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データドリブン経営とは?取り組むメリットや進め方、成功事例を解説

データドリブン経営とは?取り組むメリットや進め方、成功事例を解説


馬見塚堅

Jan 20, 2024

近年、データドリブン経営に取り組む企業が増加しています。一方、データドリブン経営という言葉を聞いたことがあるものの、詳しい内容はわからない方も多いのではないでしょうか。

データドリブン経営とは、データをもとに意思決定を行う経営手法です。

本記事では、データドリブン経営を深掘りし、概要や重要性、取り組むメリットなどを解説します。ビジネスを効率化し、収益を最大化させたいと考えている方はぜひお役立てください。

データドリブン経営とは?

What is data-driven management?

データドリブン(Data Driven)経営とは、自社が収集・蓄積してきたビジネス関連のデータにもとづいて、意思決定を行う経営手法です。個人の経験や勘といった主観に頼ることなく、客観的な事実を根拠に戦略を立案したり、方針を決めたりできます。

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データドリブン経営と従来のデータ活用の違い

従来のデータ活用では、データは判断材料の1つとして各部署がそれぞれ補助的に取り扱っていました。

一方、データドリブン経営では、企業全体がデータを一元管理して、判断を行います。そのため「データを活用する」点は共通していますが、データを取り扱う範囲や影響を及ぼす領域に大きな違いがあります。

データドリブン経営はDXの実現に欠かせない要素

データドリブン経営と密接に関係しているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。DXとは、データやデジタル技術を活用して、業務プロセスを改善したり、商品・サービスを進化させたりして、競争力を向上させることを指します。

データドリブン経営はDXの実現に不可欠な要素の1つといえるでしょう。アナログデータのデジタル化やITツールによるデータ収集など、データとデジタル技術を多く活用するからです。

データドリブン経営が求められている背景

Background of the demand for data-driven management

データドリブン経営が求められているのには、以下の背景があります。

  1. 消費者行動の多様化
  2. 市場の不確実性
  3. テクノロジーの進化

それぞれ解説します。

1. 消費者行動の多様化

インターネットやSNSの普及により、消費者が触れる情報量は膨大なものになりました。それに伴い、消費者の行動が多様化しているため、個別最適化されたアプローチが不可欠です。

これまでのような経験や勘にもとづくアプローチでは、対応するのが難しくなっているため、データを軸に意思決定を行うデータドリブン経営が求められています。

2. 市場の不確実性

新型コロナウイルス感染症や戦争に代表されるように、市場には予想だにしないことが付き物です。不測の事態を考慮しながら経営を行うのは難しいですが、有事の際にどれだけスピーディに的確な意思決定を行えるかで企業間の差が生まれます。

そのため、データという客観的事実にもとづいて迅速に判断できるデータドリブン経営の重要度が高まっているのです。

3. テクノロジーの進化

激化する競争社会の中で優位性を確保するためには、最新のテクノロジーを活用する必要があります。

生成AIやIoT(あらゆるモノがインターネットに接続される技術)などによって得られたデータをデータドリブン経営に役立てることで、さらに業務効率化や売上アップにつなげることが可能です。

データドリブン経営を採用する4つメリット

Four advantage of adopting data-driven management

データドリブン経営を採用するメリットは以下の4つです。

  1. 迅速かつ精度の高い意思決定ができる
  2. 顧客ニーズを深く理解することができる
  3. 経営における課題発見と改善がしやすい
  4. 新規ビジネスの創出につながる

それぞれ解説します。

1. 迅速かつ精度の高い意思決定ができる

迅速かつ精度の高い意思決定を行えます。データドリブン経営では、リアルタイムで数値にもとづいたデータを把握できるからです。

顧客ニーズが多様化し、先行きが不透明な現代において、データドリブン経営は不可欠な取り組みといえるでしょう。

2. 顧客ニーズを深く理解することができる

顧客の属性や購買履歴などのデータを収集・分析できるので、顧客ニーズを深く理解するのに役立ちます。

例えば、商品の販売データや顧客の購買傾向を分析することで、ニーズの変化や新しいトレンドを把握しやすくなります。一早く対応すれば、競争優位性を確保し、他社と差別化することが可能です。

3. 経営における課題発見と改善がしやすい

企業活動の様々なデータを収集・分析することにより、自社の経営課題を発見し、改善につなげられるのもメリットです。

例えば、実店舗とオンラインで商品を販売している企業の場合、商品ごとの売上を比べることで必要な対応策を検討できます。各担当者が個別に判断するのではなく、データドリブン経営により、データを一元管理して判断できるのです。

