ChatGPTやGoogle Gemini、Google AI Overviewsなどの生成AIが登場し、AI検索するとAI回答が自動的に生成されるようになりました。AI回答では自社ブランドがどのように言及・引用されているかだけでなく、競合ブランドの評価も確認することができます。
この記事では、AI検索におけるブランド競合分析の考え方や従来の競合分析との違い、比較前に決めるべきポイント、ツールを活用した分析方法、競合との差を改善施策へつなげる方法まで詳しく解説します。
AI検索におけるブランド競合分析とは
AI検索の競合比較で分かること
AI検索の競合分析を始める前に決めること
ツールを活用してAI・LLM上の競合ブランドを分析する
競合とのギャップを改善施策に変える
AI検索の競合分析で陥りやすい注意点
AI検索のブランド競合分析に関するよくある質問
まとめ|ツールで競合との差を捉え、AI検索上のブランド戦略を改善しよう
AI検索におけるブランド競合分析とは
AI検索におけるブランド競合分析とは、ChatGPTやMicrosoft Copilot、Google Gemini、Google AI Overviews、Google AI Modeなどの生成AIの回答において、自社と競合の扱われ方を比べることです。どの質問でブランド名が出るか、どのように説明・推薦されるか、どのWebサイトが引用されているかといった違いを比較します。
従来からの検索結果一覧ページよりも、AI回答が参考にされるようになり、AI回答で自社や競合がどのように語られているかも重要になってきました。AI回答でのブランド評価を把握することで、コンテンツ作成やPR活動、評判管理などのブランディングに役立てられます。
「AIを使った競合分析」と「SEO競合分析」との違い
従来からある「AIを使った競合分析」と「SEO競合分析」との違いは、以下の表のとおりです。
| 比較項目 | AIを使った競合分析 | SEO競合分析 | AI検索の競合分析 |
|---|---|---|---|
| 主な分析対象 | Webサイト・SNS・検索結果・AIが生成した回答 | 検索結果・Webサイト | AIが生成した回答・引用元 |
| 主な指標 | 検索順位・KW・市場での言及率・センチメント | 検索順位・KW・被リンク | 言及率・推薦の有無・引用率・センチメント |
| 主な目的 | 分析作業の効率化 | 検索順位・検索流入の改善 | 情報の質の把握・改善 |
AIを使った競合分析は、Web上にある競合情報をAIが分析する手法です。近年はSEOやAI回答も分析対象に含まれる場合があり、競合の評価を幅広く把握できます。AIを使うと分析だけでなく、コンテンツの作成や配信まで自動化でき、業務が効率化されます。
AI検索の競合分析はAI回答に限定されるため、Web全体の競合分析より情報量は少なくなりますが、質の高い情報に限定できることが特徴です。特に、AI OverviewsではE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)が重視されています。AI検索の回答を分析することは、ユーザーに対して有益な情報が提供できているかを客観的に知るのに有効でしょう。
AI検索の競合比較で分かること
AI検索での競合比較では、以下のようなことが分かります。
| 分かること | 意味 |
|---|---|
| AI SOV(シェア・オブ・ボイス) | 競合と比べた自社の言及率 |
| 引用率・引用数の違い | 自社と競合のWebサイトがAIに参照された割合・数 |
| 推薦の有無・センチメントの違い | 自社と競合のブランドの認識のされ方の違い |
| 引用元ギャップ | AIが根拠として参照する情報源の違い |
AIシェア・オブ・ボイスとは、競合と比べた自社の言及率のことです。言及率はブランド名が回答に登場した割合を指すのに対し、引用率は情報源として自社サイトのリンクや出典が示された割合を指します。同様に、言及と推薦も同じではありません。名前が出ているだけの場合と、積極的に勧められている場合とでは、ユーザーへの影響度がまったく異なるでしょう。
