、コミュニティを形成するファンダムはオンライン・オフラインの双方で活発に交流することが特徴です。ファンの中では、作品への深い帰属意識を共有しています。活発な情報交換やそれを支える熱意がアニメ作品の人気をさらに盛り上げ、ブームを加速させる原動力となっています。

参考:reddit Anime

動画配信サービスにおけるアニメ作品の充実

NetflixやAmazon Prime、Disney+などの動画配信サービスの普及も、海外でのアニメ人気を手伝った大きな要因の一つです。

総務省が公開しているNetflix社の2025年4月の資料によると、2024年には全Netflix会員の約50%がアニメ作品を視聴していることが分かりました。さらに、世界でのアニメの総視聴時間は2024年までの過去5年間で3倍へ伸長しています。

動画配信サービスでは新作・旧作問わず幅広いアニメ作品が多言語に翻訳されており、海外でも手軽に視聴が可能です。このように、動画配信サービスの普及が国境を越えた視聴者の獲得を後押しし、海外の人にとって日本のアニメはごく身近な存在となったと言えるでしょう。

出典:総務省 資料3-2 2025年4月 Netflix 

Vtuber人気と日本アニメとの相互作用

Vtuberとは、「バーチャルYouTuber」の略称で、2Dや3DのCGキャラクター(アバター)を使って動画配信をする人を指します。

Vtuberはアニメキャラクターのようなビジュアルにより、アニメファンとの高い親和性を持つ存在です。Vtuber専門の事務所も存在し、人気Vtuberは世界各国でイベント出演やミート&グリートを開催するほど人気が高まっています。

この現象を象徴するのが、経済誌・Forbesの日本版、Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満」30人「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2025」のうちの一人として選出されたVtuberの「星街(ほしまち)すいせい」さんです。星街すいせいさんはアニメ映画「トラペジウム」の主題歌のボーカルや「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」のエンディングテーマのボーカルを担当しています。こうしたVtuberとアニメのコラボレーションは、既存のファンのみならず、これまでアニメに馴染みのなかった層の関心も引きつけ、日本のアニメ文化の世界的影響力をさらに高めています。

出典:

海外の主要メディアが報じる日本アニメの特集・評価

海外ではアニメは長らく「子ども向け」という印象が持たれていました。しかし、日本のアニメの台頭により、その認識は大きく覆されています。現在、日本のアニメは幅広い世代が楽しめる質の高いコンテンツとして、世界の主要メディアで高評価を獲得しています。

その例として、2024年4月発刊のニューズウィーク日本版「世界が愛した日本アニメ30」やBBC NEW JAPANでは、宮崎駿監督のスタジオジブリ作品「君たちはどう生きるか」が米アカデミー賞・長編アニメーション賞を受賞したことが特集で大きく取り上げられています。

さらに、ニューズウィーク日本版では大友克洋監督の「AKIRA」や吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)氏の「鬼滅の刃」などにも事例として言及しています。「世界が日本アニメを愛する理由」として、なぜこれほどまでに日本のアニメが世界で愛されているかを分析しています。

このように、日本のアニメは世界的メディアからも幅広い年齢層が楽しめるエンターテインメントとして支持されていることが分かります。

出典:

アニメ×マーケティングの活用事例

アニメファンは強力なターゲットクラスターとして、多くの企業がマーケティングにも活用しています。本記事でもご紹介したように、アニメファンの間ではファンダム文化が浸透し、熱量の高いコミュニティ形成がされており、強い拡散力が期待できます。ここでは、企業マーケティングにおけるアニメ活用事例をご紹介します。

アニメキャラクターとのコラボ商品開発

UNIQLO(ユニクロ)のTシャツブランド・UT(ユーティー)では日本のアニメとのコラボレーション商品を発売しています。「ポケモン」や「ドラえもん」「ONE PIECE」「スタジオジブリ」など誰もが知る名作から、「鬼滅の刃」「ダンダダン」など近年大ヒットしたアニメキャラクターまで、幅広いアニメとコラボレーションしています。


UTは日本国内に留まらず、アメリカやヨーロッパ、韓国など世界各地に展開されています。リーズナブルな価格帯や日常的に取り入れやすいシンプルなデザインとも相まって、グローバルな人気を確立しました。これは、ファッションアイテムとアニメのコラボレーションの優れたマーケティング事例と言えるでしょう。

出典:

没入感の高い広告展開

アニメ作品の世界に入り込める没入感の高い「体験型」マーケティング手法も有効です。

2024年、渋谷ヒカリエでは、アニメ「呪術廻戦」のネームから下書きといった創作工程を公開する展覧会「芥見下々(あくたみ・げげ)『呪術廻戦展』」告知の広告が展開されました。

本展覧会では、渋谷駅地下通路にて、OOH(Out Of Home:屋外)広告と呼ばれる手法で大型ポスター広告が掲出され、見る人の心を掴むユニークな仕掛けが施されていました。

このOOH広告は、日を追うごとに作品のネームや下書き、塗りなどの過程が加わっていく仕組みになっています。最終日には、完成された絵が披露されるというストーリーが展開されました。通行人が思わず立ち止まり、制作過程を疑似体験できる広告手法は見る人の興味を惹きつけ、印象的なOOH(屋外広告)を選出する企画「アドクロ OOHAward 2024」を受賞しました。

出典:

海外アーティストとのコラボレーション

日本のアニメが海外アーティストとコラボレーションする事例は、増加傾向にあり、世界的な人気上昇を象徴しています。

たとえば、イタリアの人気ロックバンド「マネスキン(Måneskin)」は2023年、人気コミック「BEASTARS(ビースターズ)」とコラボレーションしたミュージックビデオ「TIMEZONE - BEASTARS for Måneskin (Animated Video)」をリリースしました。ボーカルのダミアーノ・デイヴィッド氏は日本のアニメの大ファンとして有名で、「BEASTARS」も彼のお気に入り作品の一つであることから、今回のコラボレーションが実現しました。

アニメ「怪獣8号」では、オープニング・エンディングテーマに海外アーティストを起用しています。オープニングテーマはイギリスのパンクロッカーのヤングブラッド(YUNGBLUD)が、エンディングテーマはアメリカのロックバンドのワンリパブリック(OneRepublic)がそれぞれ担当しています。

日本のアニメのために海外アーティストが曲を書き下ろすことは、新しい試みかつ挑戦的であると言われていました。しかしながら、「怪獣8号」の洋楽タイアップは好評を呼び、海外のメディアでも高評価を獲得しました。


出典:

まとめ|日本アニメコラボが生むビジネスの可能性

日本のアニメには今や、世界共通のエンターテイメントとしてのブランド力があります。アニメをマーケティングに活かすには、作品の世界観やストーリーを尊重しつつ、ファンコミュニティとの関係性を築き、ファンに作品への理解を深めてもらうことが成功の鍵となります。アニメ作品と企業とのコラボレーションは、新たな顧客層を獲得し、ブランド価値を創造する有効な戦略となるでしょう。

この記事の監修者:

宮崎桃(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

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