「職場で女性にハイヒールを強制するのはおかしい」。このツイートは1日で6千もリツイートされ、その後「#KuToo」というハッシュタグとともに拡散。半年後には政府や企業にも影響を与えるほど大きな活動になりました。

 

実は海外メディアも「#KuToo」に大きな関心を寄せていて、TIMEやニューヨークタイムズにも記事が掲載されているんです。

 

横並び志向が強いと言われる日本。1人の女性が声を上げ、影響がここまで注目されたケースはあまりないですよね。そこで#KuTooに関する国内外のニュースメディアやソーシャルメディアの反応を分析してみました。「#KuToo」がどう世界に拡散して、世の中に影響を与えているかを探ります。

 

 

時系列で見る「#KuToo」の広がり

 

「#KuToo」がどう広まったのか、ニュースメディアとソーシャルメディア、それぞれの露出数を時系列でグラフにしてみました。

 

発端は、石川優実氏による2019年1月のツイート。その後このツイートが多くの人に共感され、拡散しました。ちなみにこのツイートは2019年8月現在で、約3万件リツイートされ、6万件以上の「いいね!」がついています。

 

 

「#KuToo」というタグが生まれ、幅広い世代に広がる

 

実はこのツイート時点では、まだ「#KuToo」というハッシュタグはついていません。拡散する中で「#MeToo」にかけつつ、靴や苦痛という意味もプラスした「#KuToo」というタグがつくようになりました。ここもソーシャルメディアならではという感じがします。

 

グラフを見ると2019年3月にSNSの露出がちょっと増えています。この理由と思われるのが、ある女子学生のツイート。就職活動でハイヒールを履くことへ、異議を唱えています。

 

*上記投稿はTwitter上では非表示になっているので、Meltwaterプラットフォームから過去データ抽出。

 

このツイートには11万件のいいねがついています。すごい反響ですよね。働く女性だけではなく学生など他の世代にKuTooの問題意識が広まっていったことがわかります。

 

私自身「#KuToo」というワードを知ったのもこの頃でした。3月の世界国際女性デーに都内でウィメンズマーチがあったのですが、参加した弊社スタッフから「#KuToo」というプラカードを見かけたという話を聞きました。

 

厚労省への署名提出が世界で報道され、露出はピークに

 

その後露出は落ち着きますが、2019年6月露出が急増しています。これはネット上で集まった署名1万8千件(※当時)と要望書を、厚生労働省に提出したタイミング。要望書は「性別に関係なく働きやすい靴を履けるよう法整備を求める」というものでした。

 

その直後、根本厚生労働大臣(当時)がハイヒール強制を容認するとも取れる発言をしたことで、海外メディアから注目されることとなりました…。

 

その後もソーシャルメディアでの露出は続いています。世界レベルで「#KuToo」について議論されているというわけですね。 

例えば著名なエディターJim Robert氏が、根本大臣の発言や石川優美氏のコメントをTwitterにアップしたところ、この話題に関するツイートが一気に増えました。メディアの記事がソーシャルメディアで拡散していく、わかりやすい事例かもしれません。

日本の「#KuToo」関連記事は世界全体の20%、実は海外メディアの関心が高い!

 

「#KuToo」のメディア記事を、国・地域別でランキングにしてみました。1位はもちろん日本ですが、世界全体で見ると20%程度でしかありません!海外メディアの記事の方が、圧倒的に多いんです。

 

実は「#KuToo」のきっかけとなったツイートの1か月後には、すでにハンガリーのメディア「nlc」(ハンガリー語)が報じています。

  

3月には、アメリカの大手メディア「TIME」(英語)が記事を掲載。活動の中心人物である石川優美氏へ取材もしています。

 

その後6月、署名提出と根本大臣の発言がきっかけで「#KuToo」は世界に広まりました。アメリカのニューヨークタイムズ、フランスのル・モンド、イギリスのガーディアンなど世界の主要メディアが記事を載せています。

 

ニューヨークタイムズ

ガーディアン

ル・モンド

 

「国別のニュース露出割合」ランキングを見るとアメリカやヨーロッパだけではなく、中国やインドなども上位にありますよね。アジア圏でもこの問題への関心が高いことがわかります。

 

海外で「#KuToo」の話題が注目される2つの理由

 

 

「#KuToo」活動は日本国内の話なのに、なぜ海外で注目されているのか、気になりませんか?私個人の意見ですが、2つの理由があると思っています。

 