他にも、扱われるトピックや文に込められたセンチメント(感情)などを総合的に比べることで、業界内での自社の立ち位置が見えてくることもあります。また、引用元の違いから影響力のあるメディアを特定し、PR活動に活かすことも可能です。
同じプロンプト群、同じツールで継続的に比較し、使用した指標の定義をレポートに明記しておくことが、正確な分析につながります。
AI検索の競合分析を始める前に決めること
分析ツールを開く前に、いくつか決めておくべきことを解説します。
競合分析の目的を定める
まずは、競合分析の目的を具体的に定める必要があります。例としては、「自社と競合が選ばれる違いを明らかにし、施策を改善する」「自社と競合に影響を与える引用元を把握し、PR活動に活かす」などがあります。
例えば、認知段階でカテゴリの候補に入れているか、比較段階で競合と同列に扱われているか、選定段階で自社が推薦されているか、指名で検索されたときに誤情報やネガティブな説明が出ていないかといった問いのどれを優先するかによって、見るべき指標も変わってきます。
認知段階では言及率やトピックとの関連性が重要です。比較段階ではシェア・オブ・ボイスや、どんな属性で扱われているかが鍵になります。選定段階では推薦率とその理由、指名段階では正確性やセンチメント、引用元の確認が中心になるでしょう。すべてを一度に追うのではなく、自社の事業目標と顧客の意思決定プロセスに近い領域から優先順位をつけて進めることが重要です。
競合の表記をそろえる
競合分析の精度は、対象とするブランドの表記によって大きく変わります。企業の正式名称、一般的な略称、英語・日本語での表記、商品・サービス名まで、分析対象の表記を定めておきましょう。カテゴリ名やドメインと組み合わせると、無関係な結果を除外しやすくなります。
購買までの段階に沿ったプロンプトセットを作る
分析の質を左右するのが、どんなプロンプト(質問)をAIに投げるかです。ユーザーがブランドを認知してから購買にいたるまでの段階別に用意しておくと、自社状況をより詳しく把握することができます。
| 段階 | プロンプト例 | 比較する指標 |
|---|---|---|
| 認知 | 〇〇を効率化する方法は? | 言及率、AI SOV(シェア・オブ・ボイス)、関連トピック |
| 比較 | A社とB社の違いは? | AI SOV(シェア・オブ・ボイス)、推薦理由 |
| 選定 | A商品の価格は? A社の評判は? | 正確さ、センチメント |
購買までの段階を追うごとに、プロンプトに具体的な社名や商品名が入る指名質問が増えていきます。プロンプトの材料は、営業やカスタマーサポートに寄せられる質問、実際の検索クエリ、SNSやレビューの投稿、顧客インタビューから拾い集められます。自社に有利なプロンプトを避け、関連性のある複数のプロンプトを用意しておくと、分析の精度が上がるでしょう。
比較条件と記録ルールを統一する
自社と競合を比較する際は、できる限り同じ条件で実行することが前提です。AIの回答は回答時のWeb情報をもとに生成されます。Web情報は変化するため、同じ質問を投げても毎回同じ答えが返ってくるとは限りません。
実行した日時だけでなく、AIサービスやモデル、言語、国・地域、ログイン状態、会話履歴の有無、実際に使ったプロンプトの文言、実行回数まで設定しておきましょう。使用するブランド名も「商品・サービス名は、各社売上の上位3位までに絞る」など、自社とすべての競合で範囲を統一しておくことが必要です。
ツールを活用してAI・LLM上の競合ブランドを分析する
競合分析は少数のプロンプトであれば手動でも確認できますが、複数のAIサービスで大量のプロンプトを継続的に分析する場合は、モニタリングツールの活用が一般的です。Meltwaterの「GenAI Lens」では、主要な生成AIを横断しながら以下のようなことが把握できます。
- 自社と競合の露出度
競合と比べた自社の言及率である「AIシェア・オブ・ボイス」が、プロンプトやAIサービスごとに比較可能
- ブランドポジショニング
文章に込められた感情を読み取る「センチメント」機能の活用や、業界で開拓されていない領域の把握などで、自社の立ち位置を確立
