梅雨は外に出るのが億劫になる季節です。店に訪れる顧客も減少するため、売上が維持しにくい季節でもあります。梅雨の時期ならではのマーケティング対策が必要です。
今回の記事では、梅雨におけるマーケティング戦略のポイントや施策の事例をまとめました。
本記事を読めば、自社のビジネスに適した戦略を見つけられます。梅雨をビジネスチャンスに転換する方法を学び、新たなマーケティング戦略をはじめましょう。
梅雨の時期は来店数が少なくなる
梅雨の時期はの外出意欲の低下が顕著となり、実店舗の集客や売上に影響が出るのは避けられません。株式会社シンクロ・フードの調査では、雨の日に来店数が少ないと感じた飲食店は72.5%を占めました(2024年6月調査)。
特に、客単価が低く予約不要な店は、来客が少ないと感じる傾向にあります。梅雨の時期のためのマーケティング戦略が必要です。
参考:PR TIMES「梅雨入り直前・飲食店の「雨の日対策」調査。来店客減に備え、7割弱が対策を実施~SNS等で発信される、雨の日キャンペーンに注目~」
梅雨の時期に求められているものとは?
梅雨の時期に顧客が求めているものは何でしょうか。Meltwater社の分析ツール「エクスプロア」で、「梅雨 外出」でどのようなキーワードが多いのか分析しました。その結果、人気トピックの上位に「Shopping」が挙がり、その中でも「機能性」が特に関心を集めているキーワードであることが分かりました。
他にも以下のようなキーワードが見られます。
- 「半袖シャツ」「インナー服」など、服に関するもの
- 「晴雨兼用傘」「オフ両用万能アイテム」など、複数の機能を持つもの
- 「乾機能」「清涼感」など、梅雨特有のじめじめ感を対処するもの
- 「デザイン」「カラー」「ダークブルー」など、色やデザインに関するもの
これらのキーワードから、服やグッズの販売店なら、機能性の高い梅雨専用アイテムの提案が梅雨のマーケティング対策として考えられます。また、飲食店などでも、店内の雨の日対策として足元の水滴を素早く吸収するマットや、濡れた傘を収納できる専用ホルダーなど、機能性のあるものを使用すると顧客満足度が上がるかもしれません。梅雨の時期限定カラーを作り、グッズや店内に反映させるのも一案です。
梅雨におけるマーケティング戦略のポイント
梅雨におけるマーケティング戦略のポイントは、以下のとおりです。
どのようなマーケティング戦略が自社で可能か検討し、梅雨の時期の売上減少を防ぎましょう。
雨でも来店したくなるキャンペーンを行う
雨の日限定のキャンペーンは、来店を促す効果があります。キャンペーンには以下のようなものがあります。
- 雨の日限定メニュー
- 雨の日のみ使用可能なクーポン配布
- 雨の日限定の割引サービス
- 雨の日限定の特典(ポイント2倍、来店でドリンク1杯無料など)
SNSで「#雨の日キャンペーン」などハッシュタグ付きで情報発信すると拡散しやすいです。いいねの数やコメントなどで顧客の反応も見ることができ、キャンペーンの改善にも活かせます。
仕入れ量をコントロールする
売上アップを図ろうとするだけでなく、無駄な経費の削減も大切です。
飲食店では天候によって客数が数割減少する場合もあるため、天気予報を確認し、仕込み量を調整して食材ロスを防ぎましょう。とくに傷みやすい食材は雨天予報の日には仕入れ量を減らすなど、天候を考慮した発注計画が重要です。
過去の売上データと天候の関係を分析すると、より正確な需要を予測できます。降水確率50%以上の日の客数データを収集し、キャンペーン実施前後とも比べながら、仕入れを調整するシステムを構築しましょう。
配送・デリバリーサービスを充実させる
雨の日は外出を控える顧客が増加するため、自宅にいながら商品やサービスを利用できるデリバリーの整備が重要です。来店者への接客業務が減る分、店舗スタッフをデリバリー関連の業務に当てる仕組みを作るのもよいでしょう。
注文システムの改善も定期的に行うことが必要です。注文画面のレイアウトを工夫し、注文しやすくすることが利用の増加を促します。また、デリバリー業務を行うスタッフが働きやすいよう、防水の配達バッグや雨の日の手当を付与するなどの対策も求められます。
雨宿り需要を満たす施策を実施する
急な雨で店舗に入る「偶然の訪問者」は、新たな顧客獲得につながる可能性があります。
雨宿り環境を整備するためのポイントは、以下のとおりです。
- 靴の水滴を拭くためのマットや紙タオルの設置
- 店舗オリジナルロゴ入り傘の貸出サービス
- 十分な傘立てスペース
