生成AIの台頭、深刻化するフェイクニュース、そして縮小する予算。
今、PR・広報を取り巻く環境はかつてないスピードで変化しています。広報担当者は「より少ないリソースで、より大きな成果」を求められるだけでなく、その成果をビジネスへの貢献として明確に証明しなければなりません。
「データで読み解く2026年PRの最新状況」は、Meltwaterが1,100名以上のコミュニケーション専門家を対象に実施した最新調査をもとに、2026年のPR業界を形作る主要なトレンドと課題を紐解きます。
本レポートは、業界をリードするエージェンシー We. Communications とのパートナーシップのもとで制作され、現代のPR業界が直面する本質的な課題を深く掘り下げています。
勘や経験に頼る時代は、すでに終わりを迎えつつあります。これまでPR担当者は、十分な戦略的インテリジェンスや、財務レベルで信頼できる指標を持たないまま活動してきました。しかし、その状況は急速に変わりつつあります。PRの次なる章で問われるのは、「より多くの露出」を獲得することではありません。その価値を、明確に証明できるかどうかです。評判を金融資産のように定量化し、チャネルを横断したプレゼンスを最適化することで、PRはコストではなく、成長とリスク低減を支える投資対象へと進化します。
— チャーリー・ボールドウィン | We. Communications シニア・バイスプレジデント(インサイト&アナリティクス)
以下では、すべてのPRリーダーが押さえておくべき8つの重要なインサイトをご紹介します。
1. 予算とリソース:かつてない「効率化」への圧力
2. PR・広報業務の境界線:PR担当者は今、何を担っているのか?
3. 「掲載数」の呪縛から、戦略的な測定へ
4. 生成AI:PRのワークフローをどう変えたか?
5. “対応型PR”に追われ、戦略に時間を割けない現実
6. 記者との関係性は以前重要
7. 経営層のPR理解の現状
8. メディアリレーションの急速な進化
結論:2026年のPRに求められるのは、アラインメント・インテリジェンス・スピード
1. 予算とリソース:かつてない「効率化」への圧力
2026年、PR・広報チームにとって最大の課題は「据え置きの予算」と「増大する期待」の乖離です。
- 予算の現状: 回答者の半数以上(51%)が、2026年の予算は「前年踏みえ(43%)」または「減少(8%)」すると予想しています。予算が増加すると答えたのはわずか41%に留まりました。
- 人的リソースの限界: 多くの広報担当者が、限られた人数でより多くのチャネル(SNS、インフルエンサー、危機管理など)を管理しなければならない状況に直面しています。
日本の視点: 多くの日本企業でも「広報はコストセンター」と見なされがちですが、限られたリソースで成果を出すための「戦略的な優先順位付け」が今、誰よりも求められています。
2. PR・広報業務の境界線:PR担当者は今、何を担っているのか?
PRの役割の中核は、これまでと大きく変わっていません。調査結果からも、PR担当者にとって重要度の高い上位3つの業務は、依然として従来型のPR機能であることが示されています。
一方で、ソーシャルメディアを主要業務と位置づけているPR担当者はわずか10%にとどまるものの、実際には約半数が自社のソーシャルメディア運用を担当しています。同様に、36%がインフルエンサー戦略を担っているにもかかわらず、それを主要な責務と捉えている人はわずか2.3%に過ぎません。
PRチームはこれまで以上に多くのチャネルを担当している一方で、それらを自らの中核的な役割として十分に認識できていないのです。これは、スキル向上やPRの価値を再定義する大きな機会が存在していることを意味しています。
3. 「掲載数」の呪縛から、戦略的な測定へ
2026年時点で、PRの成果測定において最も広く使われている指標は、以下のようなものです。
PRの成果測定を高度化すべきだという議論は長年続いているものの、実際には依然として「活動量ベース」の指標が主流となっています。
一方で、シェア・オブ・ボイス、センチメント、メッセージの浸透度といった、より戦略的な指標は、優先度が低い位置にとどまっています。明らかなのは、経営層がPRの影響力をより明確に把握したいと考えているという点です。より多くの投資や影響力を獲得するためには、メディア露出というアウトプットと、事業成果との間にあるギャップを埋める必要があります。AIを活用した分析や統合ダッシュボードは、その実現をこれまで以上に現実的なものにしつつあります。
4. 生成AI:PRのワークフローをどう変えたか?