4. 新規ビジネスの創出につながる

新規ビジネスの創出につなげられるのもメリットです。

従来のように、各担当者がデータを管理している状態では、顧客ニーズに気づけなかったり、見過ごしていたりすることもあるでしょう。しかしデータで数値化し、組織全体で一元管理することで、それまで見えなかった課題を発見できます。

データドリブン経営の実行手順

Procedures for implementing data-driven management

データドリブン経営を実行する手順は以下の通りです。

  1. データ活用の目的を設定
  2. データ活用の基盤を構築
  3. データの収集・可視化・分析
  4. 分析結果に基づいた施策の実行と検証

順番に解説します。

1. データ活用の目的を設定

まずはデータ活用の目的を明確にします。目的を明確にすれば、どのようなデータを収集すべきかが明らかになるからです。なお、目的は以下のように様々です。

  • 売上アップ
  • 業務改善
  • ブランディングの強化

目的を明確にしないまま、データドリブン経営を行った場合、必要なデータが得られなかったり、不必要なデータで管理が複雑化したりするリスクがあるので注意しましょう。

2. データ活用の基盤を構築

次に、収集したデータを保管・分析するためのデータ基盤を構築します。部署ごとにデータを管理している場合は、一元管理できるツールを導入する必要があります。最適なツールは企業によって異なるため、データの種類や既存システムと連携できるかなどを考慮して選ぶとよいでしょう。

3. データの収集・可視化・分析

データを収集したら、可視化します。可視化とは、必要なデータのみを抽出し、グラフや表など目に見える形にまとめることです。可視化によりデータ分析ができる状態になります。データは膨大な量になるため、人間による手作業ではなく、ツールを活用するのがおすすめです。

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4. 分析結果にもとづいた施策の実行と検証

最後に、データの分析結果にもとづいて、施策を立案・実行し、検証を行います。実行した施策の成果を定量的に捉えて、課題を抽出し、改善を繰り返しましょう。

PDCAサイクルを回すことで、施策のアプローチ精度も高まります。成果が出た施策をそのまま継続するのではなく、日々ブラッシュアップしていくことが重要です。

データドリブン経営の実行が難しい理由

1. 専門スキルを持った人材の確保が困難

データドリブン経営の実行が難しいのは、データサイエンティストやデータアナリスト、機械学習エンジニアなどの専門スキルを持った人材の確保が困難なためです。

専門家の需要は高いため、採用活動を行ってもすぐに確保するのは難しいでしょう。既存メンバーに専門スキルを身につけさせる方法もありますが、時間と費用がかかります。

データドリブン経営を行う際には、分析ツールが欠かせません。ツールの難易度やサポート体制はさまざまなので、自社のリソースに合ったものを選んで活用するとよいでしょう。

2. 環境整備へのコスト増

データドリブン経営を行うには、以下のようなコストが必要です。

  • ツールの導入費用
  • デジタルインフラの整備費用
  • 人材確保の費用
  • トレーニング費用

組織全体の取り組みであるため、投資額も大きくなるのが一般的です。費用対効果を見極めた上で判断しましょう。

3. データ管理やセキュリティ対策の強化が必要

データドリブン経営では、膨大な量のデータを取り扱うため、セキュリティ対策を強化しなければなりません。対策が不十分な場合、データが漏洩したり、サイバー攻撃を受けたりするリスクが増します。

データドリブン経営の実行とセットで、従業員への啓蒙や研修、管理体制の整備といった作業を行う必要があるのです。

データドリブン経営に役立つツール

データドリブン経営に役立つツールを紹介します。

ツール特徴
BI(Business Intelligence)企業内外のデータを分析・可視化するためのツール
ERP(Enterprise Resources Planning)企業の資源である「ヒト、モノ、カネ、情報」を一元管理し、適切なリソース配分をするためのツール
MA(Marketing Automation)マーケティング活動を自動化できるツール。主に、リード(見込み顧客)の管理・育成に使われる
MA(Marketing Automation)マーケティング活動を自動化できるツール。主に、リード(見込み顧客)の管理・育成に使われる
SFA(Sales Force Automation)営業支援ツール。主に営業担当者の業務管理に使われる
CRM(Customer Relationship Management)既存顧客の購買履歴や問い合わせ履歴などの情報管理ツール。顧客との関係性向上のために使われる
CDP(Customer Data Platform)顧客データ基盤。顧客情報の管理に特化しており、一人ひとりの顧客を詳しく分析できる。見込み顧客の管理も可能