- 引用元・引用元のオーディエンス
引用されたサイトの一覧から、サイトを訪問するユーザー層まで把握でき、重要なライターの特定も可能
メディアモニタリングやソーシャルリスニングなど他のツールで収集したデータと組み合わせれば、施策の効果測定やブランド施策の改善に活用できます。継続的に測定し、変化と原因を捉えることが重要です。
▶︎GenAI Lensの詳細について学ぶ:LLMモニタリングツール「GenAI Lens」
競合とのギャップを改善施策に変える
競合分析で見つかった自社と競合とのギャップは、改善策に活かすことができます。
E-E-A-Tを考慮したコンテンツを作る
自社ブランドに関連するプロンプト(質問)に対して、競合のほうが言及率・引用率・推薦率が高かった場合は、自社サイトのコンテンツを見直す必要があります。
Google AI Overviewsなどでは、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)のあるWebサイトが評価されます。それぞれ以下のように、Webサイトやコンテンツに反映させることができます。
| Googleの評価基準 | 意味 | Webサイト・コンテンツの改善点 |
|---|---|---|
| Experience(経験) | コンテンツ作成者は実体験があるか | 顧客の導入事例、カスタマーレビュー |
| Expertise (専門性) | コンテンツ作成者は専門分野について十分な知識があるか | 専門領域に特化したトピック、調査データ、専門家のコメント |
| Trustworthiness(信頼性) | Webサイトはユーザーに対して誠実で安全か | 会社情報や連絡先の正確さ、利用規約、セキュリティ対策 |
プロンプトに示された課題に対して、十分な情報を解決策として提供できているか確認しましょう。商品紹介を用途別にしたり社員のインタビューを入れたりして、独自性を出すことも大切です。
第三者評価を強化する対応策としては、独自調査をメディアに提供したり、専門家のコメントを取り入れたりすることで信頼を積み上げる方法があります。MeltwaterのGenAI Lensというツールはジャーナリスト分析機能を備えており、AI回答の引用元と記事のライターが把握できます。ブランドへの影響力の所在を知ることで、PR対策につなげられるでしょう。
また、AI回答にブランド名が誤って表記されていたり、数年前に終了したサービスがまだ紹介されていたりするといったケースがあります。対策としては、AIの回答がどの情報源を引用しているのかを確認し、自社が発信している情報源であれば直ちに修正することです。発信元が第三者メディアであっても、訂正を依頼できる場合もあります。
商品・サービスの改善につなげる
競合分析で、自社の言及率や推薦率が低かったら、商品やサービスの見直しも必要です。競合が言及されて自社が言及されなかった点、競合とのサービスの違いなどを洗い出します。あくまで競合に似せるのではなく、自社の独自性を保ちながら改善することが重要です。
AI回答内での否定的な説明が事実に基づいている場合は、サービスの改善だけでなく、謝罪が必要なこともあるでしょう。誠実に対応していくことが、ブランドイメージにもプラスになります。商品・サービスの改善後も、ユーザーの反応を継続して確認することが、レピュテーションマネジメントでは欠かせない考え方です。ポジティブなレビューが増えれば、Webサイトへの転用などコンテンツの改善にも応用できます。
▶︎あわせて読みたい:レピュテーションマネジメントとは?重要な理由や方法、事例を解説
AI検索の競合分析で陥りやすい注意点
AI検索の競合分析は、数字だけを見て結論を出すと判断を誤りやすくなります。ここでは、結果を読み違えないために押さえておきたい注意点を解説します。
AIシェア・オブ・ボイスを市場シェアとして扱わない
AIシェア・オブ・ボイス(AI SOV)とは、AI回答において競合と比較した自社の言及率のことです。市場全体を基準とするのではなく、特定の質問に対するブランド全体の言及数、もしくは自社と競合の言及数のみに絞ったものを基準に算出されます。