AIはもはや「未来の技術」ではなく、日々の業務に不可欠な「標準装備」となりました。
主な活用用途:
- コンテンツ作成: プレスリリースの草案、SNS投稿、メールの作成。
- 要約とモニタリング: 大量の記事カバレッジの要約。
- アイデア出し: キャンペーンのコンセプト立案やブレインストーミング。
- レポート作成: データの視覚化と分析インサイトの抽出。
初期の「品質への懸念」から、現在は「スキルの陳腐化」や「雇用への影響」へと関心が移っています。しかし、19%のプロフェッショナルは「全く懸念していない」と回答しており、AIを脅威ではなく「強力な副操縦士」として受け入れている層が一定数存在します。
PRにおけるAI活用について、最も大きな懸念として挙げられているのは、「人の仕事や人材の必要性が減ってしまうのではないか」という点です。一方で、PRにおけるAIの未来像は明確になりつつあります。それは、トレンドのより迅速な検知、要約の自動化、より高度なモニタリング、そしてレポーティングの効率化です。こうした進化の多くはすでに現実のものとなっています。たとえば、MeltwaterのAIであるMira は、これまで数日かかっていた分析作業を、一度の対話で完結させることを可能にしています。
5. “対応型PR”に追われ、戦略に時間を割けない現実
多くのPRチームが、突発的な対応や日々のレポーティング業務に多くの時間を費やしていることも明らかになりました。
その結果、中長期的な戦略立案や分析に十分な時間を確保できないという課題があります。AIやメディアインテリジェンスツールの活用は、こうした状況を改善する重要な手段とされています。
6. 記者との関係性は以前重要
新たなチャネルが次々と登場する中でも、メディアリレーションは依然としてPRにおける最重要業務であり続けています。多くのPR担当者は、週に1〜2日を記者へのピッチに費やしており、記者との関連性は、アーンドメディア獲得において今なお最も強力な要因です。
今後を見据えると、今後5年間でアーンドメディアの獲得はさらに難しくなると考えるPR担当者が多数を占めています。これは、PRチームがこれまで以上に、的確なターゲティング、質の高いストーリーテリング、そしてデータに基づくインサイトを活用しなければ、メディア露出を勝ち取れない時代に入っていることを示しています。
7. 経営層のPR理解の現状
調査では、60%のPR担当者が「経営層は自分たちの仕事をよく、または非常によく理解している」と回答しています。
一方で、残る40%は、自身の役割が正しく理解されていない、あるいは十分に評価されていないと感じていることも明らかになりました。
PR予算の多くは経営層によって決定されるため、PRが経営の意思決定に関与する「席」を得るためには、PR活動のアウトプットを、売上や事業成果といったボトムラインの成果に結び付けて示すことが不可欠です。しかし、この点を実務として確立できていないチームも依然として多く存在しています。
8. メディアリレーションの急速な進化
現在、PR担当者の28%以上が、週に一度も記者へのピッチを行っていないという結果が出ています。その背景には、PRを取り巻く環境の大きな変化があります。
- パーソナルな関係性は依然として重要(露出獲得における最重要要素の一つ)
- 一方で、ツールやデータベースの活用により、アウトリーチの多くが効率化されている
- PR担当者にとって、最も価値の高いソーシャルプラットフォームは圧倒的にLinkedIn
結論:2026年のPRに求められるのは、アラインメント・インテリジェンス・スピード
本レポート全体を通じて浮かび上がる、ひとつの明確なテーマがあります。
PRの未来は、チーム、データ、テクノロジー、経営層、そして成果を、いかにうまく「つなげられるか」にかかっているという点です。
ストーリーテリングや創造性、関係構築といったPRの本質的な価値は、これからも変わりません。しかし、PRの次なるステージは、AIによるインサイト、統合された分析、そしてPRの価値をどう証明するかという考え方の再定義によって形作られていきます。
AIが検索、コンテンツ、情報発見の在り方を大きく変える中で、適切なインテリジェンスを備えたPRチームこそが、競争優位性を手にすることになるでしょう。