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データドリブン経営を成功させるポイント

Key to successful data-driven management

データドリブン経営を成功させるポイントは以下の通りです。

  1. 全社で一丸となって取り組む
  2. スモールスタートで始めてみる
  3. 自社に適したツールを導入する

それぞれ解説します。

1. 全社で一丸となって取り組む

データドリブン経営を成功に導くには、経営陣だけでなく全従業員が一体となって取り組むのが大事です。そのためには、データにもとづいた意思決定を行うという価値観を組織全体で共有し、啓蒙や研修などを実施して、浸透させていく必要があります。習慣化されるまでは、一定の時間が必要でしょう。

2. スモールスタートで始めてみる

まずは部署を限定してデータ分析を始めてみるのも効果的です。データドリブン経営では、取り扱うデータが膨大になるため、いきなり全部門で着手すると、通常の業務にも支障をきたす可能性があります。

そこで、まずは営業部で顧客情報を収集・分析し、ノウハウを身につけたら他部門に横展開するといった流れもよいでしょう。

3. 自社に適したツールを導入する

自社に適したツールを導入することも重要です。設定した目的に合ったツールを選ぶようにします。

例えば、見込み顧客数を増やしたい場合はMAがおすすめです。既存顧客の単価アップが目的ならば、CRMがよいでしょう。何を達成したいかによって、適切なツールは異なるため、導入前の選定が大切です。

データドリブン経営の成功事例

データドリブン経営の成功事例を3つ紹介します。

  1. ソフトバンクグループ株式会社
  2. 日本たばこ産業株式会社
  3. ニフティ株式会社

1. ソフトバンクグループ株式会社

iPhoneが登場した当時、ソフトバンクは、「電波がつながりにくい」というユーザーからの不満が多いのが悩みでした。そこで、通信のログデータを1日2900万件ほど収集し、接続率の改善に着手します。

場所や時間帯などのあらゆるデータから原因が明らかになり、基地局を整備したことにより、接続率アップを実現しました。膨大なデータを収集し、分析することで目的を達成できた事例です。

2. 日本たばこ産業株式会社

日本たばこ産業株式会社は、他社商品を利用中の顧客に自社商品をおすすめするダイレクトメールを送付していました。

顧客の年代や利用中の商品などの一部のデータのみをもとに、送付先を選定しており、担当者の経験と勘に依存していたのが課題でした。

そこで、アプローチの精度を高めるためにAIを活用したデータ分析を導入し、改善に取り組みます。「6ヶ月後に顧客がどの銘柄に移行するか」の予測モデルを構築・運用し、自社商品への移行人数を1.2倍にすることに成功しました。

3. ニフティ株式会社

ニフティ株式会社は、インターネット接続サービスでは、顧客の性別や年齢などの属性データを、Webサービスでは、閲覧履歴や購入履歴などの行動データを収集していました。

しかし、両者が個別に管理されていたため、効果的なデータ活用ができていませんでした。

そこで、属性データと行動データの統合に着手します。精度の高いアプローチが可能になった結果、主要なコンテンツのクリック率や成約率を高めることに成功しました。

まとめ|データドリブン経営を導入してビジネスを進化させよう

消費者ニーズが多様化し、市場の不確実性が増す一方の現代では、データにもとづいて客観的かつ迅速に意思決定できるデータドリブン経営は欠かせない取り組みです。

データドリブン経営を導入することで、顧客ニーズを深く理解したり、新規ビジネスの創出につなげたりすることも可能です。

一方で「専門スキルを持った人材を確保できない」と悩んでいる担当者も少なくないはずです。

この記事の監修者:

馬見塚堅(Meltwate Japanエンタープライズソリューションディレクター)

2016年にMeltwater Japan株式会社入社。 外部データ活用に向けてマーケティング・企画・広報部向けのコンサルティングを7年で200社以上を担当。 現在は、大手企業や官公庁向けのソリューション企画に従事。インフルエンサーマーケティングや消費者インサイトに関するセミナー実績多数。 趣味:旅行、子育て情報収集、仮想通貨、サッカー観戦(川崎フロンターレの大ファンです)

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