AI回答は、プロンプトやモデル、測定期間、ログイン状態、会話履歴によって変わるため、AI SOVも測定条件によって変化します。同じ条件を設定し、相対比較として活用するとよいでしょう。
1回の回答を一般化しない
AI検索では、同じ質問をしても毎回同じ回答になるとは限りません。Web上の情報は変わり続けるため、測定した時期によって回答は変わります。また、モデルの違いに加え、検索の有無、言語、地域、会話履歴などでも結果は変動します。そのため、「今回は自社名が出て、競合が表示されなかった」という1回の結果だけで優劣を決めるのは早計です。
同じ測定条件のもとで、一定期間にわたり計測を続けることが重要です。自社にとって重要なトピックで、複数のプロンプトの回答に安定して候補に入っているかを確認しましょう。
AIの説明をうのみにしない
AIは回答を間違えることがあります。内容が正しいかどうかは、引用元や関連する一次情報を調べる必要があります。レポートでは、AI回答とあわせて「確認できた事実」と「考えられる原因」も記録しておくと、次の施策に活かせるでしょう。
事業と関係のない競合ギャップまで追わない
競合が出て自社が出なかった質問を、すべて改善対象にする必要はありません。自社が提供していないカテゴリや対象外の地域、競合のほうが明らかに専門的である分野まで追うと、ブランドの提供価値がぼやけ、コンテンツの質そのものが下がりかねません。自社の強みを活かせる領域や、特定ブランドがまだ定着していない領域を探し、適切なプロンプトを組み立てることが重要です。
AI検索のブランド競合分析に関するよくある質問
ブランド競合分析では、比較対象や測定方法について迷う場面が出てきます。ここでは、実務でよく挙がる質問をまとめました。
AI検索の競合分析では何社を比較すべきですか?
最初から多くの競合を比較する必要はありません。初期は、顧客が実際に比較・検討する主要な3~5社程度に絞ると、プロンプトごとの違いやAIの回答傾向を把握しやすくなります。分析を続けるうちに、言及率や引用率が高いブランドが見つかったら、必要に応じて比較対象に追加するとよいでしょう。
無料のAIで手動でも競合分析できますか?
はい、ChatGPTやGemini、Perplexityなどを使って手動で分析できます。プロンプトを実行して得られた回答から、登場順、推薦理由、引用元などを自社と競合に分けて整理します。回答は毎回同じとは限らないため、AIモデルや地域などの条件をそろえて実施日時を記録する必要があります。
複数のLLMを使って多数のプロンプトから引用元やセンチメントの変化まで追い続けるには、有料の専用ツールの活用が効果的です。
競合分析はどのくらいの頻度で行うべきですか?
競合分析を実施する頻度に決まりはありませんが、定期的に行うことが望ましいです。新商品の発売、競合の変革、新規ブランドの参入、主要AIモデルのアップデートなど大きな変化の前後での計測が重要になります。変化のタイミングを逃さないよう、半年に1回は分析を行うとよいでしょう。
まとめ|ツールで競合との差を捉え、AI検索上のブランド戦略を改善しよう
検索結果一覧ページにAI回答が表示されるようになったことで、AI回答内での競合分析も重要になってきました。自社の専門領域に関する質問の回答で、自社と競合がどのように扱われているのか比較することにより、自社の強みが見えてきます。競合分析の結果は、コンテンツやPR、レピュテーションの各施策へ反映させましょう。
手作業でも競合分析は始められますが、複数のLLMを対象に継続的な比較を実行する場合は、ツールの活用が効率的です。MeltwaterではGenAI LensというLLM対策のツールを提供しています。詳細は下記をご覧ください。
この記事の監修者:
宮崎桃(Meltwater Japanエンタープライズソリューションディレクター)
国際基督教大学卒。2016年よりMeltwater Japan株式会社にて新規営業を担当。 2020年よりエンタープライズソリューションディレクターとして大手企業向けのソリューションを提供。 ソーシャルメディアデータ活用による企業の課題解決・ブランディング支援の実績多数。 趣味は映画鑑賞、激辛グルメ、ゲーム