1.男女平等の面で大きく遅れている日本で、活動が始まったから

 

先進国の中でも、日本は男女平等の面で見ると遅れています。ジェンダーギャップ(男女の格差)の国別ランキングでは、世界144ヵ国のうち日本は110位。G7の中で最下位という結果です

出典:2018年世界経済フォーラム(WEF)調査

特に根本厚生労働大臣の発言が「職場でのハイヒール着用は必要」という意味にも取れたため、世界のメディアは大きく報じたようです。「日本はジェンダーへの意識が低く、世界から見れば時代遅れ」という印象が強まったのではないでしょうか。

 

また個人的な意見ですが、海外では「日本人はあまり発言をしない」という印象があるようですね。個人が目立つ発言をすることが少なく、男女平等も遅れているという印象の日本。そんな日本でもソーシャルメディアを使って女性が声を上げはじめた!というのが、世界から関心を集めた理由かなと思います。

 

2.女性へのハイヒール強制は、実は世界中で問題になっているから

 

「#KuToo」が注目されるもうひとつの理由が、女性へのハイヒール強制が日本に限らず世界でも問題となっていること。すでに禁止する法律を設けている国や自治体もあります。海外の事例をいくつか紹介しましょう。

 

・イギリス

日本の前例ともいえるのがイギリス。PwCで働いていた女性がFacebookでハイヒール強制に異議を唱え、共感が広がり活動がスタートしました。15万件以上の署名を政府へ提出した結果、「法の見直しが必要」という報告が発表されました。

 

・フランス(カンヌ映画祭)

2015年のカンヌ映画祭では、ハイヒールを履いていない女性が入場を拒否され大きな問題に。翌年の映画祭では、一部の俳優が裸足でレッドカーペットを歩いて抗議しました。

 

・カナダ

カナダのブリティッシュコロンビア州では、企業が女性にハイヒール着用を強制することを禁止しています。州ではハイヒール着用強制禁止の理由として、危険であり差別的であるため、としています。

 

・ノルウェー(ノルウェー航空)

かつてノルウェー航空では女性CAがフラットシューズを履く場合、医師からの証明書を要求していました。これに批判が集まり、ハイヒール着用やメイクアップなどの義務が2015年に廃止されました。

 

「#KuToo」活動は、政府や企業も動かしはじめた!

 

「#KuToo」活動の規模が大きくなるにつれて、政府や企業もこの問題への対応を迫られています。

 

根本大臣の一連の答弁とその後の新聞報道などに対して、厚生労働省は「根本大臣の発言はハイヒール強制を容認する発言ではなかった」というコメントを出しています(世界から批判が集中したため、フォローに回ったのかも?)。

 

ちなみにKuTooの署名は、厚生労働省に提出した後も増えていて、2019年8月時点で3万件を超えています。

 

企業にもこの問題に対応する動きが出てきました。通信会社や航空会社の中には、制服を刷新するタイミングでヒールのない靴を採用するところが出てきています。

 

例えばバンドエイドで有名なジョンソン・エンド・ジョンソンは、この問題にいち早く対応した企業のひとつかもしれません。

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、3月に就活生へ「スニーカーで面接に来てもOK」という方針を打ち出しました。この活動を「スニ活」と名付け、他の企業にも呼びかけています。さらに丸井と提携してスニーカーに合うリクルートスーツのコーディネートも提案しています。

 

バンドエイドには、実は靴擦れ用のものもあります。だから就活生がハイヒールを履いた方が、本当は売上につながるはず。それでも就活生を応援するというポリシーを優先させるため、「スニ活」に取り組んでいるそうです。

 

ソーシャルメディアの影響力を理解して、企業価値の向上につなげようとしている事例ですね。

 

 

まとめ

 

分析してみると、日本国内での「#KuToo」活動の反応と、海外の反応にわりと違いがあることがわかりました。海外から「日本はまだジェンダーへの意識が低い」と思われているように感じますね。日本も女性やLGBTQなどジェンダーに対する意識を、個人も企業ももっと持つ必要がありそうです。

 

一方で、ソーシャルメディアの影響力は日本でもここまできたか…という感じもしています。1人の女性のツイートがソーシャルメディアで広がった結果、数か月後には世界の大手メディアが記事にするわけですから。

 

ニュースメディアだけではなくて、ソーシャルメディアも常にウォッチして「何が話題になっているか」「どんな意見が多いのか」を知ることが必要になってきていますね。