- スマートフォン充電スポットやWi-Fiサービスの提供
- 雑誌や本の閲覧コーナーの設置
傘の貸出は有料にし、後日の返却で返金するようにすると、盗難被害を防げるうえリピート顧客獲得にもつながります。
梅雨明けの準備をする
梅雨の時期は客足が伸びない分、梅雨明けには増える可能性があります。そのための準備を進めておきましょう。
梅雨明けに向けた効果的なマーケティング施策例は、以下のとおりです。
- 梅雨明けの爽やかなイメージを取り入れた店内装飾
- SNSやメルマガなどでの夏商品のプロモーション開始
- 梅雨明けのイベントの企画
- 夏商品の需要増加を見越した適切な在庫確保
梅雨明けに販売する新商品やセール情報を効果的に届けて、顧客の購買意欲を高めましょう。
【事例】梅雨のマーケティング施策
梅雨のマーケティング施策の事例を紹介します。
雨の日限定クーポン
牛丼チェーン店の「松屋」は、雨の日限定のクーポンを公式Xから定期的に配布しています。「雨の日クーポン発動」という表現や、有効期限を当日のみなど狭めることで、今だけのお得感を出し、サービス利用の促進につながっています。
参考:松屋フーズ「雨の日クーポン発行/ご利用ルール 」「X【公式】松屋」
雨や気温にあわせた広告施策
フランスのファッション小売業者「La Redoute」は電子看板を活用し、気象データと連動したファッション広告を展開しました。
電子看板のセンサーが気温や降水の変化を検知すると、表示されるクリエイティブが自動的に変化するシステムです。雨が降りはじめるとモデルが傘を差す画像に切り替わり、気温が下がれば着ている服も厚手のものに変わるといった仕組みです。
気象連動型広告キャンペーンにより、Webサイトへのトラフィックは34%増加し、販売数は17%向上という成果を上げました。オフラインの施策がオンライン上での売上につながった事例です。
参考:WeatherAds「How Effective is Weather-Based Marketing? 4 Case Studies With ROI Stats」
SNSを活用したキャンペーン
医薬品・ヘルスケア用品メーカー「ピップ」は、2021年に「じめじめコリ応援!梅雨のプレゼントキャンペーン」を実施しました。もっとも特徴的だったのは「雨の日の日数に応じて当選者数が増える」という仕掛けです。通常ならネガティブに捉えられる雨をポジティブな要素に変えました。
X(Twitter)上でのユーザー参加型キャンペーンで、フォロー&リツイートを応募条件にすることで、企業や商品の認知拡大の効果も見込めるキャンペーンです。
参考:ピップ株式会社「今年の梅雨はじめじめコリを磁気でほぐして快適に!」
フロア全体を利用した雨の日キャンペーン
デパート「松屋浅草」では、地下と一階の食品コーナーで「雨の日サービス」を実施しています。2024年は降水確率50%以上の日に、「太巻き全品5%オフ」「計量豆10%増量」「2,000円以上の購入者にどら焼き1個プレゼント」などのサービスを各店舗で展開しました。
フロア全体でキャンペーンを行うことで、いろいろなお店を覗いてみたくなるワクワク感を提供できます。梅雨の合間の晴れを利用した「晴れの日サービス」も併せて行われ、梅雨をお出かけの季節に変えた事例です。
参考:PR TIMES「株式会社松屋のプレスリリース」
梅雨の時期に向けたマーケティングを実践して売上を伸ばそう!
梅雨の時期には顧客の外出意欲が低下するため、小売店や飲食店などの実店舗ビジネスでは集客や売上に大きな影響を受けます。雨の日限定メニューや特典などで、雨の日だからこそ行く価値がある環境を整えるのが重要です。また、仕入れ量の調節や、雨の日はスタッフの業務をデリバリー関連に切り替えるなど、天候によって柔軟性を持たせたシステムを構築することも効果的です。
自社の状況に適したマーケティング施策を展開し、梅雨の時期を積極的なビジネスチャンスにしていきましょう。
この記事の監修者:
山﨑伊代(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)
大学卒業後、新規顧客開拓セールスコンサルタントとしてMeltwater Japan株式会社入社。
食品・生活用品・エンタメ・自動車・機械・学校法人等多種多様な企業・団体の広報・マーケティング部門のデジタル化並びにグローバル化をMeltwaterのソリューションを通して支援。 2016年~2018年グローバルセールスランキング首位。 趣味は山登りとビデオゲーム。